ジョブ型雇用にジョブ型人事、よく聞く言葉ですが、果たしてどんなものなのか?本記事では内閣官房が2024年8月28日に公表した「ジョブ型人事指針」を元にジョブ型人事についてまとめます。この指針は、企業側が働く従業員に対して求める職務とスキルを明確にし、適材適所の人材配置を行うことで、組織全体のパフォーマンスを向上させることを目指しています。ジョブ型人事の導入が企業の人材戦略にどのような影響を与えるのかを、実際の事例を交えながら学んでいきましょう。
ジョブ型人事の概要を学ぶ
ジョブ型人事とは、企業が従業員に対して明確な職務とスキル要件を設定し、それに基づいて人材を配置する人事制度のことです。従来の日本型雇用システムでは、長期に渡る雇用と年功序列を重視した人事制度が長らく使われていましたが、ジョブ型人事は職務(ジョブ)を中心としたアプローチを取る人事制度です。ジョブ型人事指針では職務ごとのスキルセットを明確にすることで、労働者が自らのキャリアを選択し、必要なスキルを習得する機会を提供することを目指しています。また、内部と外部の労働市場をシームレスに接続し、企業の競争力を強化するための目的もあります。ジョブ型人事は、社内の人材だけでなく、外部からの経験者採用も容易にし、企業の多様性と柔軟性を高めることが目指せる制度です。
ジョブ型人事の導入事例
内閣官房のジョブ型人事指針では、富士通株式会社や日立製作所、ソニーグループなどの企業が紹介されています。これらの企業は、ジョブ型人事の導入を通じて、事業ポートフォリオと連動した人材ポートフォリオの最適化を進め、職務記述書を活用して必要なスキルと経験を明確化しています。たとえば、日立製作所では、グローバルな人材マネジメント基盤を構築し、職務ごとの成果やKPIの「見える化」に取り組んでいます。これにより、社員は自分のキャリアパスを明確にし、必要なスキルをリスキリングする機会を得ることができます。
ソニーグループでは、グローバルで共通の人材マネジメント基盤を整備し、職務等級制度を導入しています。これにより、社員のキャリア自律が促進され、適材適所の人材配置が実現されています。また、オムロン株式会社では、社員のキャリア形成を支援するためのプログラムを導入し、職務記述書を活用して個々の職務の期待と成果を明確化しています。このような取り組みにより、社員のエンゲージメントが向上し、新しい挑戦をする社員が増加しています。
ジョブ型人事がもたらすメリット
ジョブ型人事の導入は、企業に多くのメリットをもたらすと同時に、企業文化にも変革を促します。まず、職務ごとに求められるスキルや成果が明確化されるため、企業は必要なスキルを持つ専門性の高い人材を採用・定着させやすくなります。また、社員は自分の役割と責任を理解し、自律的にキャリアを選択しスキルを磨くことが奨励され、結果的に社員のエンゲージメント向上や企業全体のパフォーマンス向上につながります。
さらに、ジョブ型人事の導入は、企業文化にも大きな影響を与えます。社員がキャリアの自律を意識することで、自己成長を重視する文化が醸成され、社員のモチベーションが向上します。透明性のある評価・報酬制度が整備されることで、さらに公平性が保たれ、社員の納得感が高まるでしょう。
ジョブ型人事導入における課題
ジョブ型人事の導入には、いくつかの課題も伴います。まず、基本となる職務記述書の作成と維持が非常に難しい点が挙げられます。職務内容が頻繁に変わる場合、職務記述書の更新が追いつかないことがあります。これを解決するためには、定期的な職務記述書の見直しとメンテナンスを行う仕組みを導入することが重要です。また、従業員が自分のスキルギャップを正確に認識し、それを埋めるための学習機会を提供することも必要です。職務記述書の更新とスキルアップの機会の提供、この2つが両輪で動いてこそジョブ型人事は効果を発するのです
まとめ
本記事では、内閣官房のジョブ型人事指針に基づき、企業の人材戦略におけるジョブ型人事の重要性について解説しました。ジョブ型人事は、企業の競争力を強化し、従業員のキャリア自律を促進するための有効な手段です。企業がこの指針を導入することで、適材適所の人材配置が可能となり、社内外の労働市場から必要な人材を確保することができます。これからの時代において、ジョブ型人事の導入は企業の成長と持続可能性を支える重要な要素となるでしょう。