Sales EnablementやOps特有の悩み ーキャリアの分岐点はどう越える?

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Sales EnablementやSales Opsとして、社内の営業組織を支えてきたあなた。ふと「このままでいいのか?」「この先、自分にどんなキャリアがあるのか?」と不安を感じる瞬間はありませんか。専門性が高く、社内では重宝されているものの、市場に出たときの価値が見えづらい —— そんな課題を感じている人も多いはずです。本記事では、Enablement/Ops経験者が直面しがちな悩みと、そこから描けるキャリアの可能性を現実的に掘り下げます。

「このままでいいのか?」Enablement/Ops職のよくあるキャリア不安

Sales EnablementやSales Opsといった職種は、SaaS企業の成長フェーズで不可欠な存在です。営業の成果を最大化する仕組みづくり、ツール導入、育成プログラム、KPI管理…。プロフェッショナルとして、社内でも一目置かれる存在になることも多いでしょう。

しかし、それゆえにある種の“閉じたスキルセット”になりやすいリスクもあります。「このスキルは他社でも通用するのか?」「EnablementやOpsって、他業界では何と評価されるのか?」——こうした問いを持ったまま、日々の業務に忙殺されているビジネスパーソンは少なくありません。

キャリアが一定期間を経過すると、「専門性をさらに深めるか」「違うフィールドに越境するか」といった判断が求められるようになります。誰も答えを教えてくれないキャリアの分岐点。その前提として、まずは自分の置かれている立ち位置を冷静に把握する必要があります。

社内では重宝→でも次に何ができる?

Sales EnablementやOpsは、特に急成長中の企業において、重宝される職種です。営業が現場で動く一方、彼らを支える土台づくりを担うため、経営層に近い位置で働くケースも多く、やりがいも大きい仕事です。

ただし、問題は「次のキャリアが見えにくい」という点です。日々の業務は多岐にわたるものの、他社にそのまま転用できるかというと不透明な部分もあります。SFAの運用、営業トレーニング資料の作成、定例会のファシリテーション…。一つひとつは重要な業務ですが、それをどう言語化し、次の職場で再現可能な“スキル”として整理するかが問われます。

また、EnablementやOpsは社内で完結する役割が多いため、実績として“外に見えにくい”ことも課題です。営業の数字が上がったとしても、それが自分の介在によるものかを証明するのは難しい場面もあります。

フェーズごとに求められる役割の違いとキャリアのズレ

EnablementやOpsの仕事は、企業のフェーズによって大きく求められる内容が異なります。たとえば、シード〜シリーズAの段階では「営業組織をゼロから立ち上げる」ことが主なミッションであり、汎用的な営業支援やツール整備が求められます。一方、シリーズB以降では「既存の仕組みをスケールさせる」「属人化を排除し、効率化する」といった高度な業務に移行します。

ここで起きがちなのが、「自分の得意領域が、事業フェーズの変化と噛み合わなくなってくる」現象です。たとえば、立ち上げフェーズで裁量を持って動いていた人が、スケールフェーズでの分業体制に適応できず、やりがいを失うなど。

このミスマッチは、本人の能力不足というよりも、役割の変化に対して意識的なキャリア設計がされていないことが原因です。変化する組織の中で自分の価値をどう再定義するか。その視点がないと、「なんとなくの閉塞感」に飲み込まれてしまいます。

転職市場ではどう見られる?自分の経験を市場の言葉で読む

Sales EnablementやOpsなどのポジションは市場ではまだ見かける頻度は多くなく、代わりに「営業企画」「営業推進」「事業企画」といったポジションに含まれていることが多いです。転職の際は、今ある自分のポジション名称に拘らず、自分の業務を市場の共通言語で翻訳できるかが重要です。

たとえば、営業育成のフローを構築した経験は、「オンボーディング制度の設計」として人材開発やHR側にも接続可能です。また、SFA運用やKPI設計の知見は、事業企画や経営企画に求められる分析スキルと親和性があります。

また、現場経験を持つEnablementやOps人材が、「営業マネージャー」や「セールススペシャリスト」に移行するのも可能です。「自分はどの職種への越境が現実的か」を正しく見極めることで、転職戦略を明確に描くことができます。

専門性を武器にするか、汎用性を広げるか:キャリアの分岐点をどう越えるか

キャリアの成熟期に差し掛かったEnablementやOps人材にとって、大きな分岐点になるのが「このまま専門性を深めていくか、それとも新しい職域にチャレンジするか」です。

専門性を深める場合、RevOpsやRevenue Enablementといったより高度で全社横断的な役割への進化が求められます。この領域は海外SaaS企業ではすでに進んでいますが、日本市場ではまだ発展途上であり、先行者利益を狙えるポジションでもあります。

一方で、汎用性を広げたい場合は、プロジェクトマネジメントやデータ分析、ファシリテーション力などの“ポータブルスキル”を磨き、他職種への越境を視野に入れる必要があります。特に「事業サイドに寄るか」「人事・組織開発に寄るか」といった方向性の選定は、早い段階で明確にしておくことで、キャリアの再構築がスムーズになります。

まとめ

Sales EnablementやOps職は、SaaS企業での専門性が高い一方、社外での職種変換が難しいという課題を抱えています。キャリアの分岐点に立ったとき、自身のスキルを「再現可能な資産」として言語化し、専門性を深めるか越境するかの戦略を持つことが重要です。役割の変化をチャンスと捉え、自らキャリアを設計する力が、今後の武器となるでしょう。

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成功するSaaSの営業組織に求められるセールスイネーブルメントとは?

青山 俊彦

SaaSビズサイド(セールスやカスタマーサクセス、インサイドセールス、マーケ、企画領域)の転職支援が得意な人材エージェントです。採用や転職についてお気軽にご相談を!趣味は釣り。長野県安曇野市出身。

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