SaaS業界で新しい職種として「FDE(Forward Deployed Engineer)」が注目され始めています。FDEとはエンジニアでありながら顧客現場に深く入り込み、導入や活用を支援するポジションです。特にAIや高度なデータ活用が進む中で、その重要性が高まっています。
本記事では、FDEとは何か、なぜSaaSで求められるのか、そしてキャリアの選択肢としてどう捉えるべきかを整理します。
FDE(Forward Deployed Engineer)とは何か
FDE(Forward Deployed Engineer)は、顧客の現場に“前線配置”されるエンジニアを指します。単にプロダクトを提供するのではなく、顧客の業務やシステム環境に合わせて実装やカスタマイズ、データ連携まで踏み込む役割を持ちます。
この概念は、高度なデータ分析やAI活用を提供する企業で広まりました。代表例として知られるのが、ピーター・ティールらが立ち上げたアメリカのPalantir Technologies社です。
SaaSが高度化する現在、標準機能だけではカバーしきれないニーズが増えています。そのような背景から、技術理解と顧客理解を兼ね備えたFDEの重要性が高まっているようです。なお、具体的な役割範囲は企業ごとに異なります。
なぜ今SaaSでFDEが注目されるのか
SaaSは従来、「標準化」と「スケール」を強みとしてきました。しかし、AI機能や高度なデータ連携が進むと、顧客ごとの差異が大きくなります。
既存基幹システムとの連携、社内データのクレンジング、業務フローへの組み込みなど、導入難易度は上がっています。ここで求められるのが、単なる導入支援ではなく、技術的な設計と実装を伴う支援となります。
特にAI関連SaaSでは、データ構造や前提条件の理解が成果を左右します。プロダクトの仕様を理解しつつ、顧客環境に合わせて設計できる人材のニーズが高まっています。
FDEは従来のプリセールスやSEと何が違うのか
FDEは、プリセールスやセールスエンジニア(SE)と重なる部分もありますが、関与の深さが異なります。
プリセールスは主に受注前後の技術説明や要件整理を担当します。一方でFDEは、受注後も継続的に関与し、実装レベルまで踏み込みます。場合によってはコードを書くこともあり、単なる調整役ではありません。
カスタマーサクセスが活用支援を担うのに対し、FDEは技術的な障壁を解消する役割を担います。プロダクトの改善や追加開発にフィードバックを返すケースもあり、プロダクトチームとの距離もより近いと言えます。
FDEが活躍しやすいSaaSの特徴

FDEが活躍しやすいのは、データ基盤やAIを扱うSaaSです。
たとえば上述のPalantir Technologies社では、顧客ごとの要件に合わせてデータ基盤を構築するモデルで知られています。現場に深く入り込むFDEの存在が前提となっています。
またCRM領域のSalesforce社でも、大規模導入時にはAPI連携や高度なカスタマイズが必要になるケースがあります。このような場面では、FDEに近い役割が求められることがあります。
プロダクトが業務の中心に入り込み、データと密接に結びつくSaaSほど、FDEの価値は高まる傾向があります。
FDEというキャリアの可能性
FDEは、エンジニアリングとビジネスの両方に関心がある人にとって魅力的な選択肢です。純粋なプロダクト開発とも営業職とも異なり、顧客価値を最前線で体感できます。
顧客課題の解像度が高まるため、将来的にプロダクトマネージャーや事業開発へキャリアを広げるケースもあります。一方で、プロジェクト型の働き方になるため、調整力やコミュニケーション力も不可欠です。
SaaSが高度化するほど、標準化と個別最適の間を埋める役割は重要になります。FDEはその接点に立つ存在といえます。
まとめ
FDE(Forward Deployed Engineer)は、顧客現場に深く入り込み、技術と業務をつなぐポジションです。AIやデータ活用が進むSaaS領域では、標準機能だけでは対応しきれないニーズが増えており、その価値は高まっています。エンジニアリングとビジネスの両方に関心がある方にとって、有力なキャリア選択肢のひとつといえるでしょう。
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