キャリアアンカーとは何か?30代前後で形成される自分の仕事観について

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キャリア形成において、「自分が本当に大切にしている価値観や欲求」を知ることは非常に重要です。この記事では、エドガー・H・シャイン教授が提唱した「キャリアアンカー」の概念を中心に、自分の仕事観がどのように形成され、どのようにキャリア選択に影響を与えるのかを解説します。また、リクルート社の「WILL CAN MUST」フレームワークとの違いについても触れ、それぞれの活用法を比較します。この記事を通じて、自分のキャリアを見つめ直し、より充実した職業人生を築くヒントを得ていただければ幸いです。

キャリアアンカーとは何か

キャリアアンカーとは、個人のキャリア選択を支える「核となる価値観や欲求」を指す概念です。この言葉は、エドガー・H・シャイン教授によって提唱されました。「アンカー」という言葉が示す通り、キャリアアンカーはその人の職業選択や働き方の「根っこ」や「軸」となるものです。

・キャリアアンカーの特徴は、主に30代前後で形成されることです。多くの人は、20代の初期から中期にかけて様々な仕事を経験しながら、自分が得意なことや大切にしたいことを少しずつ明確にしていきます。

・キャリアアンカーは以下の8つのタイプに分類されます。

  • 専門・職能的コンピタンス: 専門スキルや知識を磨くことを重視する
  • 全般管理コンピタンス: リーダーシップを発揮し、組織全体を動かすことを重視する
  • 自律・独立: 自由な働き方や裁量を求める
  • 安定・保障: 安定した収入や雇用を重視する
  • 起業家的創造性: 新しい事業を生み出すことにやりがいを感じる
  • 奉仕・社会貢献: 社会や他者に貢献することを重視する
  • 純粋な挑戦: 困難な目標や競争に挑むことを好む
  • 生活様式: 仕事と私生活のバランスを重視する

これらの価値観が明確になると、個人のキャリア選択や目標設定がより合理的で納得感のあるものになります。

キャリアアンカーの形成期20代〜30代の重要性

20代の働き方は、キャリアアンカーを発見するための「探索期間」と言えます。新しい職種や業務に取り組む中で、以下のような問いに直面することが多いでしょう。

・「この仕事で本当にやりがいを感じるのか?」
・「この働き方が自分に合っているのか?」
・「今の仕事が、将来の自分にとってプラスになるのか?」

30代に入ると、これらの問いの答えが徐々にクリアになり始め、自分のキャリアアンカーが確立される時期を迎えます。

・30代のキャリア選択は、キャリアアンカーに基づく判断が増えていきます。たとえば、専門性を重視する人は特定分野でのスキルアップを目指す一方で、安定志向の人は定職や収入の安定を重視する道を選ぶことが多いです。

この時期にキャリアアンカーを認識し、それに合った選択を行うことが、長期的なキャリアの満足度を高める鍵となります。

WILL CAN MUSTフレームワークとの違い

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キャリアアンカーは「自分の核となる価値観や欲求」に焦点を当てていますが、これを補完する短期的な目標設定のフレームワークとして、リクルート社が提唱する「WILL CAN MUST」があります。この二つの違いを以下の視点から比較してみましょう。

時間軸
・キャリアアンカーは長期的なキャリア選択に焦点を当てています。
・WILL CAN MUSTは短期的な行動計画や目標設定に適しています。

焦点
・キャリアアンカーは「How(どのように働きたいか)」に注目します。
・WILL CAN MUSTは「What(何をするか)」に焦点を置きます。

構成要素
・キャリアアンカーは能力、動機、価値観の三要素で形成されています。
・WILL CAN MUSTは「やりたいこと(WILL)」「できること(CAN)」「やるべきこと(MUST)」という三軸で自己分析と行動計画を行います。

どちらもキャリア形成に有用なツールであり、状況に応じて使い分けることで、自己理解と行動計画をより具体化することが可能です。

キャリアアンカーを見つける方法

キャリアアンカーを見つけるためには、自己分析が欠かせません。以下のようなステップを踏むことで、自分の価値観や欲求を明確にできます。

過去の経験を振り返る
どのような業務やプロジェクトにやりがいを感じたかを振り返ります。

自分の強みを整理する
過去の成功体験や得意分野をリストアップし、それがキャリアアンカーにどう結びつくかを考えます。

価値観や欲求を掘り下げる
仕事の中で「これだけは譲れない」と感じるポイントを明確にします。

これらのプロセスを経ることで、自分のキャリアアンカーが何であるかを把握でき、より満足度の高いキャリア選択が可能となります。

キャリアアンカーとWILL CAN MUSTの複合利用

キャリアアンカーとWILL CAN MUSTは、それぞれ異なる視点からキャリア形成をサポートしますが、両者を統合することでさらに効果的なキャリア設計が可能です。

・まず、キャリアアンカーを明確にし、長期的なキャリアの方向性を定めます。
・次に、WILL CAN MUSTを活用して、現在の状況に合わせた具体的な行動計画を立てます。


たとえば、安定志向がキャリアアンカーである場合、「MUST」を意識して安定した収入を確保しつつ、「WILL」に基づいて副業や新しい資格取得を目指すといったアプローチが考えられます。

まとめ

キャリアアンカーとは、個人のキャリア選択を支える「譲れない価値観や欲求」であり、30代前後で形成されると言われています。これを認識することで、キャリアの方向性が明確になり、より充実した職業人生を築くことができます。一方、WILL CAN MUSTは短期的な行動計画を立てるのに役立つツールです。両者を上手に組み合わせて活用することで、自分らしいキャリア設計が可能となるでしょう。

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青山 俊彦

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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