営業支援やカスタマーサクセスの業務を外部に委託するビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)市場が拡大しています。SaaS企業でもインサイドセールスを中心にBPO事業者に業務を依頼するケースが増え、いまやカスタマーサクセス領域での業務もBPO企業へ依頼するケースも生まれているようです。本記事では、SaaS業界向けのBPO現状と、代表的な日本国内プレイヤーについて解説します。
SaaS業界でBPOが注目される背景
SaaS企業は、サブスクリプション収益を基盤とするビジネスモデルであるため、顧客獲得と維持の双方が収益拡大の鍵となります。しかし、どの企業もそれを担う人材を求めており、採用競争の激化が起きています。リソース制限がある中で営業やカスタマーサクセスの専門チームを内製化するのは負担が大きいため、BPOの導入が進んでいるようです。
BPOは、コストを抑えつつ短期間で専門性の高い業務プロセスを確立でき、顧客の初期獲得やリテンション(継続利用)に重要な役割を果たしています。
比較的多いIS-BPO、拡大しつつあるCS-BPO
SaaS企業にとって、インサイドセールスは効率的な顧客獲得方法であり、潜在顧客に対するアプローチやリード育成のために欠かせません。BPOによるインサイドセールス支援は、限られたリソースで質の高い営業活動を可能にし、特にスタートアップや中小規模のSaaS企業にとって効果的です。
また、SaaSという言葉が一般化する以前からテレアポ会社やコールセンター会社など、インサイドセールスつながるソリューション持つ事業者は数多く存在しており、ノウハウが豊富に蓄積されていた領域とも言えます。レベルの高い営業スタッフが対応するため、リードジェネレーションやアポ獲得の効率を高めることが可能で、SaaS企業が営業リソースを他の戦略的な業務に集中させることができます。
また、近年、SaaS企業におけるBPO活用は、顧客維持や利用促進を支援するカスタマーサクセス分野にも拡大しています。エンドユーザー側の業務知見も必要となり、顧客体験の向上をミッションするカスタマーサクセスは比較的難易度の高い領域ですが、解約率低減やアップセルを促進する施策の一環としてもBPOが活用されだしているようですこの領域での支援は比較的まだ少ないようですが、今後の成長が期待される分野です。
SaaS業界で注目のBPOプレイヤー
日本国内でSaaS業界に特化したBPOサービスを展開する企業には、多様な営業支援やカスタマーサクセスの知見を持つ企業が多くあります。以下に、代表的なプレイヤーを紹介します。
- スマートキャンプ「BALES(ベイルズ)」
インサイドセールス支援に特化したBALESは、リード獲得やアポイントメント設定を主な業務とし、特にスタートアップや中小SaaS企業向けに多く利用されています。SaaS商材のみならず多彩な業界の支援から生まれたノウハウで、クライアントのニーズに応じた柔軟な支援をしています。
- セレブリックス
歴史も長く営業支援に幅広く対応しているセレブリックスは、SaaS業界のセールスプロセスにも精通しています。インサイドセールスのみならず、フィールドセールスやカスタマーサクセス、カスタマーサポートなど非常に幅広い業務支援でSaaS企業の成長を総合的にサポートしています。
SaaS企業がBPOを活用するメリットと注意点
BPOを導入することで、以下のようなメリットが得られますが、同時に留意すべきポイントもあります。
メリット
- リソースの効率化:インサイドセールスやカスタマーサクセス業務を外部委託することで、企業はより戦略的な業務に集中でき、営業効率も向上します。
- コストの最適化:新たな営業チームやカスタマーサクセス部門を内製化するコストが削減され、経験豊富なBPO企業の活用で即効性のある結果が期待できます。
- スケーラビリティ:業務量に応じてスケールの調整が可能で、必要に応じた柔軟な対応が可能です。
留意点
- 自社ノウハウの欠如:営業や顧客対応の知見がBPOパートナーに依存し、自社にノウハウが蓄積されにくいリスクもあるため、適切なフィードバックの体制が求められます。
- コミュニケーションの調整:外部パートナーとの連携にあたり、定期的なミーティングや情報共有の仕組みを整える必要があります。
まとめ
SaaS業界ではインサイドセールスやカスタマーサクセスの分野でBPOの導入が進み、営業効率化と顧客満足度向上が図られています。スマートキャンプの「BALES」やセレブリックスなどがSaaS企業の成長を支援しており、各社がそれぞれの強みを活かしたアプローチでサービスを提供しています。SaaS企業は、BPO活用による成長戦略を推進しつつ、自社ノウハウの蓄積やBPO依存リスクの管理を併せて行うことが鍵です。