SaaS業界では、プロダクトドリブン(PLG/Product-Led Growth)」と「セールスドリブン(SLG/Sales-Led Growth)」という言葉を耳にすることがあります。これは共に成長戦略なのですが、2つの違いを理解することで、あなたが目指す企業がどのように成長を目指しているのか、またどのようなスキルが求められるのかが明確になります。本記事では、PLGとSLGの違いと、具体的な事例を交えて解説します。
プロダクトドリブンとは?
プロダクトドリブン(PLG)は、「製品そのものが営業をしてくれる」戦略をイメージしてください。例えば、皆さんが使っているDropboxやSlackは、PLGの代表例です。これらのサービスは、無料で始められ、使ってみて便利だと感じたら有料プランにアップグレードすることができます。つまり、ユーザーが製品を試し、その価値を感じることで自然に利用や売上が広がっていきます。
Dropboxでは初めてアカウントを作成した際に無料で一定のストレージ容量を提供します。ユーザーが写真やドキュメントをクラウドに保存して使い始めると、その便利さに気づき、より多くのストレージが必要だと感じたときに有料プランを検討するようになります。このように、製品の使いやすさや実用性が、ユーザーの自然な成長を促すのがプロダクトドリブン(PLG)の特徴です。
セールスドリブンとは?
セールスドリブン(SLG)は、製品やサービスの販売を営業チームが担当する戦略です。営業担当者が顧客に製品の価値を説明し、提案することで契約を獲得します。たとえば、SalesforceはSLGの代表的な企業です。Salesforceは顧客関係管理(CRM)システムを提供していますが、機能も多彩で各企業はニーズに合わせてカスタマイズすることが求められます。そのため、ユーザーが簡単にサービスを開始できるものではなく、営業担当者が顧客と対話し、どの機能が最適かを提案することが重要となります。
Salesforceの営業担当者は、企業の担当者と会話を重ね、どのような課題があり、それを解決するためにどのようなCRM機能が必要かを分析します。そして、そのニーズに合ったソリューションを提案し、契約を獲得しています。このように、直接的な営業活動が製品の販売と成長に重要な役割を果たすのがセールスドリブン(SLG)の特徴です。
プロダクトドリブンPLGとセールスドリブン(SLG)の違い
プロダクトドリブン(PLG)とセールスドリブン(SLG)の大きな違いは、成長の原動力がどこにあるかです。上記のようにPLGはユーザーが製品を試用し、その価値を実感することで自然に利用者が増えていきます。つまり、製品自体が成長の原動力なのです。一方、SLGは営業担当者が顧客に直接価値を伝えて契約を結ぶことでシェアを獲得していきます。営業チームの働きが原動力なのです。
プロダクトドリブンが適した企業とは?
プロダクトドリブン(PLG)は、その価値や機能が理解されやすく、比較的労力なく利用開始できる製品を提供している企業に適しています。例えば、個人や小規模なチームが使いやすいツールを提供するSaaS企業は、PLGの戦略が効果的です。
セールスドリブンが適した企業とは?
セールスドリブン(SLG)は、製品やサービスが複雑で、顧客ごとに用途を定義し利用いただくことが必要な製品を持つ企業に向いています。例えば、ERPなどの大企業向けのソフトウェアや、高度な技術サポートが必要な製品を提供する企業では、営業チームが顧客と直接やり取りし、最適なソリューションを提案することで、顧客の満足度を高めることができます。
まとめ
プロダクトドリブン(PLG)かセールスドリブン(SLG)は企業の成長戦略です。ご自身がどのような戦略を持つ企業で働きたいか、どのようなサービス特性のあるプロダクトに関わりたいを考える上で非常に重要です。PLGの企業では、ユーザー体験を最適化し、製品の価値を高めることが求められます。一方、SLGの企業では、顧客とのコミュニケーション能力や提案力が重要になります。自分がどの成長戦略に魅力を感じるかを考え、キャリア選択の参考にしてみてください。