社名のはなし

僕の会社の名前はカノープスといいます。よく語源を聞かれるので、今日はそれを説明しようと思います。

僕の家族は起業家家系です。滋賀県生まれの祖父も行商人のようなことをしていましたし、父もシステム会社を立ち上げ、倒れるその日まで仕事をしていたような人間です。弟もその血を裏切らず、30年以上続けた父の意思を受け継いで、二代目として頑張っています。
僕はというと、サラリーマンといいつつも何だかフラフラと転職を繰り返す堪え性の無い生き方をしていました。でも、なんだか血筋なんでしょうか。どこかで自分も…という気持ちが心の奥底にあり、勤め人していてもなんだかずっとモヤモヤしていました。20年近くです。
なんだかんだ40歳前に起業熱が盛り上がり、生前の父に相談したことがあります。親子として最初で最後のサシ飲みをしました。
 

「まだ早い」

 
全部語る前に言われました。
 
「お前の仕事は何歳になってもできる仕事だし、今はまだネットワークを広げるべき時期。そもそも資金についてもだ。後ろ盾もないのにどうしていくつもりだい?何のためにやるの?」
 
ほとんど語っていないのに、痛いところを瞬時に突いてくる父。K-1だったら秒殺です。顎に当てられた感じ。当たり前にわかっていたことですが、3年で倒産する企業が70%を超えるとも言われる中、経営者として30年以上会社を続けてきた父の言葉は重く、僕ごときの考えていることなどはお見通しだったのでしょう。事実、その頃の僕は勤め人を辞めるということが優先事項になっていて、何のためにという部分が薄かった。
昼飯が遅かったからビールが飲めないと、父は僕のジョッキに中身を移し、アラフォーのおっさんの僕がそんなに食べられるわけでもないのに、高校生の息子にするかのように注文した大量の焼鳥を目の前に沈黙が続きます。父は余った焼鳥を持ち帰り用に包ませると、足早にお店を後にしました。1時間も飲まなかったかもしれない。後に亡くなる父に相談したのはこれで最後でした。もう少し話したかったなと思います。
その1年半後、肝臓を悪くした父は倒れ、帰らぬ人となりました。ちょうど僕はその頃、とある事業会社で紹介会社立ち上げのお話をいただき、プレ起業の準備をしている時。なんだかんだで父のアドバイスを無視していました。なんて親不孝なんでしょう。あの時に父に意識があったら何て言われたんだろう。「お前アホか?」って言われたんだとも思いますし、「しょうがねぇ奴だな」と笑ってくれたのかもしれません。いずれにせよ、今は墓前に手を合わせることしかできません。
その後も堪え性の無さは続き、結局自分の会社を立ち上げました。人材紹介業でいくことだけはブレていませんでした。何故なら今までで一番やりがいを感じている仕事だからです。
※もしかしたら、40歳にもなって他の業種を検討するだけの頭も無かったのかもしれません。もうちょい若かったら色々手を出してたかもしれませんし、複数事業を走らせられる20-30代の経営者って凄いなと思います。
会社を立ち上げる時、思っていたことはいくつかあります。
・自分のやりたいようにこの仕事をやろう。
・ちゃんと目の前の人に真剣に向き合おう。
・当たり前のことをしよう。
・会って良かったと思ってもらえるようにしよう
・父の倒れた70歳まで僕も自分の会社で人生を全うしよう
ということです。もっと細かくストラテジーとかゴールとか考えるのが今時でしょうが、当時は細かいことはやらんとわからんとしか考えていませんでした(実際今もそう思います。考えてからやることも大事ですが、走りながら考えることも同じくらい大事だと思っています)。
と、余談がすんごく長くなりましたが、法人登記をしようとすると否が応でも社名て必要になりますので、当時の気持ちを何かまとめられたものは無いかとめちゃくちゃ調べました。本来楽しい作業なんでしょうけど、登記タイミング慌てていたので結構苦しかった気がします。
僕の生まれた長野はとても星空の綺麗な場所で、幼い頃から何気なく夜空を見上げるのが好きでした(すごく天体に詳しいわけではありません)。
星の名前いいなと思った時に、一番輝く星ってなんだろうな?と思いだしました。1番目がシリウスという恒星。ギリシャ語に変換すると(父の会社名がギリシャ語からきていたので少し父の何かを組み込みたいとリンクさせようとしていました)、「光り輝くもの」以外に「焼け焦がすもの」という意味もあり、やめておきました。
では2番目は?というとカノープスという恒星がありました。ギリシャ語だと戦場の「水先案内人」。つまり操舵手を意味しました。また、中国では寿老人つまり福禄寿の化身(超酒好き)とされ、見ると長生きできるという意味もあるようでした。
一目見て、すごく気に入りました。転職するにしてもしないにしても職業の選択に間違いがないように、上手く舵取りしてあげられるエージェント、会って良かったと思われるエージェント、自分自身も長くこの仕事を続けたいという意味が全部入っているような気がして速攻で決めました。
※後々、音楽好きな業界の先輩に言われ、有名なドラムメーカーと名前が被っていることに気づきますが、ドラムは叩けないどころか、リコーダーさえ吹けません。
これが、我が社の社名の由来です。
名前に恥ずかしくない仕事ができているかというと、まだ全然ですし、むしろ名前負けしていますが、仕事が上手くいかない時はこの語源を思い出すようにしています。
ちなみにこのカノープス。日本だと非常に見つけづらく、オーストラリアのメルボルンくらいに行かないと確実には見れないそうです。なので沢山稼いで、初の社員旅行はメルボルンにしようと思っています。いつやねんという話ですが本当です。

カノープス株式会社 青山

cano-pus.com