
SaaSビジネスにおいて、新規の顧客開拓は収益をもたらす一方で、解約(チャーン)による損失も意識していかなくてはなりません。特に、高額契約の顧客が離脱すると、ARR(年間経常収益)への影響は避けられません。
多くの企業はチャーン防止のためにカスタマーサクセス(CS)部門を強化し、契約後のフォローを徹底しています。しかし、実際にはチャーンの原因は契約後ではなく、契約前の段階ですでに生まれていることが少なくありません。
本記事では、セールスにおいて契約前からチャーンを防ぐための重要なポイントを解説します。
導入前の期待値調整(売りすぎない)
営業では、契約獲得に意識が向きすぎると、営業担当者が過度な期待をさせてしまうケースも発生します。これが後に、顧客の不満を招く原因となります。
期待値のギャップがチャーンの原因に
例えば、以下のようなセールストークを用いると、導入後のギャップにつながりやすくなります。
- ・「これさえ導入すれば、業務が劇的に効率化されます!」
- ・「すぐにROIが出ます!」
過剰な期待を持たせると、導入後に「思ったほど効果が出ない」と感じさせ、解約リスクが高まります。SaaSプロダクトは単なるツールではなく、業務プロセスに深く関わるものです。導入後のリアルな活用プロセスや導入にあたってクリアにすべき課題などを契約前にしっかり説明することが重要です。
期待値調整のポイント
- ・現実的なROIと活用シナリオを共有する
- ・成功事例を紹介する際も、導入後の課題やハードルを明確に伝える
- ・「とりあえず導入」ではなく、ステークホルダー全員が納得したうえで意思決定を促す
SaaSセールスは特に「契約を取ること」だけでなく、「長期的な顧客成功を実現すること」をゴールにすることが大事です。
オンボーディングの徹底(導入初期でつまずかせない)

エンタープライズSaaSの導入後、現場のユーザーが定着しなければ、最終的には解約につながります。特に導入初期にスムーズに活用できるかどうかが、長期継続の鍵となります。
オンボーディングが重要な理由
- ・導入初期につまずくと、その後も活用が進みにくい
- ・決裁者と実際の利用者が異なるため、現場の納得感が重要
- ・最初の3ヶ月で「使える実感」を持たせることが不可欠
オンボーディング成功のための施策
- ・カスタマーサクセス(CS)と連携し、導入初期のKPIを設定する
- 例:「導入3ヶ月以内に利用部門の75%以上がログインする」
- ・初期トレーニングを提供し、現場ユーザーのハードルを下げる
- ・定期的なフォローアップを実施し、初期の課題を解消する
導入直後のつまずきを防ぐことで、長期的な定着率が大幅に向上します。
活用データを定期的に提供(使われている実感を持たせる)
SaaS導入を決定する決裁者は、日常的にツールを利用するわけではなかったりします。そのため、現場での活用状況を把握できていないケースが多いのです。
活用データの提供がもたらす効果
- ・定期的な活用レポートを送ることで、継続利用の意思決定を促す
- ・データを基に追加活用の提案やアップセルの機会を生み出す
- ・エグゼクティブ層にも利用状況を可視化し、価値を実感させる
「導入して終わり」ではなく、「活用している実感」を持たせることが重要 です。
契約更新の半年前からリスクサインをチェック
チャーンの兆候は、契約更新の直前ではなく、もっと前から発生しています。
リスクサインのチェックポイント
- ・ログイン頻度の減少
- ・活用部署の縮小
- ・顧客からの問い合わせの減少
これらのサインを早期に察知し、営業とCSが連携して「活用の成功事例」を顧客内で共有することが重要です。
プロアクティブなエグゼクティブレベルの関与
競合が入り込む前に、経営層としっかりリレーションを築いておくことも重要です。
経営層との関係構築のポイント
- 定期的に「今後の活用戦略」をディスカッションする
- チャーンリスクが高まる前に、経営層とコミュニケーションをとる
- 「SaaSがビジネスにどのように貢献しているか」を経営層に伝える
エグゼクティブ層がSaaSの価値を理解していると、継続の意思決定もスムーズになります。
まとめ
SaaSのセールスは、単に契約を取ることが目的ではありません。むしろ、契約後にいかに長期的に使い続けてもらうかが本質です。
- ・契約前の期待値調整がチャーン防止の第一歩
- ・オンボーディングで導入初期のつまずきを防ぐ
- ・活用データを可視化し、継続利用を促す
- ・契約更新の半年前からリスクサインをチェック
- ・経営層との関係を築き、競合の入り込む余地をなくす
「売って終わり」ではなく、「売った後が本番」。この視点を持つことで、セールスの成功率を大きく高められます。