「なにあいつ」と言われない転職後の心構え:管理職入社で信頼を築く方法

parachute-personnel

転職でマネージャーなどの管理職として迎え入れられる「パラシュート型人事」は、企業にとって即戦力を求める合理的な手段ですが、当事者には高いハードルが課せられます。社内で育ったわけではない“外様”として見られがちな中で、どうすれば現場と信頼関係を築けるのか。本記事では、パラシュート型人事で転職した際の心構えと、現場での適切な立ち回りについて詳しく解説します。

パラシュート型人事とは?スタートアップやSaaSではなぜ少ないのか

パラシュート型人事とは、社内での昇格や育成によって管理職になるのではなく、外部から役職付きで採用される人事施策のことです。組織に外からの知見やスキルセットを導入できる点で、停滞した企業や変革期の企業にとっては大きな利点があります。しかし、スタートアップやSaaS業界においては、このような人事はやや特殊です。

その理由の一つは、現場と経営の距離が近い点です。SaaSやスタートアップでは、スピード感のある意思決定と、現場に根差したマネジメントが求められます。そのため、現場で信頼を積み重ねてきた社員を昇格させる方が、チームの士気や文化との親和性を保ちやすいのです。

さらに、人数が少ない組織ほど“誰が何をしてきたか”が透明で、外部からいきなり来るマネージャーは、どうしても浮いた存在になりやすいという背景もあります。こうした事情から、スタートアップでは「パラシュート型人事=異物」として扱われることも少なくありません。

外部から来たマネージャーが直面する“ハレーション”とは

「なぜ自分たちの中からではなく、外部の人間がマネージャーに?」——これは多くの現場メンバーが感じる本音です。こうした疑問や違和感が積み重なることで起きるのが、いわゆる“ハレーション(反発や軋轢)”です。

特に注意すべきなのは、すでに社内にマネージャーを目指して努力していたメンバーがいた場合です。そのような人材にとっては、自分のキャリアパスが否定されたように感じることもあり、不満やモチベーションの低下につながりかねません。

また、現場には「外から来た人がどれだけできるのか」という“お手並み拝見”のムードが漂います。これは単なる警戒心だけではなく、「自分たちの文化を壊さないか」という集団的な防衛反応でもあります。

このような空気の中で孤立しないためには、まずは自分が“信頼できる存在”だと示す必要があります。とはいえ、それは成果で証明するだけでは不十分です。むしろ、日常の会話、姿勢、ふるまいの積み重ねが重要になります。

最初の3か月がカギ:信頼構築に必要なアクションとは

転職後の最初の3か月は、信頼を得るための“ゴールデンタイム”です。この期間に行うべきは「成果」ではなく「関係構築」に焦点を当てたアクションです。

第一にすべきは、徹底した現場理解です。入社後すぐにマネジメントを発揮しようとするのではなく、まずは一人のメンバーとして現場の流れ、ツール、会話の文脈に馴染む姿勢が求められます。そのうえで、1on1やランチ、雑談を通して「信頼を得る対話の時間」を意図的に設けましょう。

また、小さな約束を守ることも非常に効果的です。
・「○○を調べておきます」と言ったら、必ず次回に報告する
・時間を守る、返事を返す、共感を示す

こうした細かい行動が「この人は信頼できる」という印象を生み出します。

マネジメントを始めるのは、チームの中で“この人なら大丈夫”と思ってもらえた後です。焦らず、まずは信頼を先に築く。この順番が、後々のマネジメントの成功を左右します。

マネージャー前提採用と昇格型の違いと難しさ

役職を持って採用される「パラシュート型」と、社内での昇格によって管理職になる「昇格型」では、同じマネージャーでも立場が大きく異なります。

前者の場合は、入社時点で周囲に与えるインパクトが大きく、「この人が来て何を変えてくれるのか」という強い期待と、同時に警戒感が向けられます。組織の外からの視点や新しいノウハウを持ち込めるメリットはあるものの、現場に馴染むまでに時間がかかり、発言や行動一つひとつに重みが伴います。

一方、昇格型は、長年一緒に働いてきたメンバーとの信頼関係を背景にマネジメントをスタートできるため、意思決定のスムーズさや、暗黙知の理解度が高い点が優位です。

パラシュート型としての転職は、スキル以上に“空気を読む力”や“場を和らげる力”が求められます。
・過去の実績を押し付けない
・まずは現場に敬意を示す
・相手の話を傾聴する姿勢を取る

こうした態度が、信頼を得る第一歩になります。

信頼されるためにやるべき「基本の振る舞い」

信頼されるマネージャーになるには、日々の細かなふるまいがすべてを決定づけます。特に気をつけたいのが、役職や給与といった“自分の立場”をひけらかさないことです。

・「前職ではこうだった」という話が多すぎる
・「自分の給料は○○万円」といった発言をする

これらは、周囲の反感を買いやすく、自らの立場を危うくする要因になります。逆に、「現場を尊重し、一緒に成果を出したい」という姿勢を明確に示すことで、周囲の警戒感は次第に和らいでいきます。

また、部下やメンバーの貢献を積極的に称賛し、成果を独り占めしないことも重要です。自分の成功を、チームの努力として語ることができるリーダーは、自然と信頼されていきます。

“人として信頼されること”が、マネージャーとしての成功に直結します。肩書きではなく、姿勢で周囲を動かすこと。それが、パラシュート型人事で転職したマネージャーにとって、最も重要な資質です。

まとめ

パラシュート型人事による転職は、スキルや実績だけでなく、現場との信頼関係をいかに築くかが成否を分けるポイントです。最初は警戒されることを前提に、謙虚な姿勢と対話による関係構築を重ね、役職に依存しないリーダーシップを体現することが求められます。信頼は一朝一夕では得られませんが、日々の積み重ねが、やがて確かな成果を生む土台となるのです。

合わせて読みたい
「3日・30日・3ヶ月・1年」入社後の立ち上がりで失敗しないためのポイント

青山 俊彦

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

関連記事