SaaSにおけるEmbedded戦略とは?顧客体験を高める販売手法

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SaaS業界の販売手法として「Embedded戦略(エンベデッド戦略)」があります。これは、既存のSaaSプロダクトに他の機能やサービスを自然に組み込むことで、顧客体験を飛躍的に向上させる手法です。特にAPI連携やノーコードツールの進化により実装のハードルが下がり、今やあらゆるSaaS企業が検討すべき戦略となっています。本記事では、SaaS業界におけるEmbedded戦略の概要、メリット、成功事例、導入時の注意点までを網羅的に解説します。

Embedded戦略とは何か?SaaSとの相性を解説

Embedded戦略とは、他のサービスや機能を自社のプロダクトに埋め込むことで、顧客に対して一貫性のある体験を提供するアプローチです。

たとえば、CRMツールに決済機能を組み込んだり、業務アプリにチャットやビデオ通話機能を統合するなどが挙げられます。SaaSはクラウド上で提供される柔軟なソフトウェアであるため、他サービスとの連携がしやすく、APIやWebhookを活用すれば機能追加も容易です。

これにより、ユーザーは複数のアプリを行き来せず、一つの画面内で業務を完結できるようになります。このような滑らかな体験が、顧客満足度やLTV(顧客生涯価値)の向上につながるのです。

SaaSにおけるEmbedded戦略の代表例とユースケース

SaaSにおけるEmbedded戦略の活用例は多岐にわたります。

・請求書作成ツールに決済機能(例:StripeやPayPal)を埋め込み、送付と同時に支払いを可能にする
・会計SaaSに銀行口座連携機能を内包し、取引データを自動で取り込むことで業務を効率化
・営業支援ツールにe署名サービスを組み込み、契約書の送信から締結までを一気通貫で完了

これらの事例はすべて、顧客の行動を中断させず、自然な流れの中で機能を提供するという設計思想に基づいています。SaaSとの親和性が非常に高い戦略といえるでしょう。

Embedded戦略がSaaSビジネスにもたらす4つのメリット

Embedded戦略を導入することで、以下のようなメリットが得られます。

・顧客体験の向上:業務の中断なく必要な操作が完了することで、ユーザー満足度が高まる
・収益源の多様化:組み込んだ機能の利用料や決済手数料などから新たな収益を獲得
・解約率の低下:統合されたサービスの利便性により、他社サービスへの乗り換えが減少
・データ活用の高度化:複数機能の利用履歴からユーザー理解が進み、パーソナライズやリテンション施策に活用可能

これらの効果により、SaaS企業にとってEmbedded戦略は持続的な成長を促進する手段となります。

実装時に気をつけたいリスクと課題

一方で、Embedded戦略の実装にはいくつかのリスクも存在します。

・セキュリティの確保:外部サービスとの連携では認証情報や顧客データの共有が発生し、通信や保管時の安全性確保が必須
・規制対応の必要性:特に金融系機能を統合する際には、金融庁などの規制への対応が求められる
・外部パートナーとの調整:SLAの調整や障害時の対応体制構築など、連携相手との関係構築が重要
・UXの低下リスク:顧客にとって不要な機能を無理に統合すると、逆に利便性が損なわれる可能性がある

導入前には、機能の有用性と顧客ニーズを丁寧に見極めることが不可欠です。

成功に導くための3つのポイント

Embedded戦略を成功させるためには、以下の3点が重要です。

・顧客理解の深化:業務フローにどのような課題があるのかを把握し、自然に溶け込む機能を設計
・信頼できるパートナー選定:機能提供元がSaaSとしての品質とセキュリティを担保できるかを見極める
・スケーラビリティの確保:初期導入の範囲だけでなく、将来的なユーザー数や利用範囲の拡大も見据えた設計

これらのポイントを押さえることで、Embedded戦略は単なる機能統合を超えた競争優位性となり得ます。

まとめ

本記事では、SaaS業界におけるEmbedded戦略の基本から、実際のユースケース、メリット、リスク、導入のポイントまでを解説しました。この戦略は単なる機能追加ではなく、「顧客体験の質をいかに高めるか」という視点で設計されるべきものです。今後のSaaSビジネスにおいて、差別化と成長の鍵を握る戦略と言えるでしょう。

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青山 俊彦

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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