スタートアップ育成5ヵ年計画とは?2022年〜2027年までの政府の戦略と施策

5year-startup-developmentplan

日本政府が2022年に発表した「スタートアップ育成5ヵ年計画」は、日本のスタートアップエコシステムを世界水準に引き上げ、持続的なイノベーションを促進するための重要な戦略です。本記事では、経済産業省のスタートアップ育成に関する取組の解説資料を元にこの計画の開始背景から目標、そして具体的な施策について掘り下げます。スタートアップの現状を理解し、日本がどのようにして次世代のビジネスを育成しようとしているのかを明らかにします。

スタートアップ育成5ヵ年計画とは?

スタートアップ育成5ヵ年計画は、2022年11月に閣議決定され、日本政府が2022年度から2027年度までの5年間にわたって、スタートアップ企業の成長を促進するために策定された長期的な戦略です。この計画の目的は、日本が抱える少子高齢化や産業構造の転換という課題に対処し、持続的な経済成長を実現することです。特に、スタートアップ企業を中心としたイノベーションを加速させ、国内外での競争力を強化することが目指されています。

この計画の背景には、スタートアップが経済成長の重要な推進力として期待されていることがあります。政府は、スタートアップエコシステムの強化を通じて、ユニコーン企業の創出や起業家精神の育成を図り、持続的なイノベーションを促進するための包括的な支援体制を構築しています。

主要目標:スタートアップ企業数と投資額の増加

スタートアップ育成5ヵ年計画の中核となる目標は、スタートアップ企業の数と投資額を大幅に拡大することです。2023年時点で、日本国内には約22,000社のスタートアップ企業が存在しており、これは2021年の約16,100社から約1.5倍に増加した結果です​。政府は今後もこの数を増やし、スタートアップの活性化を目指しています。

また、ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)は、2023年時点でSmartHRなど8社存在しています​。計画の目標は、この数をさらに増やし、国際的な競争力を持つスタートアップ企業を育成することです。

さらに、スタートアップへの年間投資額は2022年には9,664億円に達しており、過去10年で約10倍に成長しています​。政府は今後も投資額の増加を目指し、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家への税制優遇策を強化し、スタートアップへの資金供給をさらに促進する方針です。

計画の具体的な施策:資金調達から規制改革まで

スタートアップ育成5ヵ年計画には、資金調達の支援や規制改革に関する具体的な施策が盛り込まれています。資金調達面では、政府系ファンドやベンチャーキャピタルによる大規模な投資支援が行われ、特に創業初期のスタートアップに対する資金供給が強化されています。また、エンジェル投資家向けの税制優遇措置が拡充され、スタートアップ企業への資金の流れが改善される見込みです​。

規制改革の面では、スタートアップの新規事業創出を妨げる規制の見直しが進められており、特に公共調達への参加機会が拡大されています。これにより、従来は大企業に限られていた政府調達プロジェクトにもスタートアップが参入できるようになり、ビジネスチャンスが広がることが期待されています。

起業家教育と大学発スタートアップ支援の強化

スタートアップエコシステムの基盤となるのは、起業家精神を持った人材の育成です。この点で、スタートアップ育成5ヵ年計画では起業家教育の強化が重要視されています。小中高校から大学・大学院に至るまで、起業に対する教育が段階的に導入され、次世代の起業家を育成するためのカリキュラムが整備されています。

また、大学発スタートアップの支援も強化されています。2023年には大学発のスタートアップ数が4,288社に達し、過去最高を記録しました​。政府は、大学での研究成果を基にした新規事業の創出を支援し、研究開発型スタートアップの成長を促進しています。特に、技術シーズを基にしたディープテック分野のスタートアップは、日本の新たな産業の柱として期待されています。

グローバル展開支援と日本の未来への課題

スタートアップ育成5ヵ年計画では、スタートアップ企業のグローバル展開も重要な柱とされています。政府は、スタートアップの海外進出を支援するため、国際的なスタートアップイベントを開催し、海外市場へのアクセスを促進する施策を進めています。特にシリコンバレーやアジア地域など、世界のスタートアップハブとの連携を強化し、日本のスタートアップが国際競争力を高めるための支援を行っています​。

しかし、日本のスタートアップエコシステムにはまだ課題が残っています。特に、国内の起業文化の醸成やリスクを取る企業家精神の育成が必要です。また、資金調達のさらなる多様化や、スタートアップ企業の海外進出を促進するためには、政府だけでなく、民間企業や教育機関との連携が不可欠です。

まとめ

この記事では、日本政府のスタートアップ育成5ヵ年計画について解説しました。この計画は、2022年度から2027年度までの5年間で、スタートアップ企業数の増加、ユニコーン企業の創出、そして投資額の拡大を目標としています。具体的な施策として、資金調達支援や規制改革、起業家教育の充実、大学発スタートアップ支援が挙げられます。さらに、スタートアップのグローバル展開も支援され、日本のスタートアップエコシステムが世界水準へと引き上げられることが期待されています。しかし、課題も残されており、政府、民間、教育機関の連携が今後の成功の鍵となるでしょう。

合わせて読みたい
SaaS業界に見る日本のスタートアップエコシステムの役割

青山 俊彦

青山 俊彦カノープス株式会社 代表取締役

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

関連記事