責任ある立場の人が退職するための準備と上手な幕引きについて

quit-job3

責任ある立場にいる人ほど、退職を決意しても「自分が抜けることで業務が回らなくなるのでは」「会社や部下に迷惑をかけるのでは」と考え、辞めづらいものです。特に、プレイングマネージャーのようにプレイヤーとして売上や成果を出しつつ、マネジメントも担っている立場では、退職の影響が大きくなりがちです。

その結果、転職の意志が揺らぎ、最終的に引き止められて辞められなくなるケースもあります。しかし、キャリアの主導権は自分にあります。本記事では、責任感のある人が「後腐れなく」「スムーズに」退職するための準備と進め方について解説します。

自分のキャリア形成に真剣に向き合う

まず、退職を考える前に「自分のキャリアをどうしたいのか」を深く考えることが重要です。

  • ・なぜ転職を考えるのか?
  • ・5年後、10年後にどのようなキャリアを築きたいのか?
  • ・現在の会社にいて、そのキャリアは実現可能なのか?

責任ある立場の人ほど、特有の悩みを持っていることが多いです。例えば、「経営の方針と自分の考えが合わない」「マネジメントやマルチタスクに翻弄されて自分のキャリアが置き去りになっているような気がする」など。しかし、いざ退職を決断するとなると、また立場がその気持ちをセーブします。

「自分がやらなくては」「今の会社でもう少しやれることがあるのでは?」と。

この迷いを断ち切るためには、目の前の仕事だけでなく、「自分のキャリアを冷静に俯瞰して考える」という意識が必要です。もし「辞めるべきかどうか」で悩んでいるなら、「今の会社に居続けることで、5年後に後悔しないか?」と自問してみてください。

転職の大義(Will)を言語化する

転職の決意を揺るがせないためには、「なぜ転職するのか?」を明確に言語化しておくことが大切です。

例えばですが、以下のような視点で考えてみましょう。

  • 成長機会:今の会社では得られないスキルや経験を積みたい
  • 環境の変化:新しい業界やよりスケールの大きな仕事に挑戦したい
  • ・社会的視座:より社会貢献できる事業に挑みたい

この「転職の大義(Will)」が言語化されていれば、最終的に現職からカウンターオファーを受けても揺れることがなくなります。

会社側は引き止めの際に、「給料を上げるから」「ポジションを用意するから」と条件を出してきます。しかし、それは本質的な課題解決にはなりません。自分が転職で得たいものが「ポジション」ではなく「新しい環境での挑戦」だった場合、目の前の条件変更に惑わされるべきではありません。

転職を決める前に、「転職しなければ得られないものは何か?」をしっかり言語化し、ブレない軸を作りましょう。

引き継ぎできる環境を少しずつ整える

責任ある立場の人が突然「辞めます」と言えば、当然ながら現場は混乱します。そこで、退職を意識し始めた段階から、業務の引き継ぎを少しずつ進めることが重要です。

具体的には、以下のような準備をしておくとスムーズに退職できます。

  • 業務のマニュアル化:自分しかできない業務をなくし、誰でも対応できるようにする
  • 業務委譲の推進:後輩や部下に少しずつ仕事を任せていく
  • 重要顧客の引き継ぎ:特定の顧客が自分に依存しないよう、関係性を部下や他のメンバーにも広げる
  • 社内の体制を整える:チーム全体の業務フローを見直し、属人化を解消する

このような準備をしておくことで、退職時に「自分がいないと回らない状態ではない」ことを事実として伝えられますし、会社側も引き止めにくくなります。多忙ですとここまでできる方は少ないですが、日毎から業務移管を部下に渡すようなマネジメント方針を癖つけると良いでしょう。

退職時期を定め、プレ退職交渉を行う

次に、退職するタイミングを明確に決めましょう。「いつか辞める」ではなく、「◯月までに転職する」という期限を設定することで、行動に移しやすくなります。

そして、退職交渉をスムーズに進めるために、事前に上司に軽く意思を伝える「プレ退職交渉」を行うのも有効です。

例えば、話しやすい上司や評価面談の際に、「今後のキャリアについて考えている」といった形で、退職を匂わせる程度の温度感を示すのです。これによって、会社側も「この人は転職を考えているのか」と察し、引き継ぎの準備をしやすくなります。

また、プレ退職交渉をすることで、いざ正式に退職を伝えたときに「突然のこと」と受け取られず、スムーズに話が進みやすくなります。

転職活動をプロジェクトとして設計する

優秀な人ほど、転職活動をプロジェクトマネジメントのように計画的に進めることができます。

例えば、1年間のロードマップを以下のように設計するとよいでしょう。

  • 1〜3ヶ月目:市場調査・キャリアの方向性を明確化
  • ・4〜6ヶ月目:業務委譲・引き継ぎ準備を進める
  • ・7〜9ヶ月目:転職活動開始・面接
  • 10〜12ヶ月目:内定取得・退職交渉

このように計画的に進めることで、精神的な負担を減らしつつ、スムーズに転職を実現することができます。

まとめ

責任ある立場の人がスムーズに退職するためには、以下のステップが重要です。

  • 1.自分のキャリアを最優先に考える
  • 2.転職の大義(Will)を言語化し、揺るがない決意を持つ
  • 3.業務の引き継ぎを少しずつ進め、退職準備を整える
  • 4.退職時期を決め、上司に軽く伝える「プレ退職交渉」を行う
  • 5.転職活動をプロジェクトマネジメントのように設計する

優秀な人ほど、このプロセスをしっかり踏み、後腐れなく次のキャリアへと進んでいきます。自分のキャリアの主役は自分です。短期的な情ではなく、長期的な視点で最適な選択をしましょう。

合わせて読みたい
引き留めにあったらどうしよう?退職交渉の基本を学んでから活動開始しましょう。

青山 俊彦

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

関連記事