B2Bセールマーケの「ダークソーシャル」活用とは?

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近年、B2Bマーケティングやセールスの世界で「ダークソーシャル(Dark Social)」という言葉が注目されています。これは、計測が難しいものの、購買意思決定に大きな影響を与える情報流通チャネルを指します。例えば、Slackに設けられた業界コミュニティ、LinkedInのDM、WhatsAppやLINEでの情報共有、口コミなどがこれに当たります。

従来のマーケティングでは、Googleアナリティクスなどのツールを活用し、リード獲得や広告の効果測定を行うのが主流でした。しかし、近年ではこうした可視化できる指標だけでは購買プロセスを十分に把握できないケースが増えています。特にSaaS企業では、見えない場所での情報のやり取りが大きな影響を及ぼしているため、ダークソーシャルを意識した戦略が不可欠になっています。本記事では、B2Bセールスにおいてダークソーシャルをどのように活用すべきかを解説します。

どんなチャネルがダークソーシャルに当たるのか

ダークソーシャルに分類されるチャネルは、主に以下のようなものがあります。

・業界や社内のクローズドなコミュニティ(Slack、Discord、Microsoft Teams など)
・特定の業界関係者が集まるオンライングループ(Facebookグループ、LINEオープンチャット など)
・プライベートメッセージングアプリ(WhatsApp、LINE、Facebook Messenger、LinkedInのDM など)
・コンテンツ経由の非直接流入(ポッドキャスト、ウェビナー、ニュースレター、ホワイトペーパーのシェア など)
・口コミやリファラル(同僚や友人からの紹介、業界の有識者による推薦 など)

これらのチャネルの共通点は、Googleアナリティクスやマーケティングオートメーション(MA)ツールでは測定しづらい情報の流れであることです。

B2Bセールスでのダークソーシャル活用方法

ダークソーシャルの影響力を活用するには、従来のリードジェネレーションや広告戦略だけでは不十分です。以下のような施策が有効です。

・コミュニティマーケティングの強化
業界のSlackグループに積極的に参加し、価値のある情報を提供することが有効ですが、売り込みは避けるべきです。また、自社独自のコミュニティを構築し、ユーザー同士の会話を促すことも効果的です。例えば、HubSpotはユーザーコミュニティを活用し、顧客とのエンゲージメントを高めています。

・社員のパーソナルブランディングの活用
LinkedInなどでの個人発信を推奨し、営業・マーケティング担当者が業界の専門家としての立場を確立することが求められます。特に、社内エバンジェリスト(影響力のある社員)を育成し、信頼度の高い情報発信を行うことで、ブランドの認知度向上につながります。

・ユーザー生成コンテンツ(UGC)の促進
顧客の成功事例をシェアしやすい形にすることで、口コミを自然発生させる仕組みを作ることができます。また、既存顧客にSNSや口コミでの拡散を促すキャンペーンを実施することで、間接的なリード獲得につなげることができます。

ダークソーシャルの影響を定性的に計測
商談時に「どこで当社を知りましたか?」という質問を必ず行い、定性的な情報を収集することで、マーケティング戦略の改善につなげることができます。また、Googleアナリティクスの直接流入(Direct)の増減を注視し、傾向を分析することも有効です。

SaaS企業における実践事例

Gong
AIセールス分析ツールを提供するGongは、LinkedInでの社員個人の発信を戦略的に活用。公式アカウントよりも営業担当者個人の投稿の方がエンゲージメントが高く、リード獲得につながっています。

Pavilion
営業やカスタマーサクセス向けのコミュニティを運営。有料のSlackコミュニティを通じて業界関係者のネットワーキングを促進し、クローズドな環境での口コミがSaaSセールスに大きな影響を与えています。

Lavender
営業向けのAIライティングツールを提供し、TwitterやLinkedInでの個人発信を中心にマーケティングを展開。広告費を抑えながらも、口コミを活用して成長を続けています。

日本の事例
SmartHRなど多くのSaaSベンダーがユーザーコミュニティを活用して知名度を向上させるなど、日本でもダークソーシャルを意識した戦略を採用する企業が増えています。

まとめ

従来の「リード獲得→ナーチャリング」というフローだけでは、B2Bセールスの成果を最大化できません。人々は見えない場所で情報を交換し、信頼できる情報を基に意思決定を行っています。

・コミュニティに参加し、価値を提供する
・社員のパーソナルブランディングを活かす
・口コミが自然に生まれる仕組みを作る

これらの施策を取り入れることが、これからのB2Bセールスには欠かせません。

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青山 俊彦

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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