アンチユニコーン?持続可能性や社会的価値を重視する「ゼブラ」企業とは何か?

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スタートアップ業界では、数十億ドル規模の急成長を目指す「ユニコーン企業」が注目を集めていますが、近年ではその経済成長性とは一線を画す「ゼブラ企業」が注目されています。本記事では、「ゼブラ企業」の特徴や価値観について詳しく解説し、その魅力を探ります。ゼブラ企業はどのような考えのもとで成り立ち、どのような点でユニコーン企業と異なるのでしょうか?

ユニコーン企業とゼブラ企業の違いとは?

まず、ユニコーン企業とは、企業価値が10億ドル以上で、急成長を遂げるスタートアップを指します。主にテクノロジー業界でこのような企業が多く、ベンチャーキャピタル(VC)から多額の資金調達を受け、短期間で市場シェアを拡大することを目標にしています。ユニコーン企業は投資家の期待に応え、急速な成長と高リターンを提供することが求められます。

一方、ゼブラ企業は「成長よりも持続可能性」や「利益だけでなく社会的価値」を重視する企業スタイルです。ゼブラ(シマウマ)の名前は、「白と黒が共存する」ということから、利益追求と社会的使命の両方をバランスよく追い求める姿勢を表しています。ゼブラ企業は短期的な成長よりも、安定的で持続可能な経営を目指し、コミュニティや従業員、そして環境にも配慮したビジネスを展開します。

ゼブラ企業が持つ主な特徴

ゼブラ企業には、次のような特徴が見られます。

  • 社会課題の解決に注力
  • ゼブラ企業は利益の追求だけでなく、社会問題の解決にも積極的に取り組んでいます。環境問題や貧困、教育格差などに取り組むことで、社会に貢献しながら事業を成長させるのが特徴です。

  • 持続可能な成長
  • ユニコーン企業のような急成長は目指さず、長期的に安定した成長を目指します。これにより、無理な拡大戦略を取らず、持続可能な経営基盤を構築します。

  • コミュニティ重視
  • ゼブラ企業は、顧客やパートナー、従業員といったステークホルダーとの関係を重視します。自社の利益だけでなく、関係者全体の利益や満足度を意識し、地域社会やコミュニティとの協力を大切にしています。

  • 外部投資に依存しない
  • ゼブラ企業は、投資家の短期的な利益を優先するよりも、独立性や自主性を維持することを重視します。そのため、外部資金への依存度が低く、自己資本や内部資源の活用に力を入れる企業が多いです。

ゼブラ企業のメリットと課題

ゼブラ企業のメリットは、ビジネスを通じて社会課題の解決を図るという使命を持てることです。また、持続可能な成長を目指すことで、従業員や顧客からの信頼が厚くなり、長期的なブランド価値の向上が期待できます。加えて、外部投資への依存度が低いため、意思決定の自由度が高く、ビジネスの方向性を柔軟に調整できる点も大きな利点です。

一方、ゼブラ企業にも課題があります。まず、急成長を求める投資家からの資金調達が難しいため、資金面での課題が生じやすい点です。また、短期的な収益が大きくないため、採算が合うまでに時間がかかることもあります。そのため、ゼブラ企業を支援する新しいタイプの投資家やファンディングモデルが求められています。

注目すべきゼブラ企業の事例

日本のゼブラ企業の代表例として、「株式会社ボーダレス・ジャパン」が挙げられます。ボーダレス・ジャパンは、社会課題の解決を目的としたビジネスを支援するため、起業家に対して事業投資やコンサルティング、その他のサポートを提供しています。世界13カ国で51のソーシャルビジネスを展開しており、地球規模の社会的インパクトを目指しています。特に注目すべきは「恩送りのエコシステム」という独自の仕組みで、事業の成功を次の社会貢献へとつなげていくサイクルを作り出しています。この取り組みは2019年にグッドデザイン賞を受賞しており、利益よりも社会的使命を重視するゼブラ企業の理念に合致したモデルです。

また、日本では他にも、環境保護活動を目的にリサイクル事業を展開する企業や、地域コミュニティと連携し地域資源を活用したビジネスを行うスタートアップも増えています。こうした企業は、短期的な利益よりもビジネスを通じた社会的インパクトを重視しているのが特徴です。彼らは、顧客や従業員といったステークホルダーとの関係性を大切にし、持続可能な成長を追求しています。

なぜ今ゼブラ企業が注目されているのか?

ゼブラ企業が注目されている背景には、環境問題や社会的不平等などの課題が深刻化し、消費者や社会全体が企業に対して社会的責任を求めるようになったことが挙げられます。また、リーマンショックやパンデミックなどの影響で、企業の長期的な安定や持続可能性の重要性が再認識されています。そのため、ゼブラ企業のようなビジネスモデルが新たな選択肢として注目されているのです。

加えて、スタートアップ業界の中でも、より多様な価値観やミッションに基づいた企業が増え、特にミレニアル世代やZ世代を中心に「持続可能なビジネス」への関心が高まっています。ゼブラ企業は、その価値観に応える形で、より社会的に意義のあるビジネスモデルとして評価されています。

まとめ

ゼブラ企業は、急成長を目指すユニコーン企業とはまた異なる立場にあり、社会的使命と利益のバランスを重視します。急速な拡大よりも持続可能な成長と社会課題の解決に注力することで、消費者や地域社会からの信頼を得ることができます。社会や環境への配慮を重視する新しい時代の起業スタイルとして、ゼブラ企業はこれからも注目を集めていくでしょう。

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青山 俊彦

青山 俊彦カノープス株式会社 代表取締役

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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