
クラウド型サービスが普及する中で、注目されているのが「ハイブリッドSaaS」です。これは、クラウドの利便性とオンプレミスの堅牢性を両立させた新しいシステム構成を指します。
本記事では、ハイブリッドSaaSとは何か、その特徴やメリット、導入事例までを詳しく解説します。クラウド化の次の一手として注目される理由を理解し、自社における活用の可能性を探ってみましょう。
ハイブリッドSaaSとは?基本概念を解説
ハイブリッドSaaSとは、クラウドとオンプレミスのシステムを組み合わせたソリューション提供モデルです。従来のSaaSがインターネットを通じて全ての機能をクラウド上で提供していたのに対し、ハイブリッドSaaSは、重要なデータやプロセスを自社内で保持しながら、それ以外の機能はクラウド上で活用するという設計が特徴です。
クラウドの拡張性や運用効率を享受しつつ、自社で管理すべき情報はオンプレミスに保持することで、柔軟かつ安全なシステム運用が可能になります。
なぜ今、ハイブリッドSaaSが注目されているのか
ハイブリッドSaaSが注目されている背景には、セキュリティやコンプライアンスへの高まる要求があります。特に金融や医療など、情報の取り扱いに厳しい業界では、全てをクラウドに預けることに慎重な姿勢があります。
ハイブリッドSaaSなら、機密性の高いデータは社内に保持しつつ、業務効率を上げるためのアプリケーションや分析機能はクラウドで提供できるため、バランスの取れたシステム運用が実現します。また、クラウド移行を段階的に進めたい企業にも最適です。
導入が進む業界と企業の特徴

ハイブリッドSaaSの導入は、大企業や規制業界、製造業を中心に広がっています。大企業では、既存のレガシーシステムが多く残っており、一気にクラウドに移行するのは現実的ではありません。そこで、まずは一部機能からクラウド化し、将来的な全面移行を見据える形で導入されます。
金融や保険、医療などの業界では、規制に対応するためにも自社内に情報を保持するニーズが強く、ハイブリッドモデルが適しています。また、製造業などでも工場内の機器とクラウドの連携が重要で、ハイブリッドが求められる構成となります。
ハイブリッドSaaSの構成と運用モデル
ハイブリッドSaaSは、クラウドとオンプレミスの役割分担が明確です。たとえば、顧客データベースや機密情報はオンプレミスで管理し、業務ダッシュボードやBIツールなどの分析機能はクラウド上で稼働させるといった設計が一般的です。また、API基盤はクラウド側に設置することで、各種SaaSとの連携が容易になります。
業務プロセスの中でも、セキュリティ要件が高い処理だけをオンプレミスに残し、他はクラウドに載せるなど、業務ごとの最適配置が可能です。こうした構成により、パフォーマンスとセキュリティを両立できます。
実際の導入事例から見る活用のリアル
実際にハイブリッドSaaSを活用している企業の例として、SAP S/4HANA Cloud, Private Editionがあります。これはクラウド型ERPでありながら、顧客の要件に応じてクラウドとオンプレミスを柔軟に使い分けることができます。
また、SalesforceとMuleSoftの連携事例では、既存のオンプレミスシステムとSalesforceを統合し、既存資産を活かしたCRM環境の構築に成功しています。こうした導入事例は、ハイブリッドSaaSの柔軟性と実用性を示す好例です。
まとめ
本記事では、ハイブリッドSaaSの基本的な概念から、注目される理由、導入業界、構成、実際の事例までを解説しました。クラウドとオンプレミスを最適に使い分けるこのモデルは、セキュリティや既存資産との連携が求められる企業にとって有効な選択肢です。今後さらに普及が進むと予想されるため、SaaSの進化を理解するうえでも重要なキーワードです。
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