TAS(Target Account Selling)は、20世紀後半に誕生した法人営業の手法で、特定の顧客アカウントに集中して効率的な営業活動を行うことを目的としています。オンプレミス時代から続く基本的な手法でありながら、そのアプローチ手法は、現在のSaaS業界においても活用できるものです。本記事では、TASの成り立ちから、現代の営業戦略における実践方法までを詳しく解説します。
TAS(Target Account Selling)とはどんな営業手法か?
TAS(Target Account Selling)は、法人営業において特定のターゲット顧客(アカウント)を選定し、その顧客に特化した営業活動を行う手法です。顧客のニーズや課題を深く理解し、カスタマイズされた提案を通じて信頼関係を築くことが特徴です。
この手法は、B2B営業や複雑な意思決定プロセスが伴う業界で特に効果を発揮します。SaaS業界を含む多くのビジネスシーンで、現在も活用可能な営業フレームワークとして認識されています。
TASが誕生した背景とその歴史
TASの明確な誕生時期については正確な情報がありませんが、1980年代から1990年代にかけてのオンプレミス型業務ソフトウェアの普及時期にその概念が確立されたと考えられています。当時、法人営業では複雑な意思決定プロセスへの対応が求められ、顧客ごとに異なる課題を解決するための方法論が必要とされていました。
特に外資系エンタープライズソフトウェア企業で採用され、優績営業担当者の行動を分析してフレームワーク化されたのがTASです。これにより、営業活動の効率化と成果向上が図られました。
現在ではオンプレミスからクラウドへと業界の主流が移行していますが、TASの持つ顧客中心のアプローチは、SaaSモデルにおいても変わらず役立つ手法といえます。
TASがSaaS時代に役立つ理由
TASはオンプレミス時代の営業手法として発展しましたが、以下の理由からSaaS時代にも適応可能なスキルセットです。
・長期的な顧客価値を重視するアプローチ
TASの特定アカウントの個別対応による信頼関係の構築は、顧客の契約継続率を高める上で効果的です。SaaS業界でも、特にARRなどの影響が強いエンタープライズアカウント攻略時などにに有効です。
・複雑な意思決定プロセスへの対応力
SaaSの導入は複数部門や多くのステークホルダーが関わることが一般的です。TASのフレームワークは、これらの関係者全体にアプローチする計画を立てるのに有効です。
・リソースの効率的配分
営業リソースを重点アカウントに集中させるTASは、顧客獲得コスト(CAC)が高いSaaS業界において、効率を高める手法として適しています。
SaaS営業でTASを成功させるためのポイント
TASをSaaS業界の営業シーンで活用するには、以下のポイントに注目すると良いでしょう。
・ターゲットアカウントの選定
顧客のLTV(ライフタイムバリュー)や成約見込みの高さなどを基に重点顧客を絞り込みます。
・顧客データの活用
CRMなどのツールを利用して、ターゲットアカウントに関する詳細情報を収集・分析します。
・カスタマイズされた提案
顧客固有の課題に焦点を当てた提案を作成し、競争優位を確保します。
・組織的な連携
営業、マーケティング、カスタマーサクセスの連携を強化して、顧客に一貫性のあるメッセージを届けます。
TASを活用するメリットと課題
メリット
1.成約率の向上:顧客の課題を深く理解することで、提案の精度が高まり、成約率が向上します。
2.リソース効率の改善:重要顧客に集中することで、営業リソースを最適化できます。
3.長期的な信頼関係の構築:深い関係性が、継続利用やアップセルにつながります。
課題
1.時間とリソースのコスト:顧客リサーチや提案準備に多くの時間が必要です。
2.適切なターゲット選定の難しさ:選定基準が明確でない場合、効果が十分に発揮されないこともあります。
3.組織的導入のハードル:全社的な理解と実践には時間がかかることがあります。
まとめ
TAS(Target Account Selling)は、20世紀後半に生まれた営業手法ですが、その顧客中心のアプローチや効率的なリソース配分といった考え方は、現代にも通じる普遍的な価値を持っています。新旧問わず営業手法を学び、自身のスキルとして活かすことは、キャリアの幅を広げる可能性につながります。本記事は少しでもみなさんの役に立てば幸いです。