フルリモートの求人って減った?SaaS業界のリモートワークと出社事情

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コロナ禍を契機に一気に広がったリモートワークですが、現在ではそのトレンドが変わりつつあります。オンラインでの商談やデジタルツールの活用が進むSaaS業界でも、出社頻度が多くなり、リモートワーク日数が減少している傾向が見られます。リモートワークとの相性が良さそうな業界でなぜ出社が求められるのか、その背景にある企業の意図や業界特有の事情について詳しく分析します。

コロナ禍で広がったリモートワークとその変化

コロナ禍によって、リモートワークは一時的に急速に普及しました。多くの企業が、従業員の健康と安全を守るためにオフィスを閉鎖し、在宅勤務を導入しました。この状況は、SaaS業界でも同様で、多くの企業がフルリモートやハイブリッドワークを採用し、生産性や効率性を高めることができたと評価し、2021年にはリモートワークを実施している企業が全体の約50%に達したとの統計もありました。しかし、パンデミックの収束が見えた今、リモートワークの割合は徐々に減少し、多くの企業が出社を推奨する方針に転じています。令和6年3月に国土交通省が発表した「令和5年度テレワーク人口実態調査」はコロナ禍以降、直近1年間のテレワーク実施率は全国平均で減少していることを示しています。また、同調査では首都圏における雇用型テレワーカーの割合は令和2年度以降3割超の水準を維持しているものの、令和5年度には1.9ポイント減少するなど、出社回帰傾向が進んでいることも示しています。

SaaS業界とリモートワークの相性

SaaS業界は、その性質上、リモートワークとの相性が非常に良いと考えられています。まず、各社が取り扱うSaaS製品自体がクラウド上で動作するため、インターネット接続とオンラインコミュニケーションツールさえあれば、全国どこからでもデモンストレーションやサポートが遂行できます。営業活動やサポート活動のオンライン化だけでなく、チーム内でのコミュニケーションも、SlackやZoomといったデジタルツールが充実しており、円滑に情報共有が行えます。また、業界にはオンラインコミュニケーションなどのクラウドツールを利用できるIT感度の高い方が多く、それもリモートワークとの相性の良さを高めているとも言えます。

リモートワーク減少の背景1:組織拡大と業務体制の整備

しかし、リモートワークはメリットだけではなく、デメリットも浮き彫りになってきています。特に、成長フェーズにあるSaaS企業の場合、組織の拡大に伴う課題が大きな要因となっているようです。新しい人材の採用が次々と進む中で、社員を効果的に育成し、組織に溶け込ませる必要があります。リモート環境では、社内文化の浸透や業務ナレッジの共有が難しい場面も多く出てきています。そのため、対面でのコミュニケーション、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)や社内イベントなどを活用し、チームとしての一体感を強化する必要がでてきたのです。

リモートワーク減少の背景2:高まる経営課題と組織の一体感

出社を推奨する理由として、企業の経営陣が直面する課題も挙げられます。SaaS業界では、企業が成長するにつれて大手顧客の開拓や、より高度なビジネス戦略の立案が求められます。こうした重要な決定は、対面でのディスカッションを通じて迅速に行われることが多く、リモートワークには限界があります。また、企業のロイヤリティ向上や社員のエンゲージメントを高めるためには、定期的に顔を合わせることで企業文化を共有し、一体感を醸成することが重要です(リモートワークが長引くことで、社員の孤立感やコミュニケーション不足リスクも高まった事実もあるようです)。さらに、出社することで創造性やイノベーションが促進されるという視点もあります。実際に、オフィスでの偶発的な会話やブレインストーミングが新しいアイデアを生むことは少なくありません。このような背景からパンデミック後に出社回帰を経営判断する企業が増えたのです。

SaaS業界の働き方:今後の方向性

SaaS業界では今後の働き方をどうしていくべきか議論をしている企業が多いようです。採用活動上魅力的な要素となるリモートワークの柔軟性や効率性というメリットを活かしつつ、出社を通じて組織の一体感や社員のエンゲージメントを高めるバランス感が求められます。結果、ハイブリッドワークという形で、週に数日の出社と在宅勤務を組み合わせる方法が、多くの企業で採用されています。例えば、あるSaaS企業では、週に3日を出社日とし、残りの2日をリモートワークに充てる形を取っています。また別の企業では週1回の全員出社日に加えて、残りはチームや個人同士の自発性に任せた出社奨励、加えて3ヶ月に1回の全社イベントを行うなどの工夫をしているようです。ユニークなものだと出社を活発化するために出社手当を出す企業も。このように、個々の社員の働きやすさを尊重しつつ、企業としての目標達成に向けた最適な体制や制度を整えることが、今後のSaaS企業の成長にとって重要な鍵になりそうです。

まとめ

コロナ禍で一気に広がったリモートワークは、SaaS業界でも一時的に主流となりました。しかし、組織の拡大や社員育成の課題、経営戦略の高度化に伴い、出社の必要性が再認識され、フルリモート勤務については導入企業がかなり減少しました。各社が決めるリモートワークと出社のバランスと自身のワークスタイルを重ねながら、最適な企業探しをしていきましょう。

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青山 俊彦

青山 俊彦カノープス株式会社 代表取締役

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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