Rule of 50とは何か?SaaS企業の健全性を自分で読む指標

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SaaS業界で働いていると、投資家や経営層の会話に「Rule of 40」や「Rule of 50」という言葉が出てくることがあります。聞いたことはあっても、正確に説明できるかと問われると自信がない、という人も少なくないはずです。

この記事では、Rule of 50という指標の意味と成り立ちを丁寧に整理したうえで、SaaSで働くビジネスパーソンが自分の言葉でこの指標を使えるようになることを目的に書いています。

まずRule of 40から押さえる

Rule of 50を理解するには、その前身にあたる「Rule of 40(ルール・オブ・フォーティ)」を先に知っておく必要があります。

Rule of 40とは、SaaS企業の健全性を判断するための指標で、「売上成長率(%)と利益率(%)を足した合計が40以上であれば健全とみなす」という考え方です。計算のしかたはシンプルで、たとえば売上が前年比30%成長していて利益率が15%であれば、合計は45。これはRule of 40を超えているので健全と判断できます。逆に、成長率が10%で利益率も10%なら合計は20で、成長と収益性のどちらも物足りない状態といえます。

この考え方のポイントは、成長と収益性を「足し算で見る」という視点にあります。急成長中であれば多少の赤字は許容されますが、その分だけ成長率が高くないといけない。逆に成長が鈍化しているなら、その分だけ利益を出して補う必要がある。この両者のバランスをひとつの数字で見るためのものが、Rule of 40です。

SaaSスタートアップの評価や投資判断の現場で広く使われてきた指標であり、SaaS業界にいれば基礎知識として押さえておきたい概念です。

Rule of 50は何が違うのか

Rule of 40が広く定着する一方で、近年「Rule of 50(ルール・オブ・フィフティ)」という考え方も登場してきました。基本的な計算式はRule of 40と同じで、「売上成長率(%)+利益率(%)の合計が50以上を目指す」というものです。ただし、求める水準が10ポイント高くなっています。

なぜ50なのかという背景には、SaaS市場を取り巻く投資環境の変化があります。2010年代後半から2020年代初頭にかけて、低金利環境のもとで成長企業への資金供給は潤沢でした。成長さえ見えれば赤字でも評価される空気があり、Rule of 40を超えていれば十分という感覚が多くの場面で通用していました。

しかし金利が上昇し、資本コストへの意識が高まると、投資家の目線が変わりました。「成長しているだけでなく、効率よく伸びているかどうか」が問われるようになり、より高い水準を求める指標としてRule of 50という言葉が使われるようになってきたのです。

特に北米のSaaS投資家コミュニティやアナリストのあいだで語られることが多く、「トップクラスのSaaS企業が目指すべき水準」というニュアンスで使われます。

利益率に何を使うかが実は重要

Rule of 40でもRule of 50でも、「利益率」の部分に何を使うかは議論が分かれます。会計上の営業利益率を使うケースもありますが、SaaS業界でよく使われるのがFCFマージン(フリーキャッシュフローマージン)です。

FCF(フリーキャッシュフロー)とは、企業が事業活動と投資活動を通じて実際に手元に残るキャッシュのことです。売上から運営コストや設備投資を差し引いた後に残る現金の流れで、これを売上高で割ったものがFCFマージンです。

なぜ会計上の利益ではなくFCFが使われるかというと、SaaS企業には売上の認識タイミングとキャッシュの回収タイミングがズレやすい構造があるからです。たとえば、年間契約を一括で受け取っても、会計上は毎月少しずつ売上として計上します。このため、実際のキャッシュの動きを見ないと企業の実態が正確につかみにくいという特性があります。FCFマージンを使うことで、よりリアルな事業体力を確認できるとされています。

指標を読む際には、「どの利益率を使っているか」を確認する習慣を持つと、数字の解釈の精度が上がります。

数字で見るとどう変わるか

実際にRule of 40とRule of 50を比較すると、どのくらい要求水準が変わるのか、具体的なイメージで見ておきましょう。

成長率が40%のSaaS企業であれば、Rule of 40を満たすためにはFCFマージンが0%以上あれば足ります。しかしRule of 50を満たすには、FCFマージンが10%以上必要になります。成長が20%の企業であれば、Rule of 40はFCFマージン20%以上、Rule of 50は30%以上が必要です。

こう見ると、Rule of 50は単純に「水準を上げた」だけでなく、成長と収益性の両立を本気で問う指標だとわかります。成長率が高い段階では現実的に届く水準ですが、成長が落ち着いてくるフェーズでRule of 50を維持しようとすると、利益率をかなり高めていく必要があります。それだけに、「50以上を安定的に出せている企業」は投資家から見て魅力的な水準として映ります。

SaaSで働く人がこの指標を使える場面

Rule of 50は投資家向けの話に聞こえるかもしれませんが、SaaSで働くビジネスパーソンにとっても実用的な知識です。

◎転職先や自社の状態を読むとき

成長率と利益率のバランスがどこにあるかを把握することで、その企業が今どういう局面にいるのかを解釈する手がかりになります。採用面接の場や入社後の経営会議での会話が、格段に理解しやすくなります。

◎顧客がSaaS企業であるとき

営業やカスタマーサクセスの立場で顧客に向き合うとき、相手の企業が成長投資フェーズにいるのか、収益改善フェーズにいるのかを把握していると、提案のトーンや優先課題の読み方が変わります。

◎業界全体の方向性を読む視点として

市場が「成長率重視」から「効率的な成長重視」にシフトしているとき、その変化をRule of 40からRule of 50という流れとして理解しておくと、ニュースや競合動向の解釈に厚みが出ます。

まとめ

Rule of 50は、売上成長率と利益率の合計が50以上を目指すという、SaaS企業の健全性を測る指標です。Rule of 40の発展版として、投資環境の変化を背景に注目されるようになりました。成長と収益性のバランスをひとつの数字で見るという視点は、転職先の評価や顧客理解、業界トレンドの読み方など、SaaSビジネスパーソンが実務で使える知識として機能します。難解な財務指標ではなく、計算式はとてもシンプルです。まずは自社や気になる企業の数字に当てはめるところから、試してみてください。

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