デジタル庁って何をしているの?デジタル庁年次報告からその取り組みを解説

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コロナ禍の21年発足されたデジタル庁。名前は知っていてもその取り組みどのようなものなのかわからない人も多いと思います。本記事では、同庁が実施した主な施策とその成果を、2023年9月から2024年8月までの年次報告書に基づいて解説します。報告書によるとマイナンバーカードのさらなる普及や行政手続のデジタル化、デジタル人材の育成など、デジタル社会の実現に向けた具体的な取り組みが進展したようです。本記事では、SaaS業界に関連する方々にも関係が深いこれらのテーマについて、政府の動向とその影響を探ります。

マイナンバーカードの普及と利活用の進展

デジタル庁の取り組みの中でも、マイナンバーカードの普及と利用促進は最も注目すべき項目です。2024年7月時点で、マイナンバーカードの保有枚数は国民の75%に達しました。これは、2023年7月時点から5%増加しており、政府の目標に近づいています。

また、マイナンバーカードを利用したデジタルサービスの拡大も進んでいます。特に、マイナ保険証としての利用は着実に伸び、2024年6月時点で保険証としての有効登録数は保有者の79%を突破しています。この他にも、公金受取口座の登録数は68%に達し、前年同月比で11%の増加を見せています。

SaaS業界においても、マイナンバーカードの利活用は今後新たなサービス展開に繋がる可能性があります。例えば、個人情報の安全性が求められる分野での本人確認や電子署名サービスにおいて、マイナンバーカードの機能を活用する機会が増加する可能性があります。

行政手続のデジタル化の進展

行政手続のデジタル化は、国民の利便性向上と行政業務の効率化を両立させる重要な施策です。2024年8月時点で、マイナポータルを利用したオンライン申請可能な自治体数はさらに増え、特に子育てや介護関連手続きにおいて、その普及率は65%を超えました。

さらに、確定申告におけるe-Taxとの連携が強化され、利用者数は前年比57%増加しました。また、年金関連の手続きでは、「ねんきんネット」とマイナポータルとの連携が拡充され、2024年8月には前年同月比で93%の増加を記録しています。

これらの施策によって、国民の行政手続にかかる時間や労力が削減されていると同時に、政府全体の業務効率化も進んでいます。SaaS業界においても、このようなデジタル行政手続の進展は、業務プロセスの自動化や新たなクラウドソリューションの開発機会を提供する可能性があります。

デジタル人材の育成と支援

デジタル社会の発展に不可欠なのが、デジタル技術を習得した人材の育成です。デジタル庁は、地域でのデジタル活用を支援する「デジタル推進委員」を引き続き任命し、2024年8月末時点で、その数は5.5万人超に達しました。これらの推進委員は、各地域でデジタル化の啓発活動を行い、高齢者やIT未経験者をサポートしています。

また、デジタル庁は企業や団体と連携し、幅広いデジタル教育プログラムの提供にも注力しています。特に、SaaS業界に関わる企業においても、社員のデジタルスキル向上を図る機会が増えており、このような政府の支援は人材育成の一環としても活用できるでしょう。

防災DXの推進

デジタル庁のもう一つの注力分野が、防災におけるデジタル技術の活用です。防災DX(デジタルトランスフォーメーション)は、災害時の情報共有や避難支援の効率化を目的とした取り組みで、2024年8月までに「防災DX官民共創協議会」の参加企業数は460を超え、前年から30%以上の増加を見せました。

また、災害時に役立つデジタルサービスの開発も進んでおり、サービスマップカタログに登録された防災関連サービスの数は前年比42%増の200に達しています。SaaS業界においても、防災分野は新たなソリューション開発の機会となり、地域社会への貢献と事業成長の両立が期待されます。

デジタル庁の組織体制と業務効率化

デジタル庁は自らの組織運営においても、デジタル化と効率化を進めています。2024年8月時点で、デジタル庁の職員数は1,105名に達し、そのうち48%が民間出身者となっています。このような官民の融合は、組織の柔軟性とデジタル化推進を進化させています。

また、業務効率化の面では、2024年7月までにGSS(ガバメントソリューションサービス)が普及しています。GSSとは、デジタル庁が主導する政府共通の標準的な業務実施環境のことを指します。これまで省庁ごとにバラバラだったICT環境をデジタル庁が一括で調達整備する取り組みです(ネットワークに加えて、業務用PCやWeb 会議やチャット、グループウェア名が含まれるようです)。現在までにデジタル庁、農林水産省、宮内庁、内閣府、復興庁、消費者庁など10省庁がGSSの導入を完了しており、約3.5万人が利用しており、利用率は100%です。

また、勤怠管理アプリの導入などで、月当たり243時間の業務時間削減が実現されており、これらの成果は他の官公庁にも波及することが期待されています。

このような取り組みは、民間企業にも参考となる事例です。特に、SaaS企業においては、自社内の業務効率化やリモートワーク推進のためのデジタルツール導入の参考になるでしょう。

まとめ

2023年9月から2024年8月までにデジタル庁は、マイナンバーカードの普及や行政手続のデジタル化、防災DXの推進など、デジタル社会の実現に向けた大きな成果を上げています。国民生活の利便性向上や行政業務の効率化に寄与するこれらの施策は、SaaS業界にとっても新たなビジネスチャンスの発見や、サービス改善のヒントとなりそうです。今後もデジタル庁の動向を注視していきましょう。

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青山 俊彦

青山 俊彦カノープス株式会社 代表取締役

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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