エンタープライズ攻略に必要な「パワーチャート」について解説

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大手企業を対象とした営業活動では、複雑な組織構造や意思決定プロセスをどれだけ深く理解し、効果的な戦略を立てられるかが成功の鍵です。

「パワーチャート」は、顧客企業内の関係性や意思決定者を可視化し、営業活動を戦略的に進めるための手法です。本記事では、パワーチャートの基本概念、利点、作成方法、活用例、課題とその解決策について具体的に解説します。

パワーチャートとは?営業戦略における基本概念

パワーチャートとは、大手企業への営業戦略を立案する際に、顧客企業内の組織構造や人間関係、意思決定プロセスを視覚的に整理するための手法です。この手法により、単なる公式な組織図では把握できない実質的な影響力や関係性を明確にし、営業活動を効果的に進める指針を得ることができます。

◎主な特徴
  • 意思決定者の特定:最終的な決裁権を持つEconomic Buyer(EB)や、推進役であるChampionを特定します。
  • ・関係性の可視化:個人間や部署間の関係性や、それぞれの自社製品に対する態度(好意的、中立、否定的)を整理します。
  • ・行動の指針:営業チームが次に取るべきアクションや優先順位を明確化します。

パワーチャートは特定のツールではなく、営業チーム全体が情報を共有・活用するためのフレームワークと考えるべきです。

パワーチャートが営業活動で重要な理由

エンタープライズ営業では、多数の関係者が意思決定に関与するため、戦略的なアプローチが必要です。パワーチャートを活用することで、以下の利点が得られます。

戦略的アプローチの実現

ターゲットとすべき人物や部署を明確にすることで、営業活動の精度を大幅に向上させます。「誰に何をどう伝えるべきか」が明確になります。

リスク管理の強化

否定的な態度を持つ人物や反対勢力を事前に把握し、適切に対応することで、商談のリスクを軽減できます。

営業チーム間の連携強化

パワーチャートを共有することで、インサイドセールス、フィールドセールス、マーケティングチームなどとの連携がスムーズになります。

プロセスの透明化

商談の進捗や未対応の部分を可視化することで、課題を明確化し、迅速な対応が可能になります。

効果的なパワーチャート作成のポイント

パワーチャートを最大限活用するには、作成段階で以下の点を意識することが重要です。

単なる組織図以上の情報を反映

公式な組織図だけでなく、非公式な影響力や人間関係も取り入れることが鍵です。現場担当者からのヒアリングや、過去の商談記録を基に、より現実に即した情報を収集します。

最新情報の維持

顧客企業の人事異動や意思決定プロセスの変化に対応するため、情報を定期的に更新する習慣をつけます。

営業チーム全体での共有と活用

パワーチャートは作成するだけでなく、営業チーム全体が理解し、実際の活動に反映することが重要です。定期的な会議で活用方法を議論するのも効果的です。

活用例:営業戦略の具体的なシナリオ

◎大規模取引案件の攻略

新規大手顧客への提案活動では、パワーチャート活用が有効です。例えば、ある製造業の顧客に対して、製品導入を提案する際は、以下のような流れでアクションを起こし、経営陣には導入後のコスト削減効果を強調し、現場のChampionには操作性の高さを伝えることで、案件を獲得することが想定できます。

  • 意思決定者と推進役の特定:EB(Economic Buyer)にROI(投資対効果)を伝え、Championには提案の意義を広めてもらう役割を依頼します。
  • ・関係性の整理:支持者と反対者を特定し、それぞれに合わせたアプローチを計画します。
  • 情報の共有と次の行動:営業チームで進捗を確認し、次のアクションを策定します。

◎関係性の改善

商談中に否定的な態度を持つ人物がいた場合にもパワーチャートは有効活用できます。

  • 原因の分析:コスト懸念や競合製品の支持など、否定的な理由を明確化します。
  • ・間接的なアプローチ:別のチームメンバーが新しい接点を作るか、好意的なChampionを介して説得します。
  • ・解決策の提示:否定的な意見に対応する具体的な施策を準備します。

◎商談の進捗管理

商談が停滞した場合にもパワーチャートは有効活用できます。

  • 状況共有と調整:営業チーム全体で情報を共有し、迅速なフォローアップを実施します。
  • ・未接触の関係者の特定:パワーチャートを確認し、影響力のある人物や未アプローチの部署を見つけます。
  • 次のアクションの計画:必要な資料を準備し、新たなコンタクトポイントを設けます。

活用時に直面しやすい課題とその解決策

情報不足

十分な情報が得られない場合、現場担当者へのヒアリングや、過去の接触履歴を活用して情報を補完します。

更新の遅れ

情報が古くなることを防ぐため、定期的なレビューやアップデートをチームのルーチンに取り入れます。

活用不足

営業チームがパワーチャートを活用しない場合、活用方法を共有する研修やワークショップを実施し、その重要性を全員で理解する機会を設けます。

まとめ

本記事では、エンタープライズ営業で重要な「パワーチャート」の活用法について具体例を交えて解説しました。この手法を活用することで、顧客企業内の意思決定プロセスや関係性を整理し、戦略的かつ効率的な営業活動が可能になります。成功の鍵は、情報の精度を保つことと、営業チーム全体での共有・活用です。

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青山 俊彦

青山 俊彦カノープス株式会社 代表取締役

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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