人はどのように学び、成長するのでしょうか?「経験学習モデル」という理論では、学びの70%は現場の経験から得られるとされています。多くのビジネスパーソンがセミナーや書籍を通じて自己成長を目指しますが、現場での実体験こそが、最も効果的で深い学びにつながるのです。本記事では、経験学習モデルの基本的な考え方から、それがキャリア形成やスキルアップにどのように役立つのかを解説します。
経験学習モデルとは何か?
経験学習モデル(Experiential Learning Model)は、アメリカの教育学者デイヴィッド・コルブによって提唱された理論です。このモデルでは、人が学ぶプロセスを以下の4つのサイクルで説明しています。
・具体的経験(Concrete Experience):現場での体験や行動を通じて得られる実践的な学び
・振り返り(Reflective Observation):経験を振り返り、どのような意味があるのかを考える
・概念化(Abstract Conceptualization):振り返りをもとに、具体的な理論や知識に落とし込む
・実験(Active Experimentation):学んだことを再び現場で試し、新しい経験につなげる
このサイクルが繰り返されることで、人はスキルを磨き、成長していきます。特に重要なのが「具体的経験」です。この段階こそが、最も多くの学びをもたらすとされています。
なぜ学びは現場から生まれるのか?
コルブの理論に基づき、多くの研究で「70:20:10モデル」という概念が提唱されています。これは、学びの70%が現場での実体験から、20%が他者からのフィードバックや観察から、10%がセミナーや書籍などの形式的な学びから得られるというものです。この数字は、全ての場面に当てはまるわけではありませんが、現場での体験がいかに重要かを示しています。
現場での学びが重要な理由は以下の通りです。
・実践を通じて記憶に定着する:体験を伴う学びは、単なる知識のインプットよりも記憶に残りやすい。
・問題解決力が鍛えられる:現場では予測できない課題やトラブルが発生するため、それに対処する力が自然と養われる。
・主体的な行動を促す:経験を通じて「自分がやり遂げた」という感覚が得られるため、モチベーションが高まる。
一方で、セミナーや本からの学びは、あくまで知識をインプットするだけで、行動に結びつかなければ効果が限定的です。そのため、知識を活用する場である現場が重要なのです。
現場での学びを最大化する3つの方法
経験からの学びを最大化するためには、ただ現場にいるだけでは十分ではありません。意識的な取り組みが必要です。以下の3つの方法を意識してみましょう。
・目的を持って行動する
何のためにこの業務に取り組むのか、どのスキルを伸ばしたいのかを明確にすることで、学びの質が向上します。目標設定を行い、それに基づいて経験を積むことが重要です。
・振り返りの時間を設ける
忙しい日々の中でも、経験を振り返る時間を意識的に作ることが大切です。週に1回でも構いません。何が成功し、何が課題だったのかを整理することで、次のステップに活かせます。
・他者のフィードバックを求める
現場での学びを深めるためには、他者の視点が欠かせません。上司や同僚に定期的にフィードバックを依頼し、客観的な意見を取り入れることで、自分では気づけない改善点が見えてきます。
セミナーや書籍は無駄?
ここまで現場での学びの重要性を述べてきましたが、セミナーや書籍の学びが無駄というわけではありません。これらは、基礎知識や理論をインプットする上で非常に有効です。
しかし、重要なのはこれらを「使う場」を意識することです。学んだ知識を現場でどう応用するかを考え、実践に落とし込むことで、インプットの価値が倍増します。たとえば、セミナーで学んだマーケティング理論を即座に自社の施策に適用し、その結果を振り返るといったサイクルを回すことが大切です。
現場体験の積み重ねがキャリアを強くする
現場での経験が最も重要だとされる理由は、それがキャリアの強みになるからです。セミナーや本で得られる知識は多くの人が共有していますが、現場での経験はその人だけのオリジナルなものです。
たとえば、SaaS業界でセールス職として働いている方であれば、顧客対応やプロダクト提案の成功事例・失敗事例を通じて得た知見は、あなたの「市場価値」そのものです。また、これらの経験が蓄積されることで、新たな課題にも柔軟に対応できる力が身につきます。
まとめ
経験学習モデルは、現場での体験が学びの基盤であることを示しています。学びの70%は現場から得られるという考えは、ビジネスパーソンにとって非常に実践的です。本記事では、経験学習モデルの基本と、現場での学びを最大化するための方法を解説しました。
セミナーや書籍も役立ちますが、それを活用する現場での行動こそが最も重要です。具体的な経験を意識的に積み重ねることで、スキルや知識は確実に深まります。現場を学びの場として最大限活用し、自分だけの価値を高めていきましょう。
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