未上場SaaS企業を転職先として選ぶ時に確認したいこと

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「伸びているSaaSスタートアップに転職したい」——そう考える方は年々増えています。しかし、未上場SaaS企業は上場企業のようにIR資料や財務データが公開されていないため、企業の実態や将来性を読み解くのが難しいのも事実です。本記事では、未上場のSaaS企業を転職先として検討する際に、どこを見て判断すべきか、情報の集め方や着目ポイントをわかりやすく解説します。

上場企業と未上場企業の違いとは?

上場企業と未上場企業の最大の違いは、「情報の透明性」と「経営の成熟度」にあります。上場企業は四半期ごとに決算を開示し、IR資料や有価証券報告書を通じて企業の財務状況や成長戦略を詳細に公開しています。

一方で未上場企業は、こうした情報の開示義務がないため、売上や利益、成長率といった定量情報が外部からは見えづらいのが特徴です。また、意思決定が経営陣に集中している分、スピード感のある成長が期待できる反面、事業リスクや資金調達リスクも抱えているケースがあります。

転職先として未上場企業を選ぶ際は、この「情報の少なさ」を前提にした上で、自ら積極的に調べる必要があります。

未上場SaaS企業の情報を得る5つの手段

未上場企業の実態をつかむには、公開情報だけでなく、「少し手間をかけた調査」が必要です。以下の5つは特に有効な情報収集手段です。

・資金調達ニュース・プレスリリース
→ TechCrunch、INITIAL、PR TIMESなどで調達額・出資元を確認。大手VCが入っている場合、一定の審査を通過している証拠です。

・求人票・採用サイト
→ 職種数や募集人数、ミッション、バリュー、社員数などから組織規模と拡大フェーズを読み取れます。

・社員のSNS・note・インタビュー記事
→ 実際の働き方や事業内容のリアルな情報が手に入ります。

・口コミサイト(OpenWorkなど)
→ 社風・評価制度・残業時間・マネジメントに関する生の声が参考になります。

・該当企業に近い位置にいる人へのヒアリング
→ OBや知人など。社外には出ていない内情を聞ける貴重な手段。エージェント経由のヒアリングも有効です。

選考を受ける前の段階ではこのような「断片的な情報を組み合わせて企業像を浮かび上がらせる」ことが、未上場企業を見極める基本となります。

資金調達・バリュエーションから読み解く成長性

未上場SaaS企業の成長性を見極める上で、資金調達の状況は非常に重要です。具体的には以下のようなポイントに注目します。

・直近の調達時期と金額
→ 直近で数億〜数十億円の調達がある企業は、明確な成長プランに基づいて資金を集めている可能性が高いです。

・シリーズ段階(シード、シリーズA、Bなど)
→ シード:立ち上げ期/A:プロダクト確立期/B以降:事業拡大期
→ シリーズB以降ならプロダクト・市場ともにある程度の証明がなされていると判断できます。

・投資家の顔ぶれ
→ メガVCや事業会社が入っていれば、一定の信頼性があります。逆に調達実績が少なく、個人投資家中心の場合は慎重な判断が必要です。

また、調達時の「企業評価額(バリュエーション)」も重要なヒントです。仮に時価総額100億円、ARR10億円であれば、PSRは10倍。成長企業として適正水準かを見極めましょう。

組織規模・人材構成・離職率から内部の健全性を探る

未上場SaaS企業は、成長スピードに対して「組織作り」が追いついていないケースが多くあります。そのため、組織の健全性や働きやすさを見極めるためには、以下の観点が有効です。

・社員数と職種バランス
→ エンジニア・営業・CS・バックオフィスの人数構成を確認。偏りが大きい場合、組織的な課題がある可能性も。

・離職率
→ 口コミサイトなどで「ここ1年で何人辞めたか」を想像。離職者が多い場合は、評価制度やマネジメント、労働環境、経営判断に問題がある可能性があります。

・経営陣の経験と信頼性
→ 経歴が信頼できるか?他社の上場経験があるか?など、リーダーの器で会社の未来は大きく変わります。

また、採用活動が「常に募集している」状態だと、単に人が辞めているから補充しているだけという可能性もあります。面談では採用背景を必ず確認しましょう。

面接・面談で確認してみたい質問例

最終的な判断を下すのは、実際に企業の人と話すタイミングです。面接やカジュアル面談ではさまざまな角度から質問をしてみてください。例えば、

・「ARRや解約率など、主要KPIはどのようにモニタリングしていますか?」
→ SaaS企業としての経営基盤が整っているか、数字で事業を見ているかが分かります。

・「直近1年の組織の変化は?」
→ 成長に伴ってどのように体制を整えているか、課題感を共有してくれるかがカギです。

など。これらの質問に対して明確に答えられる企業は、たとえ未上場であっても、健全な経営がなされている可能性が高いと判断できます。

まとめ

未上場SaaS企業への転職は、情報が少ない分「自分で見極める力」が問われます。資金調達の有無、社員構成、KPI管理体制など、限られた情報をもとに企業の成長性と健全性を総合的に判断することが大切です。採用サイトや面談の場も情報収集のチャンス。定量と定性の両面から「伸びる会社」を見抜けるようになれば、スタートアップ転職の成功確率は大きく高まります。

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