自分らしい働き方をつくる「ヒューマンセントリック・キャリア設計」とは

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転職やキャリアに悩んだとき、「自分に合う働き方って何だろう?」と感じたことはありませんか?特に変化の激しいSaaS業界では、スキルや経験以上に、「自分の価値観やライフスタイルに合った選択」が大切になってきています。今回ご紹介する「ヒューマンセントリック・キャリア設計」は、そんな“自分らしさ”を軸にキャリアを考える新しいアプローチです。仕事選びや職場選びに迷ったときのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。

ヒューマンセントリック・キャリア設計とは

「ヒューマンセントリック・キャリア設計」とは、キャリア形成のプロセスにおいて「人間らしさ=個人の価値観や感情、ライフスタイル」を中心に据えるアプローチです。従来のキャリア設計は、会社や組織の中での出世や安定を目的としたトップダウン型が主流でしたが、現代では多様な働き方や生き方が認められ、それに合わせたボトムアップ型の設計が求められています。

この考え方のルーツには「Human-Centered Design(HCD)」があります。これはプロダクト開発やサービス設計における考え方で、ユーザーのニーズや行動を深く理解し、それに応じて設計するというものです。このHCDをキャリアに応用したのが、ヒューマンセントリック・キャリア設計なのです。

「どこで働くか」よりも「どう生きたいか」「何を大切にしたいか」といった個人の価値観に根ざしてキャリアを設計することで、仕事への満足度やライフワークバランス、そして長期的なキャリアの持続可能性が高まります。

キャリアにおける「自分中心」の考え方

ヒューマンセントリックなキャリア設計では、「自分にとっての意味や目的」を主軸に据えることが重要です。これは単なる自己中心的な考えではなく、「自分を深く理解し、自分が最大限活躍できる環境を選ぶ」という極めて合理的かつ持続可能な戦略です。

たとえば、同じ職種でも「顧客との対話を通じて信頼関係を築きたい人」と「数字で成果を証明したい人」では、向いている業務スタイルも働く環境も異なります。自分の価値観や強みを明確にすることで、転職活動の際に「合う企業」「合わない企業」を見極めやすくなります。

特にSaaS業界では、変化のスピードが速く、業務内容も流動的です。だからこそ、自分の内面と向き合い、「何をしたいか」「どう働きたいか」を中心にキャリアを設計する視点が重要になります。

デザイン思考とキャリア設計の共通点

ヒューマンセントリック・キャリア設計は、デザイン思考(Design Thinking)と非常に親和性が高いです。デザイン思考とは、「共感」「定義」「アイデア創出」「プロトタイプ」「テスト」という5つのステップを踏みながら、ユーザーの課題を解決するアプローチです。これをキャリア設計に応用することで、自己理解を深め、未来のキャリアを柔軟に構想し、試行錯誤しながら構築することができます。

たとえば、「共感」フェーズでは、自分自身の感情やモチベーションの源泉を観察・分析します。「定義」では、自分にとっての理想のキャリアを明文化します。その上で、実現に向けた「アイデア創出」や、複数の企業や職種を仮想的に経験してみる「プロトタイプ」フェーズを経て、少しずつ理想のキャリアに近づいていくのです。

このように、キャリアは一度で完成させるものではなく、「仮説と検証」の繰り返しでつくっていくという姿勢が、ヒューマンセントリックな考え方と一致しています。

SaaS業界におけるキャリア設計のポイント

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SaaS業界は、テクノロジーとビジネスモデルの進化が速く、成長意欲があれば挑戦できるフィールドが広がっています。その反面、企業や職種の流動性が高く、自分の軸がぶれてしまうと、職場選びで迷走するリスクもあります。

そこで重要なのが、「業界動向を知り、自分の価値観と照らし合わせる」ということです。たとえば、プロダクト志向が強い企業で働きたいのか、それとも営業力を活かして市場拡大に貢献したいのか。その選択基準を、単に「有名企業だから」「年収が高いから」ではなく、自分の価値観や将来像に基づいて行うことが、キャリア設計の成功要因になります。

また、スタートアップと大手SaaS企業では求められる能力も働き方も大きく異なります。自分にとって「ストレスなく力を発揮できる環境」はどこかを見極めることが、長期的なキャリアの充実につながります。

キャリアの軸を見つけるための実践方法

ヒューマンセントリックなキャリア設計を進めるには、まず「自分を知る」ことから始めましょう。以下のようなステップが効果的です。

・過去の経験を棚卸しする:自分が情熱を注いだ仕事や達成感を得た経験を書き出します
・自分の価値観を言語化する:どんなときにやりがいや不満を感じるのかを整理します
・理想のライフスタイルを描く:将来どんな生活を送りたいかをイメージします
・小さな行動から試してみる:副業や社外活動などを通じて、仮説を実験します

これらを通じて見えてくるのが、「自分のキャリアの軸」です。それは「成長実感が得られる仕事」「人の役に立つ実感がある働き方」など、個人によってさまざまです。

転職を考えるとき、この軸をもとに企業を選び、面接でそれを伝えることができれば、自分らしいキャリアを築ける可能性がぐっと高まります。

まとめ

ヒューマンセントリック・キャリア設計とは、自分自身の価値観やライフスタイル、強みを中心に据えたキャリア形成のことです。変化の激しいSaaS業界では特に、このような「自分主体」の設計が重要になります。自分を知り、試行錯誤しながら、最も自分らしく活躍できる環境を見つけていく。その過程そのものが、これからの時代の新しいキャリアの形なのです。

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青山 俊彦

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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