
「ちゃんと話せたと思ったのに、面接で落ちてしまう…」そんな経験はありませんか?
その原因のひとつに、「聴き心地が良い話し方」と「話が上手いこと」を混同しているケースがあります。声のトーンやリズムで好印象を与えていても、内容が薄ければ面接では評価されません。この記事では、“聴き心地の良さ”に頼りすぎたコミュニケーションが、なぜ選考で不利になるのかを明らかにし、「本当に伝わる話し方」との違いを解説します。
聴き心地の良さは武器になるが、時に弱点にもなる
「聴き心地が良い」話し方とは、声のトーンが柔らかく、リズムが心地よく、表情も穏やかで、聞き手にストレスを感じさせない会話スタイルを指します。このタイプは、日常の会話では非常に好印象を持たれやすく、相手に「話しやすい人だな」と思われることも多いでしょう。
しかし、これが裏目に出る場面もあります。特に「内容より印象」が優先されるようになってしまうと、自分自身が「自分は話が上手い」と錯覚しやすくなるのです。実際には、聞き手は声の心地よさや雰囲気で“話を聞けてしまっている”だけであって、内容をしっかり理解しているとは限りません。
この「聞けてしまう」という現象が、話の中身の希薄さを覆い隠してしまいます。そのため、面接官のように評価目的で聞く相手に対しては「結局、何が言いたかったのか?」という印象を残してしまうのです。
話し方の「快適さ」が誤解を生むメカニズム
「聴き心地が良い」とは、あくまでも“聞くことにストレスがない”という状態です。言い換えれば、「理解しやすい」とは別物です。この違いに気づかないまま、「自分は話が得意」と思い込んでいる人は少なくありません。
本来の「話が上手い」という状態とは、話の構成が明確で、伝えたいメッセージが整理されており、聞き手の頭の中に明確なイメージが浮かぶような話し方です。言葉の選び方、具体例の出し方、起承転結の明瞭さなどが問われるため、単に聞き心地が良いだけでは到達できない領域です。
面接官は、話のトーンや表情の優しさではなく、「この人は何を経験し、何を学び、どんな価値を提供できるのか」を重視します。そこに具体性と論理性がなければ、「なんとなく良い人そうだけど、結局よくわからない」という評価にとどまってしまうのです。
ハイコンテクスト文化の罠:話さなくても通じてしまう

日本は「ハイコンテクスト文化」と呼ばれる文脈依存型の文化です。これは、言葉にせずとも相手が意図を読み取ってくれることが前提となっており、「空気を読む」「察する」コミュニケーションが多く見られます。
この文化では、「聴き心地の良い話し方」をしていると、相手が勝手に文脈を補完してくれるため、コミュニケーションが成立しているように感じられます。実際、ビジネスの現場でも、暗黙の了解や含みを含んだ話し方が受け入れられる場面は少なくありません。
しかし、面接はその真逆の場です。自分の経歴、スキル、志望動機を明確に言語化し、論理的に説明することが求められます。つまり、ロ―コンテクストな状況下では、「説明されなければ伝わらない」のが前提です。このズレが、普段の会話では通じていたことが、面接では通じない大きな要因となっています。
面接では“聞き手任せ”の話し方が通用しない理由
面接の場では、聞き手の理解力や文脈補完に頼った話し方は大きなリスクになります。面接官は「聞こう」と努力してはくれますが、全てを補完するわけではありません。特に、応募者の数が多く限られた時間で判断をしなければならない面接の現場では、論理的で簡潔、かつ要点が明確な話し方が必要とされます。
また、「この人をチームに迎えることで、どんな価値をもたらしてくれるか」という視点で見られているため、抽象的な話や含みの多い話では、判断材料が不足してしまいます。結果的に、「悪い印象ではなかったけど、決め手に欠けた」という評価に終わってしまい、不採用になるケースが多いのです。
面接で評価されるのは、「自分の考えを言語化し、相手に正確に伝える力」です。この力を養うには、普段の会話から“聞かせる”のではなく、“伝える”意識を持つことが重要になります。
「伝わる話し方」を身につけるための3つの視点
面接で成果を出すためには、「聴き心地の良さ」から一歩進んで、「伝わる話し方」を身につける必要があります。以下の3つの視点を意識してみましょう。
・目的を明確にする
話す前に、「何を伝えたいのか」「なぜそれが重要なのか」をはっきりさせておきましょう。話のゴールが明確であれば、聞き手にも伝わりやすくなります。
・構成を意識する
話す内容を「結論→理由→具体例→再度結論」といった構成にすると、論理的でわかりやすい印象を与えることができます。
・抽象と具体を行き来する
抽象的な表現だけでなく、具体的なエピソードや成果を交えることで、聞き手に納得感を与えることができます。「どんな場面で、どのように考え、何を行動したのか」というフレームで話すと効果的です。
これらを意識することで、「聞き心地はいいけど結局何が言いたいのか分からない」という評価から脱却し、「この人は的確に自分の考えを伝えられる人だ」と思ってもらえるようになります。
まとめ
「聴き心地が良い話し方」は、日常では好まれる一方で、面接の場では伝わる力が弱いと判断されがちです。日本のハイコンテクスト文化に慣れていると、内容よりも印象で成立する会話に依存してしまいがちですが、面接では具体性・論理性・明瞭性が求められます。本記事で紹介した視点を参考に、自分の話し方を見直し、「伝える力」を高めていきましょう。
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