
企業が成長していく過程では、事業のステージごとに求められる人材像は大きく変わります。各フェーズにおける「採用戦略の最適化」は、成長を加速させる上で非常に重要です。シード期に活躍する人がシリーズB以降ではベストマッチではないこともあったりしますし、あるいはその逆も然りです。
本記事では、シード、シリーズA/B、そして上場前後の各フェーズにおいて、どのような人物がフィットするのか、また、採用の失敗例とともに具体的に解説します。これからの組織拡大に向けた人材戦略の設計にご活用ください。
シード期に必要なのは「ゼロイチを楽しめる挑戦者」
シードフェーズにおいては、役割や体制が未整備であり、いわゆる「カオスな環境」が常態です。ここで活躍するのは、「自ら仕事を見つけ、ゼロから価値を生み出せる人材」です。
・業務範囲が明確に定まっておらず、マルチタスクが求められる
・誰もやっていない仕事を、自ら見つけて動ける主体性
・失敗を恐れずにスピード重視で意思決定できる判断力
この段階では、「経験」も大事ですが「曖昧な状況を楽しめる柔軟性」が重要です。特にルールや役割が整備された大手企業出身の人材にとっては、明確な制度や手順がない環境に戸惑いやストレスを感じるケースも多く、カルチャーフィットが問われます。
シリーズA〜で必要なのは「再現性を築ける実行者」
シリーズAからの資金調達に伴う時期は、プロダクトが市場に適応し始め、スケーラビリティと再現性が求められるステージです。この段階で求められるのは、「仕組みをつくり、組織としての成長を支える人材」です。
・プロセス設計や型化を進め、業務の標準化を担える
・チームとして成果を出すための分業・仕組みづくりに長けている
・スピード感を持ちつつ、確実に成果を出す「職人的な実行力」
このフェーズが進むと、「ゼロイチ型の挑戦者」がやや物足りなさを感じることもあります。個人の自由裁量ではなく、チームや組織として成果を出すための視点が求められるためです。
上場準備フェーズでは「安定と統制を整える管理者」が鍵
上場を見据えたフェーズに入ると、企業には内部統制、監査対応、ガバナンスといった高度な管理能力が求められます。ここでは、「安定運用」と「外部からの信頼」を担保できるプロ人材が不可欠です。
・内部統制や監査対応など、上場要件に関する知見を持つ
・管理部門や経営企画での実務経験が豊富
・社内ルールの策定・浸透を進められるバランス感覚
このフェーズでは、過去に上場準備やIR対応を経験してきた人材を採用する企業が多く見られます。一方で、スピード感や柔軟性を失わないよう、「守りながら攻める」姿勢を持つ人材が理想とされます。
採用ミスマッチが起こる原因とは?

成長ステージに合わない人材を採用すると、いかにスキルがあっても成果は出ません。以下はよくある採用ミスマッチの例です。
・シード期に「大手志向の管理型人材」を採用し、スピード感を欠いた
・シリーズAで「自由人タイプ」を採用し、業務が属人化して拡大できなかった
・上場フェーズで「ベンチャーマインド全開の人材」を登用し、統制が取れなくなった
いずれも「優秀な人を採ったつもりが、結果として組織にフィットしなかった」ケースです。採用成功の鍵は、スキルや肩書きよりも「いま解決すべき組織課題との一致」です。
フェーズごとの採用戦略を描くために必要な視点
最適な人材を見極めるには、以下の3つの視点が欠かせません。
・今の組織は何に困っているのか(課題)
・その課題を解決するには、どのような役割が必要か(目的)
・その役割を担える人物像はどのような人か(人物要件)
特にスタートアップにおいては、「半年後に活躍できそうな人材」よりも、「今すぐ成果を出せる人材」のほうがフィットします。ただし、長期的な視点ではカルチャーフィットやポテンシャルも無視できません。
まとめ
スタートアップの成長には、それぞれのフェーズごとに最適な人材像があります。
・シード期には「カオスに強い挑戦者」
・シリーズA〜では「仕組み化できる実行者」
・上場フェーズでは「統制を整える管理者」
自社のフェーズと課題に応じて、最適な採用戦略を設計することで、採用の失敗を防ぎ、組織成長を加速させることができます。