
SaaS企業をはじめとする多くの成長企業で導入されている「OKR」という目標管理手法。名前は聞いたことがあるけれど、実はよくわかっていないという方も少なくありません。この記事では、今さら聞けないOKRの基本から、KPIとの違い、人事評価との関係、SaaS業界での活用ポイントまでを整理して解説します。これからOKRを活用したい方、導入しているけどうまく機能していない方に向けた内容です。
OKRとは?KPIとの違いを明確に理解する
OKRとは「Objectives and Key Results」の略で、組織や個人の目標達成に向けて使われるフレームワークです。主にシリコンバレー発祥の考え方で、Googleをはじめとするテック企業が採用したことで注目を集めました。
OKRでは「何を達成したいか(Objective)」と「どのようにしてそれを測るか(Key Results)」をセットで設定します。Objectiveは定性的でモチベーションを引き出す内容、Key Resultsは定量的で進捗を測る指標です。
KPIとの違いはここにあります。KPI(Key Performance Indicator)は「業務の指標」であり、通常は安定的な業務遂行のための管理指標です。一方で、OKRは「ストレッチ目標」と呼ばれるように、高い目標を設定することで組織の成長を促す役割を果たします。
OKRの構成と書き方の基本ルール
OKRは以下のような構造で記述されます。
・Objective(目的):情熱的で、定性的かつインスピレーションを与える表現が望ましい
・Key Results(主要な成果):定量的で測定可能な成果指標を3〜5つ設定
たとえば、「プロダクトのユーザー体験を改善する」というObjectiveに対して、「NPSスコアを8.0以上に向上させる」「解約率を10%以下に抑える」といったKey Resultsを設定します。
OKRを作成する際は、以下の点を意識しましょう。
・曖昧さを避ける
・数値で測れること
・達成率が60〜70%になるようなストレッチ目標とする
完璧な達成を前提とせず、挑戦的であることが大切です。
SaaS企業におけるOKR活用のメリット

SaaS企業では、チームが迅速に変化に対応し、イノベーションを継続的に起こすことが求められます。OKRはこの動きに非常にフィットした手法です。
・組織全体の方向性を揃えやすい:特に部署間連携が重要なSaaSでは、共通の目標設定により無駄な衝突を避けられます
・透明性が高い:OKRは一般的に社内で公開され、誰が何に取り組んでいるかが可視化されます
・モチベーションを高める:社員が「なぜその仕事をするのか」を理解できるため、自律的に動く文化が生まれます
このように、OKRはSaaS業界特有のスピード感とマッチしやすく、急成長する組織にとって強力な武器となります。
よくあるOKR運用の失敗例と対策
OKRは導入しただけで効果が出るものではありません。よくある失敗例としては次のようなものがあります。
・KPIと混同し、守りの指標ばかりになる
・Key Resultsが曖昧で測定できない
・期中で振り返りがない
・トップだけが使い、現場に浸透しない
・人事評価と直結させすぎる
特に最後の点は注意が必要です。本来、OKRは挑戦的な目標を掲げ、成長を促すための手段です。しかし、人事評価と密接に結びついてしまうと、達成可能な目標を優先するようになり、本来の意義を損なう恐れがあります。
ただし、現実として日本企業ではMBOの延長としてOKRを扱うケースもあります。その場合でも、「OKRは評価ではなく、成長と方向づけの指針である」ことを明確にし、評価への影響を限定的に設計する工夫が求められます。
・OKR達成度は評価項目の一部とする
・挑戦度や取り組みの質も評価に含める
このような工夫により、OKRの挑戦的な性格を保ちながら組織運営に活かすことが可能です。
転職者が知っておくべきOKRの読み解き方
SaaS企業への転職を検討している方にとって、OKRは企業文化や働き方を知るヒントになります。面接の場では「どのようにOKRを設定し、運用していますか?」と質問することで、企業のマネジメントレベルやチームの成熟度を推し量ることができます。
また、入社後に早期に成果を出すためには、OKRがどのように全社に浸透しているのかを理解し、自分の役割と接続させる視点が欠かせません。事前にOKRの構造や運用フローを理解しておくことは、転職後の立ち上がりにも大きく貢献します。
まとめ
OKRはただの目標設定の手法ではなく、組織と個人の挑戦を支えるフレームワークです。SaaS企業では特にその効果が発揮されやすく、組織文化や戦略浸透のための重要なツールとなります。また、人事評価との関係性においても、OKRの本質を踏まえた運用が重要です。正しく理解し、キャリアや転職先選びの判断軸として活用していきましょう。
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