スキル・オーバー・ディグリー(Skills‑over‑Degrees)|学歴よりスキル重視の採用が主流に?

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昨今、学歴よりも実務スキルを重視する採用手法「スキル・オーバー・ディグリー」が、米国や欧州を中心に広がっているようです。本記事では、この動きの背景や現状、導入の課題と対応策を述べ、SaaS業界への転職を目指すビジネスパーソンに向けて、今すべき行動を分かりやすく整理します。

なぜ今、スキル重視の採用が急拡大しているのか

デジタル化やAIの普及、環境技術の進展により、従来の学歴よりも実務スキル重視が急激に進んでいます。特にAIやグリーンテック分野では「学位よりスキル」が求められる求人が増加傾向です。

学術研究では、米国ではAI関連職で「学位要件」が減り、スキルの価値が高まっているとの報告があり、スキルの賃金プレミアムは高いとの調査もあります(AIスキルは23%の賃金プレミアム。博士号以上は33%程度)。

また、CiscoやIBM、Aon、GM、Walmartといった企業は非学位者を積極採用し、従業員の定着率や多様性の向上に成功しているようです(参照記事

実際の採用現場ではどこまで進んでいるのか

TestGorillaの調査では、2024年時点で81%の企業が何らかのスキルベース採用を導入しており、この数字は2022年の56%から大きく上昇しています。

しかし、実際の採用データでは「スキルのみで採用されたケース」は依然少数で、Burning Glass Instituteの報告では、学位要件を撤廃した求人でも非学位者の採用は全体の0.3%程度と、限定的であるとされています。

企業側は依然として学位を「社会適合のシグナル」として捉え、評価プロセスの見直しに踏み切れていないケースが多いようです。

背景にある労働市場の構造変化と企業の意識

労働市場では特定職種における人材不足が深刻化しており、スキルを持たない候補者の採用・定着が困難になっています。

また、Burning Glass InstituteではAIやデータ分析分野において、スキル自体の報酬が学位以上に高い傾向を示しており(スキルプレミアム23%)、企業は早急にスキル定義と育成体制の整備が必要とされています。

成功するために企業が取り組むべき仕組み改革とは

スキル重視採用を成功させる企業では次のような改革が見られます:

・必要スキルの明確化
「Python実装経験」や「AIモデル開発実績」など職務毎に定義

・スキル評価の導入
コーディングテストやケースワークショップによる可視化

・採用担当者のスキル育成
HRと現場が共同で評価トレーニング実施

・代替教育プログラム活用
ブートキャンプやMOOCs、社内育成をスキル確保に活用

これらの取組により、採用の精度向上、多様性強化、定着率アップに成果が出ていると報告されています。

転職者/求職者としてどう動くべきか

SaaS業界を目指す読者に向けて、有効なアクションは以下の通りです:

・市場価値に目を向ける
学歴に頼らず、実務成果重視でスキルを磨く

・オンライン学習・認定資格取得
AI、データ分析、SaaS関連スキルを可視化

・ポートフォリオ整備
GitHubや実績紹介でスキルを直接伝える

・スキル評価型選考に挑戦
コーディングテスト・課題解決型面接を活用

・ネットワーキング強化
イベント参加・コミュニティ創設から信頼を構築

まとめ

スキル重視の採用は「学歴に代わる公平な能力評価制度」としてトレンドとなっており、企業・求職者双方が制度整備とスキル証明を意識的に取り組むことで、大きなチャンスが生まれています。SaaS業界でキャリアを築くなら、この潮流を自分ごと化して積極的に動きましょう。

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青山 俊彦

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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