
ERP導入において大事にされているのが「Fit to Standard」というアプローチです。従来のように自社の業務に合わせてシステムを大幅にカスタマイズするのではなく、標準機能に業務を適合させることで、導入スピードやコスト、保守性、将来性のすべてを最適化することを目的としています。本記事では、このFit to Standardの基本的な考え方やメリット、導入時の注意点について詳しく解説します。
「Fit to Standard」とは何か?
「Fit to Standard」とは、ERP導入に際して、企業の業務プロセスをパッケージソフトウェアの標準機能に適合させるアプローチです。従来の「Customize to Fit(業務に合わせてシステムを作る)」とは逆の発想で、SAPやOracleなどの主要ERPベンダーもこのアプローチを推奨しています。
標準機能は、業界やグローバルでのベストプラクティスが集約された形で設計されており、業務プロセスの無駄や属人性を排除するきっかけにもなります。
なぜ今「Fit to Standard」が注目されるのか
従来型のERP導入は、業務に合わせた多量のカスタマイズにより、導入期間の長期化や保守コストの増大を招いてきました。さらに、オンプレミスからクラウドへの移行が進む中で、過度なカスタマイズはクラウド化の大きな障壁になります。
これに対して「Fit to Standard」では、標準機能を最大限に活用することで、短期間での導入が可能になり、将来的なアップデート対応も容易になります。経営環境の変化に柔軟に対応するために、業務プロセスの見直しは不可欠なのです。
「Fit to Standard」の導入メリット

このアプローチの最大の利点は、導入コストと期間の削減です。標準機能を中心に構築することで、開発工数が抑えられ、導入から運用までのスピードが大幅に向上します。また、将来的なバージョンアップやクラウドへの移行時にも、大きな障害なく対応できます。
さらに、属人的な業務フローを排除し、業務標準化を進めることで、組織全体の生産性向上にもつながります。システムと業務の一貫性が高まり、ガバナンスの強化にも寄与します。
導入時に直面する課題と解決策
一方で「Fit to Standard」の実現には、業務を変える側の覚悟が求められます。現場の抵抗や、長年続けてきた慣習を手放すことへの不安は少なくありません。そのため、導入に際しては、経営層の強いコミットメントと、現場への丁寧な説明が不可欠です。
加えて、Fit to Standardの意義を全社で共有し、業務変革に前向きな文化を醸成することが成功の鍵となります。必要に応じて外部コンサルタントを活用し、プロセス設計やチェンジマネジメントを支援してもらうのも有効です。
SaaS時代における業務改革の必要性
SaaS型ERPが主流となる中で、従来の「スクラッチで業務に合わせる」発想では対応が困難です。SaaSではベンダーが提供する機能に沿って業務を再構築する必要があり、Fit to Standardの思想はまさにその前提となります。
さらに、クラウドサービスでは定期的なアップデートが行われるため、業務側の柔軟性も求められます。業務改革を恐れず、標準機能の活用を前提としたシステム設計こそが、SaaS時代における成功のカギとなるのです。
まとめ
「Fit to Standard」は、ERP導入において業務を標準機能に合わせて見直すことで、導入スピード、保守性、将来の拡張性を最適化するアプローチです。特にクラウドERPやSaaS型サービスが普及する中で、従来型のカスタマイズ手法から脱却し、業務改革とITの連携を実現するために不可欠な考え方といえるでしょう。
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