
「DEI(多様性、公平性、包摂性)」は、すべての人々が公平に尊重される環境をつくる重要な概念です。しかし、近年のアメリカではトランプ政権をはじめとした保守的な動きの影響で、この考え方が物議を醸しています。
本記事では、DEIの基本的な意味やメリットを解説するとともに、こうした国際的な動向を踏まえた国内外の取り組みを考察します。
DEIの基本的な意味とその重要性
DEIは、Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包摂性)を合わせた概念です。Diversityは性別、年齢、国籍、宗教、身体的特徴、価値観などの違いを尊重することを指します。Equityは、すべての人が公平な機会を得られるよう支援する仕組みを整えることです。Inclusionは、異なる背景を持つ人々がその場で価値を感じ、積極的に参加できる環境を作ることを意味します。
この3つが揃うことで、誰もが働きやすく、社会全体が持続可能な発展を遂げる基盤が作られるとされています。特に、企業では多様性のある人材がイノベーションを生み出す源泉とされており、DEIは単なるトレンドではなく、競争力を高める重要な要素となっています。
トランプ政権が与えた影響とDEIの物議
トランプ政権下では、DEIに対する批判が顕在化しました。2020年には、トランプ大統領が「人種的感受性トレーニング」を禁止する大統領令を発令し、企業や公的機関でのDEI関連プログラムに強い制約が課されました。この動きは、「逆差別」や「アメリカの価値観の否定」といった主張に基づくものでしたが、多くの専門家や市民団体から反発を招きました。
その後、バイデン政権が就任すると、大統領令は即座に撤回され、DEIプログラムは再び推進される方向へ転じました。しかし、この一連の動きは、DEIを支持する層と反対する層との間に深い溝があることを浮き彫りにしました。特に、政治的・文化的な要因が絡むアメリカのDEI議論は、他国の企業や組織にとっても影響を与えています。
再度復活したトランプ政権下でDEIはどうなるのか?DEIの推進は単に理念を共有するだけでなく、社会や企業文化の変化を伴う慎重な取り組みが求められています。
国内企業における具体的なDEIの取り組み事例

日本企業においても、DEI(多様性、公平性、包摂性)を推進する動きが広がっています。それぞれの企業は独自の施策を通じて、多様な人材が活躍できる環境の整備に取り組んでいます。以下では、ファーストリテイリング(ユニクロ)、キリンホールディングスの事例を紹介します。
ファーストリテイリング(ユニクロ)の取り組み
ファーストリテイリングでは、国籍や性別を問わず、多様な人材の活用を推進しています。加えて、以下のような具体的な取り組みを実施しています:
参照記事:ファーストリテイリング、企業の多様性推進の取り組みを評価する「D&Iアワード」で最高評価を獲得
- ・障がい者雇用
2022年時点でのファーストリテイリンググループの国内障がい者雇用率は4.92%と、法定雇用率(2.3%)を大きく上回っています。障がい者が働きやすい環境を整えるための設備やサポートも充実させています。 - ・LGBTQ+への支援
同性パートナーがいる従業員に対して「パートナーシップ登録制度」を導入し、慶弔休暇や慶弔見舞金などの福利厚生を提供しています。この制度により、すべての従業員が平等に福利厚生を利用できる仕組みを整えています。
キリンホールディングスの取り組み
キリンホールディングスでは、「KIRIN Diversity, Equity and Inclusion Plan」を策定し、DEIの推進を組織的に取り組んでいます。
参考記事:キリンホームページより
- ・LGBTQ+への理解促進
- LGBTQ+に関する従業員向け研修やイベントを実施し、すべての従業員が安心して働ける職場を実現しています。また、同性パートナーを配偶者として認める福利厚生制度を導入することで、多様な家庭環境に対応した制度を提供しています。
- ・新たなプランの策定
- 2023年に策定されたこのプランでは、「Diversity(多様性)」「Equity(公平性)」「Inclusion(包摂性)」の3つの柱を掲げ、多様な人材が最大限の能力を発揮できる職場環境の整備を目指しています。
今後の課題と未来の展望
DEIが広がる中での課題は多岐にわたります。一部では、無意識の偏見を解消するためのトレーニングが逆に対立を生むリスクが指摘されています。また、企業がDEIを推進する際に、短期的な成果を過度に期待することも問題とされています。特に、国際的な影響を受ける日本企業では、アメリカの議論を適切に理解し、文化的背景を踏まえた対応が求められます。
一方で、DEIは企業の競争力を高める重要な施策であることに変わりはありません。多様な人材が集う環境は、創造性やイノベーションを促進し、長期的な成長を支える基盤となります。そのため、単なるスローガンにとどまらず、具体的で実行可能な戦略を策定し、定期的にその進捗を評価する仕組みが必要です。
まとめ
本記事では、DEIの基本概念とその重要性、トランプ政権下での議論を踏まえた課題、そして国内外における未来の展望について解説しました。DEIは、ただのトレンドではなく、すべての人が活躍できる社会を実現するための普遍的な価値観です。今後も持続可能な成長を目指すためには、企業や個人が長期的な視野で取り組むことが求められます。
合わせて読みたい
ティール組織が生み出す新しい働き方の可能性