SaaSのセールスとSIerのセールス。その違いとキャリアを考察

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SaaSとSIerのセールス。どちらも同じIT業界の営業職ですが、その営業手法やキャリア形成の方向性には大きな違いがあります。

本記事では、まずSaaSとSIerそれぞれの違いを整理し、その上で営業職に求められるスキルや風土の特徴、そして築けるキャリアについて詳しく解説します。

SaaSとSIerの違いを整理

まず、SaaS(Software as a Service)とSIer(System Integrator)の違いを整理しましょう。クライアントに対して、ITを通じたサービス提供を行うという点では両者のゴールは同じかもしれませんが、サービス提供の形態や課金モデルが異なります。

SaaSの特徴
  • 提供形態:クラウド上でソフトウェアを提供。基本的には全ての顧客に同じレベルの機能を等しく提供。
  • 導入のスピード感:ブラウザ上で使えるため短期間で導入可能。
  • 課金体系:サブスクリプションモデルが主流だが、従量課金も多い。サービスによるが金額は抑えめ。
  • ・顧客層:中小企業から大企業まで幅広く提供されている。
SIerの特徴
  • 提供形態:企業ごとにカスタマイズされたシステムを構築・導入。オンプレミスでの開発もある。
  • ・導入のスピード感:要件定義から構築まで数か月から数年かかることもある。
  • 課金体系:プロジェクトベースでの受注。契約金額が大き目になることが多い。
  • 顧客層:主に大企業や公共機関など規模の大きい顧客層が多め。

これにより、SaaSは汎用性と柔軟性、SIerは高度なカスタマイズ性と規模の大きさがそれぞれの強みといえます。

SaaSセールス職の営業手法と特徴

SaaSセールス職では、「THE MODEL型」と呼ばれる営業プロセスが主流です。この手法では、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスが役割を分担し、効率的かつ効果的に顧客を支援します。それぞれの工程に特化することで、顧客体験を最大化することが目的です。以下に、各プロセスの概要と特徴を説明します。

SaaSの営業手法
  1. マーケティング
    潜在顧客(リード)を集める役割を担います。ウェブ広告やホワイトペーパーを活用し、ターゲット層にアプローチ。集めたリードをインサイドセールスに引き渡します。

  1. インサイドセールス
    リードを精査し、適切な見込み顧客へ育成。電話やオンライン会議を中心に効率よく商談の機会を創出し、フィールドセールスに引き継ぎます。

  1. フィールドセールス
    実際に顧客と対面、またはオンラインで商談し、契約を締結する役割を担います。顧客の課題に合った提案力が求められます。

  1. カスタマーサクセス
    契約後の顧客サポートを担当。サービスの導入支援や利用促進を通じて顧客満足度を高め、継続利用やアップセルにつなげます。

THE MODEL型の分業体制における成功の鍵は、各部門間のスムーズな連携と迅速な対応です。このモデルに適応することで、効率的に顧客をサポートできます。

SIerセールス職の営業手法と特徴

SIer(システムインテグレーター)のセールス職は、顧客のニーズに応じたシステム提案を行うことが主な役割です。SaaSセールスとは異なり、対面での提案や長期的なプロジェクト管理が求められる点が特徴です。以下に、SIerセールス職の主な営業手法と必要なスキルを解説します。

SIerの営業手法

  1. アカウントマネジメント
    特定の顧客に対し、長期にわたり専任で対応する形が多く取られます。オンラインや対面を使い分けながら、顧客の経営課題を深く理解し、適切なシステム提案を行うことが求められます。信頼を積み重ねることで、継続的なビジネス機会を生み出します。

  1. プロジェクトマネジメント
    契約後は開発チームと連携し、要件定義や進行管理を担当します。プロジェクトの成功に向けて、顧客との調整や納品までのサポートが重要です。

  1. 入札参加
    公共事業や大規模案件では競争入札に参加します。入札要件の正確な把握と、差別化された提案書作成が鍵となります。

SIerセールス職は、顧客との強固な関係構築と、長期間にわたるプロジェクトを成功に導く責任感が求められる職種です。個別対応力と全体を見渡す管理能力が成功の鍵となります。

SaaSとSIerで積めるキャリアの違い

SaaSセールス職とSIerセールス職は、キャリア形成の方向性に明確な違いがあります。SaaS業界では業界の新しさを背景に柔軟なキャリアの選択肢があり、SIerでは安定したキャリアパスを築く機会が特徴的です。それぞれのキャリア形成の特徴を具体的に解説します。

SaaSセールスで積めるキャリア
  1. ビジネスサイド職種への横異動
    SaaS業界では、セールスからマーケティング、インサイドセールス、カスタマーサクセスといったビジネスサイド職種への横異動が比較的しやすい環境です。各部門が密接に連携するため、専門知識を活かしつつ新しい職種に挑戦できる点が魅力です。

  1. 縦のキャリアチャンスの多さ
    SaaS業界は比較的新しい分野であるため、マネージャーや事業部長など管理職への昇進のチャンスが豊富です。急成長企業が多いことから、短期間でリーダーポジションに就くケースも少なくありません。

  1. サービス開発へのキャリアパス
    セールス経験を活かし、プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)やプロダクトマネージャー(PdM)として製品開発に携わるキャリアも可能です。顧客課題を理解した経験を製品戦略に活かせる点が強みです。

  1. 経営層へのステップアップ
    スタートアップや成長企業では、セールスから事業部長や経営陣に抜擢される機会もあります。業界特有のスピード感を持ったキャリア形成が期待できます。
SIerセールスで積めるキャリア
  1. 安定したキャリアパス
    SIer業界は歴史の長い企業が多く、安定したキャリアパスを描ける点が特徴です。ただし、職種間の横異動はSaaS業界ほど頻繁ではありません。そのため、キャリア形成には同じ分野での専門性を深めることが求められます。

  1. コンサルタントとしてのキャリア
    システム構築やプロジェクト運営の経験を活かし、顧客課題に深く関与するコンサルタントとしてのキャリアが開けます。長期的な実績が評価されやすい業界です。

  1. 管理職や事業部リーダーへの道
    長期間の勤務で経験を積むことで、組織内で事業部長や管理職に昇進する機会があります。特に、プロジェクトマネジメントや大規模案件の成功経験が重要です。

SaaS業界は柔軟性やスピード感があり、多様なキャリア選択肢があるのが特徴です。一方、SIer業界では専門性を高め、長期的な信頼と実績を積むことでキャリアを築く道があります。どちらを選ぶかは、自分の志向性や将来目指す姿に応じた判断が重要です。

まとめ

SaaSセールス職は、業界の新しさを活かした柔軟でスピーディーなキャリア形成が可能です。一方、SIerセールス職は、長期的な信頼構築や専門性を高めることで安定したキャリアを築けます。どちらの道を選ぶにせよ、自分の適性や目指す姿に合った選択をすることが重要です。

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青山 俊彦

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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