NPSとは?顧客満足度を測る指標とSaaS企業での活用法

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NPSは顧客ロイヤルティを測定する重要な指標として、多くのSaaS企業で注目されています。本記事では、NPSの基本概念から、SaaS企業での具体的な活用方法まで詳しく解説します。顧客満足度との違いや、NPSを導入することで得られるメリット、さらには実際の運用におけるポイントについても触れていきます。

NPSの基本概念と顧客満足度との違い

NPSとは「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略称で、顧客ロイヤルティを数値化するための指標です。この指標は2003年にアメリカで開発され、今では多くの企業が採用しています。NPSの測定は非常にシンプルで、「この製品やサービスを友人や同僚にどの程度勧めたいですか?」という質問を、0から10のスケールで顧客に回答してもらいます。このスコアを基に顧客は次のように分類されます:

  • 推奨者(9-10点):積極的に他人に推奨する可能性が高い顧客
  • 中立者(7-8点):不満はないが、積極的に推奨するわけではない顧客
  • 批判者(0-6点):不満を持ち、悪い評判を広める可能性がある顧客

NPSは、推奨者の割合から批判者の割合を引くことで算出されます。一方、顧客満足度(CS)は製品やサービスに対する満足度を直接測るもので、NPSが未来の顧客の行動を予測するのに対し、CSは現在の満足度を評価する点で異なります。NPSは顧客の感情的なつながりや長期的なロイヤルティをより正確に反映するとされ、企業の成長に強い相関があると考えられています。

SaaS企業におけるNPSの重要性

SaaS企業にとって、NPSは特に重要な指標となります。その理由は以下の通りです:

  • 継続的な顧客関係:SaaSビジネスは顧客との長期的な関係が不可欠です。NPSはその関係性の深さを測るのに適しています。
  • 口コミの影響力:SaaS製品は口コミで選ばれることが多いため、NPSによって顧客が他者にどの程度推奨するかを測定することは非常に有効です。
  • 解約率の予測:NPSが低い顧客は解約のリスクが高いため、早期の対策が可能となります。
  • 製品改善の指針:NPSのフィードバックを活用することで、製品の改善点を明確にできます。
  • 競合との差別化:高いNPSスコアは、競合他社と差別化する重要なポイントとなり得ます。

これらの理由から、SaaS企業がNPSを活用することは、顧客との関係を深め、事業の成長に寄与するための重要な手段です。

NPSの測定方法とSaaS企業での具体的な導入シーン

NPSの測定方法は以下のステップで行います:

  1. アンケートの作成:「0〜10のスケールで、このサービスを友人や同僚にどの程度勧めたいですか?」という質問を設定します。
  2. 回答の収集:メール、アプリ内通知、ウェブサイト上のポップアップなどで回答を依頼します。
  3. スコアの計算:(推奨者の割合 – 批判者の割合) × 100でNPSを算出します。
  4. 追加質問:スコアの理由を尋ねる自由回答欄を設けると、詳細なフィードバックが得られます。

具体的な導入シーンは次の通りです:

  • オンボーディング後:新規顧客がサービスの基本機能を理解した段階で初期印象を測定します。
  • 定期的な測定:四半期ごとや半年ごとに定期的に測定し、スコアの変動を追跡します。
  • 主要機能のアップデート後:新機能や大規模な改善が行われた際、その影響を測定します。
  • カスタマーサポート対応後:サポート対応の質を評価するために使用します。
  • 契約更新前:更新を控えた顧客のロイヤルティを確認し、必要に応じて対策を講じます。

NPSは一度だけでなく、継続的に測定することで、顧客満足度の推移や施策の効果を把握するのが重要です。

NPSを活用した顧客ロイヤルティ向上のための施策

NPSの結果を基に、顧客ロイヤルティを向上させるための具体的な施策を以下のように展開できます:

  • 推奨者の活用:推奨者の声をマーケティングに活用するカスタマーストーリーの作成や、アンバサダープログラムの立ち上げを行い、さらなる推奨を促します。
  • 中立者のアップグレード:個別のフォローアップを行い、改善点や要望をヒアリングします。また、教育コンテンツの提供により、製品の価値を伝え、利用促進を図ります。
  • 批判者への対応:迅速な問題解決を行い、批判的な顧客の意見を真摯に受け止めて製品改善に反映させます。

全体的な施策としては、カスタマーサクセスプログラムの強化や、ユーザーコミュニティの構築、パーソナライズされた体験の提供などがあります。これらの施策を実施することで、NPSスコアの向上を目指し、顧客との関係を深めることが可能です。

NPSの限界と補完的指標の活用

NPSは顧客ロイヤルティを測る強力な指標ですが、限界もあります。それらを理解し、他の指標と組み合わせることで、より包括的な顧客理解が可能となります。

  • NPSの限界:単一の質問では複雑な顧客感情を完全に把握できない可能性があります。また、文化的なバイアスや測定のタイミングにより結果が左右されることもあります。さらに、スコアだけでは具体的な改善点を特定するのが難しい場合もあります。
  • 補完的指標:CSAT(顧客満足度)やCES(顧客努力スコア)、CLV(顧客生涯価値)、チャーンレートなどを組み合わせることで、顧客との関係を多角的に分析できます。例えば、NPSが高くてもCESが低い場合、製品は評価されているが、使いにくさがあると推測できます。

定性的なフィードバックも重要です。NPSの自由回答やカスタマーサポートとのやり取り、ソーシャルメディアでの顧客の声を収集し、深い顧客理解に努めることが求められます。SaaS企業はこれらの指標を統合的に活用し、顧客の声に基づいた継続的な改善を目指すことが成功への鍵となるでしょう。

まとめ

本記事では、NPSの基本概念からSaaS企業での具体的な活用方法、NPSの限界と補完的指標の活用について詳しく解説しました。NPSは顧客ロイヤルティを測るための強力なツールであり、その結果を基に顧客との長期的な関係を築くことが可能です。ただし、他の指標や定性的なフィードバックと併用し、より深い顧客理解を目指すことが重要です。SaaS企業がNPSを活用して持続的な成長を達成するためには、顧客との対話を続け、ニーズに応じた改善を続けることが大切です。

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青山 俊彦

青山 俊彦カノープス株式会社 代表取締役

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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