SaaS企業が成長を続けるには、新規獲得だけでなく販路の多様化や提供形態の工夫が重要になりやすいです。
その選択肢の一つが、自社プロダクトを他社ブランドで提供するOEM(ホワイトラベル)です。OEMは拡販の可能性がある一方、契約や運用の設計を誤ると負担が増えることもあります。
SaaSのOEM提供とは?
SaaSのOEM提供は、他社が自社ブランドとして販売・提供する形で、裏側のシステムとして自社プロダクトが使われる提供形態を指します。
近い概念として、代理店販売、リセール、ホワイトラベルなどがあります。
違いを分ける主な軸は、次の点です。
・エンドユーザーとの契約主体は誰か
・請求やサポートの窓口は誰か
・ブランド表記はどうなるか
OEMは相手のブランドに寄せる分、拡販の余地が広がる可能性があります。一方で、どこまでを自社が担い、どこからをパートナーに任せるのかといった提供範囲の設計が重要になりやすい形態でもあります。
OEMは成長戦略として有効か?
OEMのメリットの一つは、パートナー企業がすでに持っている顧客基盤や販路を活用できる点です。自社単独で認知獲得から営業、導入までを積み上げるよりも、販売接点を持つ企業と組むことで、到達できる市場が広がる可能性があります。
また、特定業界や特定規模の顧客に強みを持つ企業と組むことで、自社だけでは入りにくいセグメントにアクセスできる場合も考えられます。さらに、OEM向けに提供形態を整える過程で、設定の標準化やドキュメント整備が進み、結果として導入のしやすさが向上する可能性もあります。
OEMは生存戦略としても有効?
OEMは成長のための施策だけでなく、リスク分散という観点でも語られることがあります。
たとえば、直販チャネルに依存している場合、市況の変化や広告費の高騰、競合増加の影響を受けやすくなります。
OEMによってチャネルが増えると、売上機会が分散される可能性があります。また、パートナーのサービス群の一部として組み込まれることで、利用が業務プロセスに定着しやすくなるケースも想定されます。
一方で、特定パートナーへの依存度が高まりすぎると、交渉力の低下や要望対応の負担増といったリスクもあります。
そのため、生存戦略としてOEMを捉える場合は、「依存度をどう管理するか」まで含めて検討する必要があるようです。
検討時に整理したい点(契約・体制・プロダクト)

OEMを検討する際は、論点を分解して整理しておくと判断しやすくなるようです。
◎契約面
・エンドユーザーとの契約主体
・請求方法と金銭の流れ
・サポート窓口と責任分界
・SLAや障害時の連絡体制
・データの取り扱い(権限、保管、削除、返却)
◎体制面
・問い合わせ対応や導入支援をどこまで担うか
・パートナー側への教育や資料整備の範囲
◎プロダクト面
・相手ごとの要望をどこまで許容するか
・設定で吸収できる範囲と個別対応が必要な範囲の切り分け
つまずきやすいポイントと事前チェック項目
OEMでつまずきやすいポイントとして、一般的に次のような点が挙げられるようです。
・提供範囲が曖昧で、追加要望が際限なく増える
・サポート窓口が不明確で、問い合わせ対応が滞る
・価格設計が難しく、負担に見合わない契約になる
・パートナーが想定ほど販売しない
事前チェックとしては、以下の整理が有効です。
・どの市場や業界に価値を出すのか
・標準提供の範囲はどこまでか
・追加要件の扱い(有償化、優先度、判断者)
・双方のKPI(販売数、継続、問い合わせ量など)
・依存度の上限と見直し条件
OEMは「始める条件」だけでなく、「続ける条件」まで含めて設計することが重要になりやすいテーマです。
まとめ
SaaSのOEM提供は、パートナーの販路や顧客基盤を活用でき、成長戦略として有効です。同時に、直販依存のリスク分散という意味で、生存戦略にもなり得ます。一方で、提供範囲や責任分界、依存度管理を誤ると負担が増える可能性もあります。契約・体制・プロダクトの論点を分解し、継続条件まで含めて設計することが重要です。