TAMとは?SaaS企業の成長戦略に不可欠な市場分析

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この記事では、SaaS企業の成長戦略において不可欠な市場分析手法であるTAMについて解説します。TAMは、企業が理論上取り得る市場の最大規模を示す指標であり、新規事業やスタートアップにとって成長可能性を評価する重要な基盤となります。さらに、具体例として日本企業のカミナシ社を取り上げ、TAM、SAM、SOMの活用方法とその効果についても詳述します。

TAM、SAM、SOMとは何か?

TAM(タム/Total Addressable Market)、SAM(サム/Serviceable Available Market)、SOM(ソム/Serviceable Obtainable Market)は、市場規模を評価するための基本的なフレームワークです。これらの指標は、特にスタートアップや新規事業の計画段階で、市場の潜在的な規模を理解し、事業戦略を立てる際に不可欠です。

  • TAM:市場全体の規模、すなわち企業が理論上取り得る最大の市場規模です。例えば、全世界の顧客が製品やサービスを利用すると仮定した場合の規模を示します。
  • SAM:TAMの中で、実際に企業が提供するサービスや製品がアプローチ可能な市場部分を示します。地域的な制約や特定の顧客層を対象とする場合に、SAMが定義されます。
  • SOM:SAMの中でも、企業が現実的に獲得可能な市場規模を示します。市場競争や自社のリソースを考慮した現実的な数値です。

これらの指標を理解し、適切に活用することで、企業は市場の全体像を把握し、成長戦略の方向性を明確にすることができます。

TAMの計算方法とSaaS企業への影響

TAMは企業が成長戦略を策定する上での重要な指標であり、正確な計算が求められます。TAMの計算には、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチという2つの方法が一般的です。

  • トップダウンアプローチ:既存の市場データや業界レポートを基に、全体の市場規模を推定します。例えば、世界全体でのソフトウェア市場の規模を調べ、そこから自社製品がカバーする市場を算出する方法です。
  • ボトムアップアプローチ:自社がターゲットとする顧客の数や価格設定を基に、市場規模を計算します。具体的な顧客数や需要予測を基に、実際の市場規模を算出します。

TAMを正確に把握することで、企業は市場におけるポテンシャルを最大限に活用し、効果的な成長戦略を立てることができます。特に、SaaS企業においては、製品やサービスがどの程度の市場規模にアプローチ可能かを明確にすることで、将来的な成長の道筋を描くことができます。

SAMとSOMの役割と計算方法

SAMとSOMは、TAMの補完的な指標として、より具体的な市場規模を示す役割を担います。

  • SAMの役割:SAMは、TAMの中でも実際にアプローチ可能な市場部分を示します。たとえば、特定の地域や特定の顧客層に限定された市場規模を計算する際に用いられます。SAMを算出するためには、ターゲットとなる顧客層の特性や市場の地理的制約を考慮する必要があります。
  • SOMの役割:SOMは、さらに現実的な市場規模を示します。企業が実際に獲得可能な市場規模を示すため、競合の存在や企業のリソース、営業力などを考慮した数値となります。これにより、企業は短期的・中期的な成長目標を設定しやすくなります。

これらの指標を活用することで、企業は市場の理解を深め、効果的なマーケティングや営業戦略を策定することが可能となります。特に、新規市場への参入や新製品の投入を検討している企業にとって、SAMとSOMは重要な意思決定ツールとなります。

カミナシ社の事例に学ぶTAMの戦略的活用

カミナシ社は、ノンデスクワーカー向けのSaaSサービスを提供する国内成長企業。TAM、SAM、SOMを活用して市場分析を行っています。カミナシ社のTAMは、ノンデスクワーカーの管理職における人件費を基にし、22兆6200億円と見積もられています。

カミナシ社の成功例では、TAMを単なる数値として捉えるのではなく、実際の市場戦略に結びつけることが重要であることが示されています。例えば、TAMを基にしたマーケティング戦略の策定や、特定の顧客層に絞ったSAMとSOMの設定が、その成長を大きくサポートしました。

このように、カミナシ社の事例は、TAM、SAM、SOMが単なる計算ツールではなく、実際のビジネスにおいてどのように活用されるかを理解する上で非常に参考になります。特に、SaaS企業にとって、TAMを戦略的に活用することで、競争が激しい市場環境において優位性を保つことが可能となります。

SaaS企業がTAMを活用するメリット

SaaS企業がTAMを活用することで得られるメリットは多岐にわたります。

  1. 市場全体の理解:TAMを把握することで、企業は自社が参入しようとしている市場の全体像を理解し、潜在的な成長機会を見逃さないようにできます。
  2. 投資家へのアピール:TAMの存在は、特に資金調達の際に投資家を説得する材料となります。市場規模が大きいことを示すことで、投資家に対して将来のリターンを期待させることができます。
  3. 競争優位性の確立:TAMを元にした市場分析を行うことで、競合他社に対する優位性を確立するための戦略を策定できます。これにより、特定の市場ニッチを攻めるなど、差別化を図ることが可能です。

特に、競争が激化しているSaaS市場では、TAMの活用が競争優位性を保ちつつ成長を加速させるための鍵となります。

まとめ

この記事では、TAM、SAM、SOMという市場分析のフレームワークが、SaaS企業の成長戦略においていかに重要であるかを解説しました。特に、TAMは事業の成長可能性を見極める上で不可欠な指標です。カミナシ社の事例を通じて、具体的な市場分析の方法と、それを基にした戦略的な意思決定の重要性を理解することができました。SaaS企業がこの分析手法を適切に活用することで、市場の可能性を最大限に引き出し、持続的な成長を実現することが期待されます。

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青山 俊彦

青山 俊彦カノープス株式会社 代表取締役

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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