AIと雇用の未来:SaaS業界で生き残るためのキャリア戦略

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「AI時代」がすぐそばまで来ていると、多くのビジネスパーソンが感じていると思います。米国では、大学卒業・ホワイトカラー職を志望していた若者が、あえてブルーカラー職(配管工・大工など)を選ぶ動きが出てきているようです。
参照:AI席巻の米国、ブルーカラーを選ぶ若者たち 電気料金2倍が現実に

AIの導入とそれに伴うインフラ需要の拡大が、知的労働だけでなく、周辺のインフラ・サービスにも影響を与えており、雇用構造や働き方に変化が生まれています。

本稿では、米国の状況を起点に、SaaS業界でキャリアを考える方が押さえるべきポイントを整理します。

米国で起きている「大学卒より技能職」シフト

米国では、配管工や電気技師、大工といった職業訓練校への進学を選ぶ若者が増加しています。ある報道によれば、職業訓練校の志望者増加率が大学の伸びを大きく上回っているとのことです。

背景には、「大学を出れば安定」という従来の価値観に対する疑問や、「自動化されにくい仕事を選びたい」という保護者の意識の変化があるようです。

この動きから注目すべきは、「身体を使う・現場即応型の仕事」が、AIや自動化の波を比較的回避しやすいという認識が広まりつつある点です。

・SaaS業界を目指す方にとっても、「代替されにくい要素」をキャリアに取り込むことが戦略の鍵になります。

ホワイトカラー職が揺らぐ背景:AIが代替可能な業務とは

米国では若年層の失業率が上昇しており、特に大卒直後の層で顕著だと報じられています。また、一部の試算では、ソフトウェア開発分野で20代前半の雇用が大きく減少しているとの指摘もあります。

背景には、体系化された知識や反復的な業務がAIに代替されやすいという構造があります。たとえばAmazonは、生成AIの導入により一部の業務が不要になる可能性があるとコメントしています。

SaaS業界では、製品を売るだけ・定型対応だけのポジションは、将来的にAIの影響を受けやすいため、差別化要因を持つ役割設計が求められます。

データセンター等インフラ投資が雇用・電力に与えた影響

報道によると、世界のデータセンター投資額は当初の見込みを上回るペースで拡大しており、米国はその中心的役割を担っています。

このような急速なインフラ投資により、建設・発電などの一部分野に資源が集中し、製造業や都市インフラ分野との資源競合も発生しています。

また、電力需要の増加により、米国の一部地域では家庭の電気料金が大幅に上昇していると報じられています。

SaaS業界においても、クラウド・データセンター・運用インフラの増強が進んでおり、「運用・インフラ・データ活用」の観点を持つことがキャリア上の強みになります。

知っておきたい“代替/補完”の視点

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AIの進展により、以下のように業務が「代替されるもの」と「補完されるもの」に分かれていく傾向があります。

・代替されやすい仕事:定型対応・反復作業・マニュアル化可能なタスク
・補完されやすい仕事:企画・判断・創造・課題発見・顧客対応・複雑な問題解決

例えば、マーケティング職では、例えば以下の業務が補完型に該当します:

・導入企業への提案書作成
・顧客課題のヒアリングとソリューション設計
・マーケティング施策とデータ分析の連携

また、インフラ・クラウド側の知識や、データ分析視点を持つことで、単なる営業やマーケターから「活用支援型」への進化が可能になります。

今後のスキルアップや転職においては、「この仕事はAIで代替されやすいか」「AIと共に価値を出せるか」を常に自問することが重要です。

日本のSaaS転職市場で取るべき戦略とスキル設計

SaaS業界でキャリアを築くうえで、次の5つの戦略視点が有効です。

“AI時代に置き換えられにくい”スキルを軸にする
・企画力、課題発見力、ソリューション設計力、データ読解力など「人ならでは」のスキルに注力する。

マーケティング/営業だけでなく、インフラ・運用・データ側を理解する
・クラウド、データセンター、運用支援の知見を取り入れることでキャリアの幅が広がる。

キャリアポジショニングを“補完型”に変える
・AIに代替される側ではなく、AIを活用して成果を出す側へ。たとえばAIツールを使いこなす運用担当など。

転職時・スキル習得時に“変化の証明”を設ける
・数値での改善実績(例:CVR●%改善、導入社数、継続率向上)やツール習得の具体例を提示できるようにする。

制度・インフラの視点を持ち、競争環境を理解する
・電力・クラウド・セキュリティ・法制度などの背景がSaaSに与える影響を学び、専門性・発信力を強化する。

まとめ

本記事では、米国で進むAIによる雇用・インフラの変化を起点に、SaaS業界で働くビジネスパーソンが取るべきキャリア戦略を解説しました。

AIの拡大は「知的労働の終わり」ではなく、「仕事の構造が再編される機会」です。

大切なのは、AIに代替される立ち位置ではなく、AIと共に価値を生み出す立ち位置を自ら築くこと。

SaaSという成長領域において、インフラ・データ・企画力といった視点を持ち、自身のスキルとポジショニングをアップデートしていきましょう。

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