レイオフの歴史を知る:雇用と経済の変遷から読み解く働き方の未来

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たまにニュースを賑わす「レイオフ」。レイオフは決して新しい概念ではなく、産業の発展や経済危機とともに形を変えてきました。この記事では、レイオフの歴史を古代から現代、そして未来にかけてたどりながら、働き方や雇用のあり方にどのような影響を与えてきたのかを解説します。本記事では変化の激しい時代を生き抜くヒントとして、レイオフの本質に迫ります。

レイオフ以前の雇用:個と個の関係性が支配した時代

近代以前の雇用関係は、今日の「会社と社員」という構図とはまったく異なるものでした。たとえば中世ヨーロッパでは、徒弟制度やギルド制度が中心であり、仕事とは職人の家に弟子入りし、長期的な人間関係のなかで技術を習得するプロセスでした。この時代、職を失うというのは技術的失敗や人間関係の破綻に直結し、いわば「解雇」や「レイオフ」という言葉が成立する前の話です。

また、農業中心の社会では農奴制のように、土地に縛られた身分が職業と一体となっていたため、自由な雇用の選択肢すらない時代もありました。近代的な意味での「雇う・雇われる」という関係が成立するためには、まず「会社」という概念の誕生と経済的な契約社会の成立が必要だったのです。

産業革命がもたらした「レイオフ」の原型

18世紀後半から始まった産業革命は、雇用と労働のあり方を根本から変えました。家内制手工業から工場制手工業へとシフトする中で、労働者は「誰かの下で働く存在」として工場に集められるようになります。このころから、雇用主が「いつでも雇い、いつでも解雇できる」という考え方が広がっていきました。

特に19世紀のアメリカでは、鉄道会社を中心に、景気の波に応じて労働者を一時的に解雇する「レイオフ(lay off)」の慣行が定着しました。これは、個人の能力や責任とは無関係に、「経済的な必要性」に基づいて労働者が削減されるという新たなロジックでした。つまり、ここで初めて「レイオフ」という言葉が社会制度として機能し始めたのです。

経済恐慌と戦争が変えたレイオフの意味

1929年の世界恐慌は、レイオフという行為が単なる企業の戦略ではなく、社会全体の問題として認識される契機となりました。アメリカでは失業率が25%を超え、多くの企業が倒産し、大量のレイオフが発生。これに対処するためにルーズベルト大統領は「ニューディール政策」を打ち出し、失業保険や労働者保護法の整備を進めました。

また、第二次世界大戦中は戦時体制のもとで雇用が一時的に安定したものの、戦後には軍需産業の縮小に伴い再びレイオフが増加しました。こうした時代を通じて、「レイオフ=個人の失敗」という認識から、「レイオフ=経済構造の問題」へと社会の理解が変化していったのです。

IT革命とグローバル資本主義が進めたレイオフの常態化

1980年代以降、グローバル資本主義の進展とIT革命により、企業経営における「効率化」と「株主価値の最大化」が優先されるようになります。アメリカではM&Aや事業再構築の一環としてレイオフが当たり前の経営判断となり、日本でも1990年代のバブル崩壊や2008年のリーマンショックを契機に「希望退職」や「派遣切り」が頻発しました。

とくにIT業界では、スピード重視の経営スタイルのもとで、成長期に急拡大した人員を景気後退時に一気に削減するケースが目立ちました。レイオフはもはや特別な出来事ではなく、経営戦略の一部として、常態化しているのが現代の姿です。

未来のレイオフ:AI時代の雇用と働き方はどう変わるのか

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今後、AIやロボットによる自動化が進むにつれて、レイオフの対象は単純労働者からホワイトカラーまで広がっていくと予測されています。これにより「スキルがある人ですら解雇される時代」が現実になりつつあります。

また、ギグエコノミーの台頭により、正社員という雇用形態自体が減少していく中で、「レイオフ」という言葉の意味も変容していくかもしれません。プロジェクト単位の契約やフリーランスという働き方が主流になれば、「解雇」ではなく「契約終了」という形で雇用の終わりを迎えることになります。

さらに、ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)などの制度が注目されており、社会全体で「失業=終わり」ではない生き方を模索する時代が始まろうとしています。

まとめ

レイオフの歴史をたどることで、私たちは雇用の変遷と社会の在り方の変化を読み解くことができます。レイオフは常に経済と技術の進化の中で起こってきたものであり、個人の責任に帰すものではありません。今後さらに不確実性が増す時代において、自分自身の働き方を見直し、変化に対応する力を養うことが重要です。

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