
SaaS業界で注目されている「ニアバウンド戦略」は、自社の顧客基盤や営業力だけに頼らず、信頼できるパートナー企業との連携を通じて営業効率を高める手法です。特に信頼性が重視されるBtoB領域において、有効なアプローチとして多くの企業が導入を進めています。本記事では、ニアバウンド戦略の概要から、注目される背景、具体的な活用シーン、そして成功企業の傾向までを網羅的に解説します。
ニアバウンド戦略とは何か?基本の考え方を整理
ニアバウンド戦略(Nearbound Strategy)は、「信頼を借りる営業」とも呼ばれ、すでに信頼関係を築いているパートナー企業を通じて、自社の見込み顧客にリーチする営業手法です。
インバウンド(自社発信のコンテンツによる集客)やアウトバウンド(架電やメール営業)に続く「信頼性」を軸にした新たなアプローチとして注目されています。
この戦略の最大の特徴は、顧客にとって信頼できる情報源を通じてアプローチするため、初期段階から商談につながりやすく、成約率も高くなる点です。たとえば、SIerや導入支援パートナーと連携することで、自然な形でリードを生み出すことが可能です。
なぜ今、ニアバウンドが注目されているのか?
ニアバウンド戦略が注目される背景には、情報の信頼性が購買行動に大きく影響を与えているという点があります。顧客は営業担当者の発信よりも、信頼している知人やパートナー企業からの紹介や推薦を重視する傾向が強まっています。
特に、導入が複雑で比較検討が必須となるSaaS製品では、こうした「第三者からの推薦」が意思決定を後押しする大きな要因となっています。
また、パートナーセールスとも相性が良く、SaaSの成長戦略における新たな柱として、ニアバウンド戦略の導入が加速しています。
実際の活用シーン:営業現場での応用例

ニアバウンド戦略は、さまざまな営業現場で活用されています。
・共通の顧客を持つ企業とのウェビナー共催
・既存顧客からの紹介によるリード獲得
・代理店やパートナーセールスによる拡販活動
例えば、マーケティングツールとCRMのベンダーが共同でウェビナーを開催し、双方の顧客に対して導入事例を紹介することで、高品質なリードを創出できます。
また、実際の利用者からの紹介は、見込み顧客にとって非常に強い信頼材料となり、商談化までのスピードを大幅に高めます。パートナー企業のネットワークを活用することで、自社のリソースではアプローチが難しかった新規市場にも到達できます。
どんな企業がニアバウンドを活用しているのか
ニアバウンド戦略を活用している主な企業タイプは次のとおりです。
・SIerやコンサルファームと連携してSaaS導入を進める企業
・コミュニティを活用して営業活動を行うスタートアップ企業
・プロダクト連携を軸にしたエコシステム型のSaaS企業
SIerやITコンサルとの協業は、業務課題に即したソリューション提案を実現できます。コミュニティ活用型のスタートアップでは、業界内の口コミや推薦がそのまま営業活動につながるケースもあります。
また、API連携などプロダクト同士の統合を通じて、新たな顧客価値を生み出し、相互の営業チャネルを共有する企業も増えています。
ニアバウンド導入のポイントと注意点
ニアバウンドを導入する際には、以下の点に注意する必要があります。
・信頼できるパートナーの選定
・紹介制度やインセンティブ設計などの体制整備
・リードや成果の可視化とPDCAの実行
信頼性に欠けるパートナーと連携すると、自社の評判にも影響を与えかねません。適切な企業を選定し、紹介ルールの明文化や成果の追跡が可能な仕組みづくりが必要です。
また、パートナーとの関係を一過性で終わらせず、継続的な成果につなげるためにも、KPIの共有と改善サイクルの設計が欠かせません。
まとめ
ニアバウンド戦略は、パートナー企業との信頼関係を活用することで、顧客へのアプローチを効率化する新たな営業手法です。特にSaaS業界においては、紹介や協業の信頼性が購買決定に大きく影響するため、導入するメリットは大きいといえるでしょう。今後もこの戦略は、インバウンド・アウトバウンドに並ぶ第三の柱として、営業戦略の中核になっていくと考えられます。
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