SaaS業界に転職したいけれど、「PSR」「ARR」「時価総額」といった専門用語が多く、企業の良し悪しをどう見ればいいか迷っていませんか?とくに若手の方にとって、これらの指標は聞き慣れないものかもしれません。本記事では、SaaS企業を評価するために最低限おさえておきたい4つの指標を、まとめてみます。
SaaS企業を評価するために必要な4つの指標とは?
SaaS企業は、毎月定額でソフトウェアを提供し続けるビジネスモデルです。小売や製造と違い、「一度売って終わり」ではなく、「継続的な契約」で売上が積み上がっていくのが特徴です。
そのため、企業を評価する際も「今いくら儲かっているか」よりも、「今後どれくらい安定して収益が入るか」や「どれだけ成長できそうか」といった将来の見込みが重視されます。そこで登場するのが以下の4つの指標です。
・時価総額:その会社の市場価値
・PSR(Price to Sales Ratio/プライス・トゥ・セールス・レシオ):売上に対する企業の評価の高さ
・ARR(Annual Recurring Revenue/アニュアル・リカーリング・レベニュー):毎年確実に入ってくる契約収益
・FCF(Free Cash Flow/フリー・キャッシュフロー):稼いだお金のうち、自由に使える残り
以下、それぞれをわかりやすく解説していきます。
時価総額とは?「この会社は最低限いくらで買えるか」
計算式:株価 × 発行済株式数
たとえば、1株が1000円で、1億株発行していれば、
→ 1000円 × 1億株 = 1000億円(時価総額)
これは、「この会社を丸ごと買おうとしたら、最低限いくらかかるか?」を表しています。つまり、その企業に今どれくらいの価値があると市場が判断しているかの指標です。
たとえば、同じような規模のSaaS企業でも、片方は500億円、もう一方は1500億円の時価総額がついていたら、市場は後者に対して「将来もっと成長するはず」と期待していることになります。
PSRとは?売上に対して、どれだけ期待されているか
計算式:時価総額 ÷ 年間売上
たとえば、年間売上100億円の企業に1000億円の時価総額がついていたら、
→ 1000億円 ÷ 100億円 = PSR 10倍
これは、「年間100億円の売上に対して、10倍の評価がついている」ということです。
つまり、「今は100億しか売っていないけど、将来的にもっと稼ぐだろう」と大きく期待されている状態です。
PSRが特に重視されるのは、「まだ利益が出ていない(赤字)成長企業」を評価する時です。このPSRが高すぎるのも注意は必要。過度な期待が裏切られたときには、評価が一気に落ち込むリスクがあるためです。
ARRと成長率とは?契約が続く安心感を見る

ARR(年間経常収益)=月額売上(MRR:毎月継続的に入ってくる売上、コンサル料などは除く) × 12ヶ月
たとえば、月1000万円の課金売上がある企業であれば、
→ 1000万円 × 12ヶ月 = ARR 1.2億円
この数字は「今いる契約中の顧客が、このまま1年間継続すれば入ってくる見込みの売上」です。いわば「毎月の給料みたいに、確実に入ってくる売上」とも言えます。
たとえば、昨年のARRが1億円 → 今年は1.5億円になったら、
→ (1.5億 − 1億)÷ 1億 = 50%成長
これは、お客さんが増えたり、契約単価が上がったりして、売上が大きく成長していることを意味します。
ARRの成長が大きい企業は、それだけ「売れるプロダクトを持っている」「営業力が強い」などの可能性が高く、転職先としても魅力的です。
FCFとは?売上のうち、いくら自由に使えるお金が残るか
計算式:営業で得たお金(本業で生み出した現金:営業キャッシュフロー) − 投資や支出
たとえば、10億円の営業収益があり、設備投資などで8億円使ったとすれば、
→ FCFは 2億円
この「2億円」が、実際に会社の手元に残るお金です。個人で言えば、給料から家賃や生活費を引いたあとの「自由に使えるお金」に近い感覚です。
SaaS企業は積み上げ課金型のモデルを採用する企業が多いため、初期はFCFがマイナス(=赤字)でも問題ない場合が多いです。しかし、いつまでも赤字続きの企業は、将来の資金繰りに不安が残ることもあります。
「この会社はそろそろ自分で稼げるようになっているのか?」という視点を持っておくことは、転職先を見極める上で非常に重要。
まとめ
本記事では、SaaS企業への転職を検討するビジネスパーソンに向けて、時価総額・PSR・ARR・FCFという基本指標を、わかりやすく解説しました。全て公開をされているわけではないので、事前に把握することは難しい面もありますが、これらの数字は、企業の成長性・収益性・安定性を見極めるための鍵になります。上場企業や情報を公開している企業を中心に確認して良いと思います。「売上がある」だけでなく、「どれだけの期待を受けているか」「どれだけ手元に残せているか」まで意識することで、より良いキャリア選択につながります。