「お客様の成功のために」顧客志向が高いカスタマーサクセスだからこそ抱きやすい転職理由

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カスタマーサクセスは、その名のとおり顧客の成功を最優先に考え、課題に向き合う職種です。しかし、その高い顧客志向が故に、特有の悩みを抱えることも多く、それが転職理由に発展することもあります。この記事では、カスタマーサクセスに特有の転職理由を深掘りし、その背景にある課題や心理的負担について解説します。SaaS業界でカスタマーサクセスに従事する、あるいはこれから目指す皆さんが、キャリア選択の一助とするための新たな視点を提供します。

営業主導の成長とカスタマーサクセスの人員不足

SaaS企業において、営業部門の積極的な活動によって急速に顧客数が増加することはよく見られます。しかし、カスタマーサクセス部門の人員増加がこれに追いつかないケースが多々あります。カスタマーサクセス部門のリソース不足は、個々のカスタマーサクセスに過剰な業務負担をもたらします。多くの顧客を抱えることで、一社あたりの対応時間が減少し、結果として質の高いサポートが提供できなくなる可能性があります。

このような状況では、以下のような問題が発生しやすくなります:

  • ・顧客からの問い合わせ対応が遅れる
  • ・定期的なフォローアップが減少する
  • ・顧客の利用状況や課題の詳細な把握が困難になる
  • ・プロアクティブな改善提案が難しくなる

これらの問題が顕在化すると、カスタマーサクセスは自身の仕事の質に満足できず、顧客の期待に応えられていないというストレスを感じるようになります。「お客様の成功のために」という理念を実現できなくなるジレンマを抱えたCSMは、理想と現実のギャップに悩み、より良い環境がないかと感じることがあるようです。

製品開発の遅延による顧客対応の限界

SaaS企業では、製品開発の品質やスピードが競争力、顧客満足度に直結します。しかし、開発リソースの不足やプロジェクトの優先順位の問題により、顧客のニーズに応える新機能のリリースが遅れることがあります。このような場合、カスタマーサクセスは顧客とのコミュニケーションにおいて、製品の現状と顧客の期待との間にギャップが生じる場面に直面します。

具体的には、以下のような状況が考えられます:

  • ・顧客からの強い要望がある機能がなかなか実装されない
  • ・競合他社が新機能を次々にリリースする中で、顧客に対して自社製品の魅力を伝えにくくなる
  • ・既存の不具合や使いづらさが解消されず、顧客のフラストレーションが溜まる

カスタマーサクセスは、顧客の期待と社内の制約の間で板挟みになることで、強いストレスを感じることがあります。顧客志向を持つカスタマーサクセスほど、このギャップを埋めることができない現実に対してフラストレーションを抱く傾向があります。その結果、自分の価値観や理想に合った企業での転職を考えるようになるのです。

解約率の上昇とカスタマーサクセスの心理的負担

カスタマーサクセスの重要な指標である顧客継続率(リテンション率)が低下すると、カスタマーサクセスには強いプレッシャーがかかります。解約率の上昇は、カスタマーサクセスにとって心理的な負担となり、場合によっては強い罪悪感を引き起こします。

解約率が上昇する要因としては、以下のようなものが挙げられます:

  • ・競合他社の出現による自社製品の魅力の相対的低下
  • ・顧客企業の内部事情(経営悪化や戦略変更など)
  • ・製品の品質や信頼性に対する不満
  • ・サポートの質の低下

カスタマーサクセスは、自身が提供するサポートが十分であったとしても、これらの外部要因によって顧客を失うことがあります。特に、自分の努力が報われずに解約が発生した場合、その無力感は大きなストレスとなります。こうした状況が続くと、カスタマーサクセスは現職に対する意義を見失い、より良い成果を出せる環境を求めて転職を考えるようになることが一般的です。

では転職する?このような環境をどうとらえるのか?

ここまでにカスタマーサクセスの方々が抱く特有の悩みや転職理由としてよく伺う内容を記載しました。顧客志向、ホスピタリティの高いカスタマーサクセスだからこそ、顧客の要望に応えられない状況が転職理由につながることが多いようです。開発や営業、経営方針に関連した背景も多いため容易に状況を変えられないケースも多いと思います。ただ、このような状況に立ち向かうことで得られる貴重な経験もあります。例えば、叶えられない課題に対して現状のリソースで何ができるのか?どのような体制や仕組みで顧客の課題解決をカバーできるのかを考え、できる限りの改善策をテストすることで顧客先の課題により精通することができたり、理想の組織像、自身が身につけるべき能力が可視化できたりします。例えば、製品開発の遅れをカバーするために、顧客先のオペレーションを見直し、現状のシステムと顧客の中での課題のバランスを整え顧客満足度を上げるなどの改善経験をしているカスタマーサクセスの方もおられましたが、その経験が評価され、次の転職先では高い評価を得られていました。悩んでしまった時には今の状況を成長のための試練と考えるか、転職のタイミングなのかを一度立ち止まって考えることも大切です。

まとめ

この記事では、カスタマーサクセス特有の転職理由について、3つの観点から解説しました。高い顧客志向を持つCSMが直面する課題は、単なる業務量の問題にとどまらず、顧客の期待と現実のギャップ、製品開発の遅れ、解約率上昇による心理的負担など、多岐にわたります。より良い環境で顧客サポートを行いたいという思いから、転職を考えるケースが増加しています。ただ、その状況を成長のチャンスとして捉えることもできますので、一度立ち止まって自分に何ができるのかを考え直すことも大切です。

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青山 俊彦

青山 俊彦カノープス株式会社 代表取締役

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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