SaaS業界で扱われるプロダクトは「Must Have(不可欠)」と「Nice to Have(あると便利)」の2つに分けることができ、それぞれでニーズの特性や営業の難易度が異なります。たとえば業務管理系のプロダクトは顧客の課題が明確で提案しやすい一方、セールスマーケティング系プロダクトは「なぜ導入すべきか」の提案力が求められる傾向にあります。本記事では、こうしたプロダクト特性と営業に求められるスキルの違いについて解説します。
Must HaveとNice to Haveの違いとは
顧客ニーズが「Must Have」と「Nice to Have」かどうかは、SaaSプロダクトの営業戦略やターゲットの意思決定に大きな影響を与えます。
「Must Have」とは、そのプロダクトが事業の根幹に直結し、業務運営において欠かせない存在であることを意味します。対して「Nice to Have」は、事業の本質的な運営には必須でないものの、導入することでプラスの効果を見込めるプロダクトです。この違いにより、営業活動や顧客へのアプローチ方法が変わってくるのです。
特に、業務管理系のSaaSは「Must Have」に分類されることが多いです。これには経理や労務管理を支援するマネーフォワードやfreee、SmartHRなどが含まれます。一方で、名刺管理やセールスマーケティングに寄与するSansanなどは「Nice to Have」の側面が強いと言えるでしょう。したがって、営業担当者にとって、プロダクトのポジションによって異なるアプローチが求められます。
業務管理系プロダクトがMust Haveとされる理由
業務管理系プロダクトが「Must Have」として扱われる理由は、ビジネス運営上、欠かせない業務フローに関わるからです。経理や給与管理、労務といったバックオフィスの業務は、企業の法令遵守や日々の事業運営において必須です。たとえば、マネーフォワードやfreeeは会計管理を効率化し、SmartHRは労務管理を円滑にすることで、組織全体の業務効率を高めます。こうした製品は、導入することで即座にコスト削減や生産性向上の効果が見込め、課題が明確なため顧客のニーズが確固としているのが特徴です。
営業担当者にとっても、業務管理系プロダクトは課題の明確化が容易で、提案においても「業務負荷の軽減」「コスト削減」といった具体的な訴求ポイントを持ちやすいのが利点です。顧客側からも「なくてはならないシステム」として予算が組まれやすい特徴はあります。言い換えれば、こうしたプロダクトの営業では、顧客の明確な課題に対して的確なソリューションを提示する能力が重要になります。
セールスマーケ系プロダクトがNice to Haveとされる理由
一方で、Sansanのようなセールスマーケティング系のSaaSは、「Nice to Have」として扱われることが多いです。これらは、企業の業務効率化や成長促進を図る手段として有用であるものの、無くとも代替えできる方法もあるため、導入するか否かは企業で判断が異なります。そのため、「なぜこのプロダクトが自社に必要なのか」を理解してもらうことが営業にとっての大きな課題となります。
また、セールスマーケティング系プロダクトは、導入後の効果とその期待値が企業によって異なることが多く、導入前に期待値の調整や的確に伝える必要があります。営業担当者は単なる機能説明にとどまらず、「導入後の業績向上」や「具体的な業務改善」のビジョンを描き、それを顧客に伝えるスキルが求められます。このような製品の営業では、説得力のあるプレゼンテーションや、成功事例の共有による信頼構築が営業成否の鍵を握ります。
Must HaveとNice to Haveの営業で身につくスキルの違い
Must HaveとNice to Haveのプロダクトを扱う営業担当者では、求められるスキルが多少異なるように思います。まず、Must Haveのプロダクトを扱う営業では、顧客のニーズが明確なため、解決策の提示力が問われます。具体的な課題を正確に理解し、導入により得られる明確な効果を示すことが重視されます。このような環境では、効率的なヒアリングスキルやソリューションを提示する能力が向上します。
一方、Nice to Haveのプロダクトを扱う営業は、課題が明確でないケースも多いため、顧客への価値提案力や期待値コントロールが必要です。セールスマーケティング系のプロダクトでは、導入メリットを顧客がイメージしやすい形で提供し、導入後の業績向上を説得する力が不可欠です。こうした営業活動を通じて、顧客との信頼関係を築くためのコミュニケーション力や、高度なプレゼンテーションスキルが磨かれていきます。
キャリア選択におけるプロダクト特性の重要性
SaaS営業において、Must HaveとNice to Haveのどちらのプロダクトを扱うかはキャリア形成にも影響を与えます。Must Haveプロダクトの営業では、スムーズに成果を出しやすいため、営業スキルを基礎から着実に磨きたい方に向いています。逆に、Nice to Haveのプロダクトは営業難易度が高く、提案力や交渉力、顧客との長期的な関係構築力が求められるため、より高度な営業スキルの習得を目指す方に適しています。
このように、扱うプロダクトの特性を理解し、自分のキャリアビジョンに合致した営業スタイルやスキルを選択することが大切です。プロダクト特性と営業スタイルが合致していることで、効果的な営業活動を行うことができ、スムーズなキャリアアップが期待できるでしょう。
まとめ
SaaSプロダクトには「Must Have」と「Nice to Have」の2つの特性があり、営業の難易度や求められるスキルも異なります。Must Haveの業務管理系プロダクトは、課題が明確なため提案しやすく、効率的な解決策提示力が養われます。一方で、Nice to Haveのセールスマーケティング系プロダクトは、提案難易度が高く、顧客の課題や期待に応じた価値提案力が求められます。自分のキャリア目標に合わせてプロダクトを選び、最適なスキルを身につけていきましょう。