下がりつつある従業員エンゲージメントを高める方法とは?

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近年、米国で従業員エンゲージメントが過去10年で最低水準まで低下したという調査が発表されました。特に35歳未満の若年層やテクノロジー業界での影響が顕著であり、日本のSaaS業界も無視できない課題を抱えています。本記事では、Gallup社の最新調査をもとに、従業員エンゲージメントの現状とそのリスク、そして具体的な改善策を解説します。

従業員エンゲージメントとは何か、なぜ重要なのか

従業員エンゲージメントとは、従業員が職場や仕事に対して持つ「熱意」「関与」「責任感」などの心理的状態を表すもので、ただのモチベーションとは異なります。それは、仕事への没頭、会社との信頼関係、チームへの貢献意識などが複合したものです。

エンゲージメントが高い組織では、生産性が向上し、離職率が下がり、顧客満足度も高まります。Gallupの調査によれば、2024年の米国でエンゲージメントを感じている従業員はおよそ31%にとどまり、過去10年で最低の水準です。

SaaS業界のように変化が速く、柔軟性や主体性が求められる環境では、従業員エンゲージメントは企業の持続的成長を支える重要な基盤です。

米国でエンゲージメントが低下した背景と主な要因

2024年、米国の従業員エンゲージメントは10年ぶりの低い水準(約31%)となりました。若年層、特に35歳未満の労働者での低下が目立ちます。

背景・要因としては以下が挙げられます。

・職務や期待が明確でないこと
・職場で「誰かが自分を気にかけてくれている」と感じられないこと
・成長機会が十分提供されていないこと
・ハイブリッド/リモートワークによる孤立感の拡大
・マネージャーの支援や指導が不足していること

これらの要因は、特に変化の激しい業界でエンゲージメント低下を引き起こしやすい特徴です。

日本のSaaS業界におけるリスクと共通点

米国と同じく、日本のSaaS企業でも以下のような課題が見られる可能性が高いです。

・社のミッションやビジョンが日常業務と結びついていないこと
・若手社員への成長支援が形だけで、実感を伴わないこと
・リモートワーク下でのコミュニケーション設計が不十分なこと
・評価制度が成果のみを重視し、プロセスや努力が軽視されがちなこと
・マネージャーが自身の業務に追われ、育成やマネジメントに時間を割けないこと

若手社員が「やりがいを感じない」「期待されていることがわからない」「自分の強みを発揮できていない」と感じると、離職のリスクが高まります。

SaaS企業が取り組むべき従業員エンゲージメント施策

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日本のSaaS企業がエンゲージメントを高めるために有効と思われる施策を挙げます。

・役割の明確化と期待の共有
オンボーディングだけでなく、定期的な1on1やフィードバックを通じて「自分に何が期待されているか」を言語化し伝えること。

・マネージャーの育成と評価制度の見直し
部下のモチベーション管理や成長支援ができるマネージャーを適切に育成し、評価する制度を設けること。

・キャリアと成長の可視化
「この会社で何を学べて、どのようなキャリアパスが描けるか」を明示することで、若手社員の不安を軽減し、長期定着を促すことが可能。

・人間関係とケアの文化形成
チームビルディングや雑談の機会を設ける、心理的安全性を担保する場を構築するなど、人と人とのつながりを重視する文化を育てること。

・パーパスの浸透と共感の形成
自社の存在意義(パーパス)を明文化し、そのパーパスが日々の業務とどう結びつくかをマネージャーが語る機会を増やすこと。

SaaS業界を目指す転職希望者が確認すべきポイント

これからSaaS業界へ転職を考えている人が、エンゲージメントの観点で企業を見極めるためにチェックしておきたいポイントを以下に挙げます。

・配属先のマネージャーが期待を明確に伝えてくれるかどうか
・入社後のオンボーディングや育成体制がどのように整っているか
・キャリア開発やスキルアップの機会がどの程度あるか
・働き方の柔軟性(リモート/オフィスなど)とチームとのつながり方
・企業が従業員の声を拾い、改善に反映する仕組みがあるかどうか

スタートアップや中堅のSaaS企業では制度が未整備なことも多いため、採用面接や社員との対話を通じてリアルな情報を得ることがミスマッチを防ぐ鍵となります。

まとめ

米国の最新調査では、従業員エンゲージメントが10年ぶりの低水準、約31%にまで下がっており、特に若年層やテクノロジー業界での影響が大きいことが示されています。日本のSaaS業界にも同様のリスクが存在し、成長の可能性を握る若手の定着や生産性に関わる深刻な問題です。組織として、マネージャー育成、評価制度、成長機会の可視化、人間関係の強化などの取り組みを通じて、エンゲージメントを戦略的に高めることが求められます。

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青山 俊彦

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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