顧客のプライバシー意識が高まるなか、企業が信頼を損なわずにユーザーデータを収集・活用するにはどうすればよいのでしょうか。近年、マーケティングの世界で注目を集めている「ゼロパーティデータ」はその答えのひとつです。本記事ではゼロパーティデータの定義から、従来のデータとの違い、SaaSビジネスでの具体的な活用法までをわかりやすく解説します。
ゼロパーティデータとは何か?その定義と背景
ゼロパーティデータとは、ユーザーが自発的に提供する情報を指します。たとえば、「あなたの業界は?」「どの機能に興味がありますか?」といった質問に対する回答や、登録時に入力する好み、属性、利用目的などが該当します。
従来のクッキーやWeb行動履歴のような間接的な収集方法ではなく、ユーザーの意思に基づいて得られる情報であることが大きな特徴です。この概念は、プライバシー規制の強化やサードパーティクッキーの廃止といった背景から急速に注目を集めています。
サード・ファーストパーティデータとの違い
データの種類は主に「サードパーティ」「ファーストパーティ」「ゼロパーティ」の3つに分かれます。
・サードパーティデータは他社から購入・取得するデータで、ターゲティング広告などに使われています(近年は信頼性やプライバシーの観点で問題視されている面もあるようです)。
・ファーストパーティデータは、自社のサイトやサービス上の行動から得られる情報です。
・ゼロパーティデータは「ユーザーが自ら提供した情報」であり、信頼性が高く、企業との関係性を前提とするため、活用の自由度も高い点が大きな違いです。
ゼロパーティデータが注目される理由
ゼロパーティデータが注目されている最大の理由は、プライバシー保護とマーケティング効果の両立が可能な点にあります。
近年、GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などの法規制により、ユーザーの同意なくデータを取得することが難しくなっています。こうしたなか、ユーザー自身が明示的に提供するゼロパーティデータは、法的にも倫理的にも安心して活用できる手段となります。
また、取得した情報は精度が高いため、パーソナライズやリードナーチャリングの最適化にも直結します。
SaaSマーケティングにおける活用事例

SaaS業界では、フリーミアムモデルやデモの申し込み時にゼロパーティデータを取得するケースが増えています。
・ユーザーが登録フォームで業種や役職、導入目的などを選択することで、営業部門はより精緻なターゲティングが可能になります。
・オンボーディングの際に「どの機能に興味があるか」を聞くことで、プロダクト内のレコメンドやカスタマーサクセス対応を最適化する事例もあります。
このように、ゼロパーティデータはマーケティングとプロダクト両面の質を高める武器となり得ます。
ゼロパーティデータ活用の注意点と今後の展望
ゼロパーティデータはユーザーの信頼に基づくものである以上、その取得と活用には慎重な配慮が求められます。例えば、、
・過度な質問設計や、取得した情報の不適切な利用は、かえってユーザーの離脱を招く可能性があります。
・活用にあたっては、「なぜこの情報を聞くのか」「どのように価値提供につなげるのか」を明確に伝える設計が重要です。
今後、生成AIやプロダクトアナリティクスとの連携により、ゼロパーティデータの収集と活用の自動化が進むと考えられ、マーケティング戦略の中核を担う存在になるでしょう。
まとめ
ゼロパーティデータは、ユーザーとの信頼関係に基づいて収集される、精度と倫理性を両立したマーケティング資産です。SaaS企業にとっては、より良い顧客体験と成果の高い施策を実現するために不可欠な要素となります。今後、SaaSマーケティング戦略を構築する上で、ゼロパーティデータの理解と活用が鍵を握ることは間違いありません。
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