
SaaS業界を中心に、営業体制の見直しが加速しています。その中で注目を集めているのが「オールバウンド営業」という新しいアプローチです。インバウンドとアウトバウンドを融合させたこの手法は、リード獲得から成約、さらにはアップセルまでを一気通貫で設計できるのが魅力です。本記事では、オールバウンド営業の特徴や導入の背景、活用チャネル、実践する企業の特徴まで詳しく解説します。
オールバウンド営業とは?基本概念と注目の背景
オールバウンド営業とは、インバウンド(問い合わせや資料請求など顧客の能動的なアクションを起点とする営業)と、アウトバウンド(電話やメールなど営業側からのアプローチ)を組み合わせた営業戦略のことです。
これまでは、インバウンドはマーケティングチーム、アウトバウンドは営業チームというように役割分担され、それぞれが独立したKPIを追うケースも多くありました。しかし、現在のBtoB営業では顧客の購買プロセスが複雑化し、複数のタッチポイントで一貫性のある対応が求められるようになっています。
そのため、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスなどの部門が横断的に連携し、リード獲得から商談、成約、さらにアップセルやリテンションまでを通じて一貫した体験を提供する「オールバウンド型」営業体制が注目されているのです。
オールバウンド営業は単なる「営業手法」ではなく、「組織戦略」としての位置づけが強まっています。
なぜSaaS企業でオールバウンドが注目されるのか
SaaS企業がオールバウンド営業に注目する理由は、主に以下の3つです。
・リードの質と量が多様化している
・プッシュ型やプル型といった従来型営業の限界
・サブスクリプション型モデルにおけるLTV重視の収益構造
単一チャネルだけでは見込み顧客へのアプローチが難しくなり、より多様な手法の組み合わせが求められるようになっています。また、変化の激しいニーズに対応するには、顧客ごとに最適なタイミングとチャネルを見極めた提案が不可欠です。
SaaSにおいては継続的な契約とアップセルが収益の鍵を握るため、導入前から導入後まで一貫した顧客体験を提供できるオールバウンド体制が必要不可欠になっています。
オールバウンド営業で活用される主なチャネル

オールバウンド営業では、インバウンドとアウトバウンドの両面で多様なチャネルが活用されます。
・インバウンド:SEO、リスティング広告、ホワイトペーパー、ウェビナーなど
・アウトバウンド:メール、電話、LinkedInなどのSNS、リファラル、ABMなど
これらのチャネルを顧客の関心や購買ステージに応じて適切に使い分け、シームレスな体験を構築することが重要です。
また、HubSpot、Salesforce、MarketoといったCRM/MAツールを活用し、情報の一元管理とリアルタイム連携を図る体制が不可欠です。
オールバウンド営業を導入する際の注意点とポイント
導入時に押さえておくべきポイントは以下のとおりです。
・部門間の連携体制を整える
・CRMやMAなどのツールを統合運用する
・カスタマージャーニーに沿ったチャネル設計を行う
・「テスト&ラーニング」で柔軟に改善する文化を根付かせる
特に、KPIや業務範囲が部門ごとに分断されていると、顧客体験の一貫性が損なわれてしまいます。営業プロセス全体を俯瞰し、仮説検証を繰り返すことが、成功への近道となります。
まとめ
オールバウンド営業は、インバウンドとアウトバウンドを融合し、部門横断で一貫した顧客体験を提供する営業戦略です。特にSaaS業界では、複雑化する購買プロセスに対応し、LTVを最大化するためにこのアプローチが非常に有効です。成功には部門間の連携、適切なツール活用、柔軟な改善体制が不可欠です。本記事を通じて、オールバウンド営業の導入に向けた具体的なヒントをつかんでいただけたなら幸いです。