「生存者バイアス」かかってない?組織の思考が固まらないために必要なこと

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組織が新しいアイデアを生み出し続け、変化に適応するためには、多様な視点を取り入れることが不可欠です。しかし、多くの企業では「生存者バイアス」に陥りがちです。これは、長く在籍した方や特定の成功者が持つ事例や残っている情報だけに基づいて判断し、失敗や脱落した要因を軽視する認知の偏りです。結果として、組織の思考が固まり、イノベーションが停滞するリスクが生じます。本記事では、生存者バイアスが組織に与える影響と、それを回避するための具体的な方法について解説します。

生存者バイアスとは何か?

生存者バイアスとは、特定の成功した事例や現在存在しているデータのみに注目し、失敗や脱落したケースを考慮しないことで誤った結論を導いてしまう認知バイアスの一種です。有名な例として、第二次世界大戦中の航空機の話があります。エンジニアは、戦闘から帰還した飛行機の被弾箇所を調べて、どこに装甲を強化すべきか考えました。帰還した飛行機は主に胴体や翼に弾痕があり、エンジン部分にはあまり損傷がありませんでした。一見すると、胴体や翼を強化したくなりますが、これは生存者バイアスの罠です。なぜなら、エンジンに被弾した飛行機はそもそも帰還できず、データに含まれていなかったからです。実際には、エンジンこそ強化すべき箇所でした。

このバイアスは、組織内でもさまざまな形で表れます。

  • ・「成功した社員」の特徴ばかり分析し、退職した社員の意見や不満を見過ごす
  • ・過去の成功プロジェクトの要因を重視し、失敗プロジェクトの反省を活かさない
  • ・現在の社員の意見を過大評価し、過去に辞めた人のフィードバックを無視する

このような偏った意思決定が続くと、組織の思考は次第に硬直化し、変化に対応できなくなります。

組織の思考が固まる原因

組織が柔軟な思考を失う主な原因として、以下の3つが挙げられます。

経験の範囲内での判断
人は、自分が経験したことをもとに意思決定を行う傾向があります。そのため、過去の成功体験に基づいた判断ばかりをしてしまい、新しい発想を取り入れる機会が減ってしまいます。

行動のパターン化
組織では、効率を重視するあまり、特定のやり方が「最適解」として固定化されがちです。その結果、新しい方法を試す機会が失われ、変化への対応力が低下します。

成功体験への固執
「以前もうまくいったから、今回もこのやり方で大丈夫だろう」という考え方は、時代の変化に適応する妨げになります。市場環境や技術が変化しているにもかかわらず、過去の成功に頼り続けると、組織の成長が停滞してしまいます。

思考の固まりを防ぐための対策

多様性の尊重と促進

生存者バイアスを回避するためには、さまざまな視点を取り入れることが重要です。

  • ・異なるバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用し、多様な意見を取り入れる
  • ・部署や職種を超えた交流を促進し、異なる視点からのフィードバックを得る
  • ・固定的な評価基準ではなく、変化に対応する力を評価する仕組みを導入する

認知の多様性を高めることで、偏った視点による意思決定を防ぎ、組織の柔軟性を維持できます。

オープンなコミュニケーションの促進

組織の思考を柔軟に保つためには、上層部から現場まで意見を自由に交換できる環境を整えることが重要です。

  • ・トップダウンだけでなく、ボトムアップの意見も積極的に取り入れる
  • ・失敗を恐れずに意見を出せる文化を醸成する
  • ・定期的に意見交換の場を設け、経営層と従業員の対話を促進する

組織全体でオープンな議論ができるようになれば、新たな発想が生まれやすくなります。

失敗から学ぶ文化の醸成

生存者バイアスに陥らないためには、成功だけでなく失敗からも学ぶ姿勢が必要です。

  • ・失敗を責めるのではなく、学びの機会として捉える
  • ・過去の失敗事例をオープンに共有し、そこから得られた教訓を活用する
  • ・プロジェクト終了後に必ず振り返りを行い、成功・失敗の要因を明確にする

こうした取り組みを継続することで、組織全体の学習能力が向上し、柔軟な思考が維持されます。

客観的なデータの活用

生存者バイアスによる偏った判断を防ぐためには、定量的なデータを活用することが有効です。

  • ・社員の満足度調査やエンゲージメント調査を定期的に実施し、組織の課題を把握する
  • ・プロジェクトの成功・失敗の要因を数値化し、客観的に評価する
  • ・成功事例だけでなく、失敗事例も含めたデータを組織内で共有する

データをもとに意思決定を行うことで、主観的な判断に頼るリスクを減らせます。

継続的な学習と自己啓発の奨励

組織の思考を柔軟に保つためには、個々のメンバーが学び続ける環境を整えることが重要です。

  • ・新しい知識やスキルを学ぶ機会を提供する(研修・勉強会の実施)
  • ・業界の最新トレンドをキャッチアップするための情報共有の場を設ける
  • ・個々の成長を支援する制度を導入し、学習意欲を高める

変化し続ける環境に対応するためには、個々の成長が欠かせません。

まとめ

生存者バイアスは、組織の思考を硬直化させ、変化への対応力を低下させる要因となります。このバイアスを回避するためには、多様性を尊重し、オープンなコミュニケーションを促進し、失敗から学ぶ文化を醸成することが重要です。また、客観的なデータを活用し、継続的な学習を推奨することで、組織の柔軟性を高めることができます。これらの取り組みを通じて、変化に強い組織を作り上げましょう。

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青山 俊彦

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