副業を巡る企業の姿勢は、年々大きな注目を集めています。一部の企業では副業を積極的に解禁し、従業員に新たなチャンスを提供する動きが見られる一方で、副業を禁止する方針を貫く企業も存在します。
それぞれの立場にはどのような背景があり、どんな理由からその決定がされているのでしょうか?本記事では、副業OKの企業とNGの企業、それぞれの言い分とその背景を詳しく解説します。
副業OKの企業が増える背景
副業を解禁する企業は年々増加しています。経団連の調査では、2022年時点で回答企業の約70.5%が副業を「認めている」または「認める予定」と回答しており、この数値は過去の調査よりも増加傾向にあります。この背景には、働き方改革や多様な働き方を求める社会の流れや、労働生産人口の減少などが大きく影響しています。加えて、優秀な人材を確保するために、柔軟な働き方を認めることが企業の競争力向上につながると考えられています。
さらに、リモートワークが広がったことも副業解禁を後押ししています。従業員のライフスタイルが多様化する中、従来の「1社専従」という働き方が見直されているのです。
副業を解禁する企業のメリットと考え方
副業を解禁する企業には、以下のようなメリットがあります。
- ・人材流出の防止
副業を認めることで、魅力的な企業として優秀な人材の離職を防ぐ狙いがあります。特に若い世代にとっては、柔軟な働き方が転職の重要な条件になるケースが増えています。
- ・スキルアップの促進
副業を通じて得られる知識やスキルは、本業にも活かされる可能性があります。特に、デジタルスキルやマーケティングの知識など、幅広い分野での学びが期待できます。
- ・モチベーションの向上
副業を認めることで、従業員が主体的にキャリアを形成する姿勢を促進します。この結果、社員のモチベーションが向上し、仕事のパフォーマンスにも良い影響を及ぼすと考えられます。
副業NGを貫く企業の理由
一方で、副業を禁止する企業にも合理的な理由があります。
- ・長時間労働の懸念
副業が本業の業務時間外に行われるため、労働時間が過剰になるリスクがあります。本業への影響を懸念する声が根強いのです。
- ・情報漏洩リスク
特に同業他社での副業の場合、機密情報や技術の漏洩リスクが高まります。このため、副業を完全に禁止する方針を取る企業も少なくありません。
- ・本業への集中
副業が本業の集中を妨げると考える企業もあります。本業のパフォーマンスが低下することを懸念し、従業員には「1社に全力を尽くす」姿勢を求めることが多いです。
- ・労務管理の複雑化
副業を認めると、従業員の労働時間を把握するのが難しくなります。特に労働基準法の遵守が課題となり、健康管理や労務管理の負担が増加することが懸念されています。
副業解禁の流れが進む他の要因
副業を解禁する流れは、個人のキャリア観の変化と企業の競争力向上も
- ・国民の長寿化と社会保障などへの不安感
平均寿命は2010年現在で男性が79.64年、女性が86.39年でしたが、2060年には男性が84.19年、女性が90.93年となり、生活を支えるためのキャリアも長くなる見込みです。加えて社会保障の財源の枯渇なども予想される中、「人生100年時代」に対し、複数の収入源を持つことで経済的な安定を得たいと考える人が増えています。
- ・テクノロジーの進化
オンラインプラットフォームやフリーランスのマッチングサービスの発展により、副業を始めるハードルが下がったことも大きな要因です。
副業解禁時に従業員が気を付けるべきポイント
副業が解禁された場合でも、従業員には注意すべき点があります。
- ・本業とのバランス
副業に時間やエネルギーを注ぎすぎると、本業に影響が出る可能性があります。あくまで本業が優先されるべきです。
- ・契約内容の確認
会社の就業規則や労働契約を確認し、許可を得る必要がある場合は事前に手続きを行いましょう。
- ・税務処理の理解
副業収入は確定申告が必要です。税務処理を正確に行うことで、トラブルを防ぐことができます。
- ・情報管理の徹底
副業先で得た情報が、本業に悪影響を及ぼさないよう注意する必要があります。守秘義務を徹底することが重要です。
まとめ
副業を巡る企業の方針は、副業解禁を進める企業と、それを禁じる企業に二分されています。それぞれの立場には合理的な理由があり、企業の経営方針や業界特性に応じて判断されています。副業を選択肢として活用する場合でも、従業員は本業とのバランスや法令順守を重視する必要があります。企業と従業員が相互に理解を深めることで、より良い働き方が実現できるでしょう。